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溶岩大蛇ボルカヌア戦

 「よくやりましたライム!これでようやくまともに戦えます。」


 「て言っても、向こうはこっちの土俵に上がってくれるかどうかはわかんねえけどな。」


 「それに陸地に上がってきたとしてもこっちの攻撃がまともに効くかどうかわかんないしね。」


 ボルカヌアは普段溶岩の中で泳いで過ごし、付近を通ったものを溶岩に引きずり込んで捕食するらしい。


 つまり一時的に溶岩の中に入れるといったものではなく、いつまでも溶岩の中を遊泳することができる肉体または特性を持っているということである。


 そしてこのボルカヌアは最奥から出ることがほとんどないモンスターでもあるため、発見数自体がまれであるため、その生態のほとんどが謎に包まれている。


 その例にもれず、エレアナもボルカヌアに遭遇したのはこれが2度目であり、さらに以前は遠目で確認しただけで戦闘には至らなかったらしい。


 つまりこれが初戦。


 こちらの攻撃が通用するのかどうか。相手はどういう攻撃を仕掛けてくるのか。そのほとんどがわからない中での初戦である。


 「やってやれないことはないはずだ。要は初心に立ち返って、慎重に、的確に、時間をかけて対処していけばいいだけのことだ。」


 ディランは少し不安げな意見を漏らした二人を安心させるためか、それともこれ以上の苦難を乗り越えてきた自信からか、ボルカヌアをまっすぐ見つめて不敵な笑みを浮かべる。


 するとポートもレナも緊張感をそのままに笑みを見せ、武器を構えなおす。


 「だな!ドラゴン相手の撤退戦を潜り抜けたときのことを考えれば全然余裕だしな。」


 「今はあのころよりもずいぶん強くなったし、今回も生き残れるよきっと!」


 「みんなは私が全力で守ります!もう誰も死なせはしません!」


 全員が意気込み、ルーナが全力の障壁を完成させた瞬間。ボルカヌアは溶岩の中から思い切り飛び跳ね、私たちがいる陸地をも飛び越えて反対側の溶岩に飛び込んだ。


 その際に陸地に降り注いだ溶岩の雨はルーナが風と水を合わせた障壁によって完璧に受け流され、水によって冷やされた溶岩が大きな音を立てて障壁外にパラパラと落ちていく。


 ボルカヌアはその光景を見て戦法を変えるようで、今度は体を起こして頭部と上半身だけ溶岩から出たと思ったら、口の周りから青白い炎が漏れ出してきた。


 「全員俺の後ろにつけ!」


 ディランが声を上げると同時に左手に持つ盾で体を覆うようにすると、ルーナ、レナ、ポートの順でディランの背後に隠れる。


 ルーナはそれと同時にディランの正面に障壁の範囲を狭めると同時に厚さを変化させ、この状況でできる最高の障壁を展開させる。


 その障壁の完成と同時にボルカヌアは口を大きく開けてため込んでいた青白い溶岩の塊を発射した。


 溶岩はルーナの障壁にぶつかると凄まじい音を立てて爆発し、その威力は貫通することはなかったものの、ルーナの障壁を半壊するまでに至った。


 「・・・これほどの威力とはな。」


 ディランは盾からボルカヌアの様子を窺うが、ボルカヌアはまた溶岩の中に潜ったようで、今はその姿が見えずにいた。


 「完全に潜っちまったみたいだな。どこにいるかわかんねえ。」


 ボルカヌアには特徴的な背びれを持っているのだが、隠密時にはをそれをうまく折りたたんで隠れるようだ。


 溶岩の中に深く潜っていることもあってこちらからは全く捕捉できない。


 「円陣形!どこかに痕跡があるはずだ!」


 ディランの号令のもとに即座に決められていた配置につく。


 円陣形はディラン、ルーナ、ポート、レナの順に外向きの円陣を組み、死角をなくすことを目的とする陣形で、このとき私たちはルーナの手によって背中側に回され、私たちを守っているような形になる。


 しかしそれは私たちが弱いからという単純な理由からではなく、私たちは全方位を瞬時に確認することができるために考案された配置である。


 私たちはカバンの中から触手を伸ばしてそこから全方位の監視を始める。


 (どこかに流れに逆らった動きが見えるはずだけど・・・。)


 (・・・見つけた!ルーナとポートの間側!)


 美景が即座に見つけてくれたので私は触手を動かしてルーナとポートに知らせる。


 「いたぜ!ルーナ!」


 「おびき出します!」


 ポートの声で即座にディランが先頭の陣形に変更し、ルーナが水と風を組み合わせた魔力弾を形成する。


 ルーナはその魔力弾を私たちの時とはけた違いの速さで撃ち出し、標的めがけて一直線に飛んでいく。


 魔力弾は溶岩が急激に冷やされたときに出る消化音と粘着力のあるものに物が当たったとき特有のドボンという音を何倍も大きくしたような轟音をとどろかせて命中し、溶岩が噴水のごとくあたりに降り注いだ。


 距離があったことと撃ち出したこちら側とは反対方向に盛大に飛散していることでこちらには全く被害が出ていないが、爆発によってできた波が向こう側にうっすらと見える陸地に届き、一部を赤黒い液体が濡らす。


 返す波はルーナの魔法によって中和されて陸地を濡らすことはなかった。


 それほど大きな一撃であったのにもかかわらず、その攻撃によって溶岩上に顔を出したボルカヌアにはかすり傷一つついていなかった。


 おそらくボルカヌアはかなり深く潜っていたことと、溶岩の粘性の高さに守られたのではないかと思う。


 それだけ溶岩の中はボルカヌアにとって大きなアドバンテージとなるということでもあり、これは是が非でも陸地に上がってもらわなければ勝負にならないということを表していた。


 「ルーナ!何とかあいつを引っ張り上げられないか?」


 ディランの問いにしばらく考えたルーナは一つの作戦を思いつき、それを提案することにした。


 「レナ。あなたの矢に縄を取り付けたとして、それをボルカヌアのいるあの場所まで飛ばすことはできますか?」


 レナは自分の弓を見つめて自問するように目を閉じ、そしてそう時間を要することなく再び目を開けた。


 「できるよ。届かせるだけならできる。けど刺さるかどうかわわからないよ。」


 「問題ありません。私が縄と矢に魔法を付与しますから。レナは確実にボルカヌアの胴体に当ててくれればそれで大丈夫です。」


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