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今こそ我らの修行の成果を見せる時!

 道をたどること数分。私たちの歩みは通常の3倍も遅いものであった。


 それは当然だろう。なにせ人一人がどうにか通れるほどの道幅で、しかもその道を一歩踏み間違えれば煮えたぎる溶岩の海である。ただでさえモンスターの出現がないか警戒している中で足場の確認を常にしながら動くとなると、牛歩のごとき進行速度になるのは無理からぬことだろう。


 しかしながらこの道を選んで進んでから今までモンスターに出くわすことはなく、ルーナの魔法のおかげで時折飛んでくる溶岩のしぶきも未然に防ぐことができているため、順調に進んでいることに変わりはなかった。


 もう5分もすれば洞窟の入り口が見えてくるだろう距離まで来ている。ここは焦らずゆっくり進みたい。


 「熱くなってきたな。クーラードリンクの効力が弱まってきちまったかな?」


 ポートが額に浮かんだ汗をぬぐいながらいつものへらへらした口調でそう言ったが、内心では冷や汗をかいているだろうと思う。


 なにせ残りのクーラードリンクはあと2本。節約して使ったとしてもせいぜい4人分が限度だろう。


 溶岩地帯でのクーラードリンクの有無は文字通り生死を分ける問題であり、ルーナが展開している風の障壁をも貫通する熱風はそれだけでも火にあぶられるがごとき熱を持つ。


 洞窟内での溶岩による熱風は外気にさらされることがほとんどないためにかなりの高温を保ち続けており、対流する風の強さも相当である。


 そんななかを歩くということは、常に体から水分を飛ばしつつ、熱によるやけどを増やしながら移動するということであり、それが目的の場所まで続くとなると、ついたころにはミイラのような状態になっていてもおかしくない。最悪炭になって燃えてしまうだろう。


 そんなことを考えたためか、何も言わずとも自然とみんなの歩くペースは速くなり、少し躓きそうになったところでまたペースを落としを繰り返すようになった。


 (これは危ないね。)


 (でも時間がないのも事実だし、ここからはモンスターが最後まで現れないことを祈るばかりだね。)


 そんなことを二人で考えたからではないだろう。


 たまたまタイミングが重なったからに違いない。


 そう思わずにはいられないほど最悪のタイミングでそれは姿を現した。


 流れる溶岩に逆らって泳ぐそれは赤黒く光る鱗を持ち、成人男性の3倍ほどの巨体は蛇のように長細く、羊を丸呑みできそうなほど大きな口はこちらを見つけて喜びに歪んでいるようだった。


 溶岩を悠々と泳ぐ大蛇。それはこの最奥の場所でもわずかしか存在しない溶岩流に適応したモンスター。最奥の主とも呼ばれる存在であった。


 「ボルカヌアだよ!ここじゃまともに戦闘できない!」


 レナがいち早くそれに気づき、先頭にいるディランに叫ぶ。


 ディランも遅れてその存在に気づき、一瞬の迷いを見せるが、その迷いを振り払って最適な選択を選び取る。


 「走れ!とにかく広い場所に出るまで走るんだ!」


 その号令とともにみんな一目散に駆け出し、戦闘できるほどの余裕のある場所に向かう。


 私たちの調べた結果ではこの先400メートルほどの場所に半径6メートルほどの陸地がある場所が存在した。


 地図にもそれを書いて見せたし、ディランもそれをわかっていると思う。


 けれど問題はそこまでの距離と道の狭さであった。


 その広い場所に着くまでに道幅が急に狭くなる箇所が2か所ほど存在するのだ。


 ゆっくり歩いている時ならまだしも、そこを走り抜けることは非常にためらわれることであり、先ほど一瞬ためらいを見せたのはそれが原因だと思われる。


 道幅の狭さは1箇所目が足をそろえてちょうど位の幅。2箇所目は足1個分の幅。


 1箇所目はともかく、2箇所目の道幅を駆け抜けるということは、平均台の上を駆け抜けることと同義であると言わざるを得ない。


 しかもそれが50メートルほど続くのである。普通の人間ならそんなことをしたら十中八九バランスを崩して溶岩に飛び込んでしまうことだろう。


 訓練を積み重ねたディランたちでさえ賭けに近い行為だ。できればやりたくはなかっただろう。


 しかしモンスターは私たちを逃がすことなくついてきている。


 それも向こうのほうが速度が出ているらしく徐々に追いつかれてきている。


 こちらを一度でもバランスを崩したら終わり、向こうは悠々と泳いでいればそれでいい。


 この不利な現状を考えればモンスターに出くわさせた運命の神を呪わずにはいられないだろう。


 駆け出してまだ10秒しかたっていないが、普段ならもう半分のところまで来ていてもおかしくはないのにまだ1/3しか進んでいない。


 駆けるといっても全速力で走れるわけがない。この道から外れずに全神経を研ぎ澄ませながら走っているのだから無理もない。


 しかしそのせいで確実に追いつかれる私たち。


 そこで走る必要のない私たちはモンスターの速度を落とすべく触手を伸ばして魔法の準備をする。


 しかし今回はただの魔法ではない。というかただの魔法であのモンスターの足を止めるなんてことはできない。


 私が何かの役に立つだろうと思って大量に取り込んでいた丸い石。それを筒形にした触手の中に装填していく。


 装填した触手の数はざっと5つ。一つに装填した石の数は8つ計40発の弾。


 これを一度に発射するなんて初めての試みだ。


 けれどこれを成功させれば確実に相手は怯むか警戒して速度を落とすはず!


 (のーちゃん準備完了したよ!)


 (よし!いくよ!)


 美景の魔法の準備が終わり、狙いも十分。あとは引き金を引くだけ。


 ディランたちは道幅が一番狭い道に差し掛かる直前。


 そこであらかじめ頼んでおいたルーナが声を上げてくれる。


 「ライムが足止めします!そのまま集中して渡り切ってください!」


 よし。これですべての準備が整った。


 (竹筒水鉄砲・石式改!発射!)


 私は心の中で叫びながら魔力を帯びた石を射出する。


 その石が銃口から飛び出した瞬間にけたたましい音を発しながら加速し、大蛇の頭めがけて飛んでいく。


 魔力を帯びた石はそれぞれ水や雷などの魔法を付与した特別製で、その効力に応じて実に様々なエフェクトを放ちながら着弾した。


 ドゴン!ドガン!ドバーン!


 着弾するたびに豪快な音をたて、溶岩は飛び散り、石の破片が飛び散る。


 そのうちの2つがボルカヌアの嘴と頭部に命中し、ボルカヌアは反動でよろめき、さらに攻撃に警戒するようにスピードを緩めた。


 ふつうあんなうざったい攻撃をされれば怒ったりするものなんじゃないかと思っていたが、そういうことは一切なく、冷静にこちらの戦力を図ろうとしてくるところはさすがこの一帯の主と言われるだけはあると思う。


 何はともあれ、向こうがスピードを緩めてくれたことによってぎりぎり広い陸地に滑り込むことができ、陣形を整えることもできた。


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