幕間 いつか見せることもあるだろう
本日2隻目
次の日の朝。
私たちとルーナは約束通りニーナの魔法を見学することになった。
ルーナのほうは見学というより指導だけど、やっていることはそう変わらないので見学でいいだろう。
場所は村から少し離れた人気のない草原で、周りに人がめったに来ることがないのをいいことに、私たちはカバンの中から出てきて普通に見学している。
ニーナが得意な水魔法をはじめとして、火、雷、風と次々に魔法を繰り出していく。
私たちからすればとんでもない威力がありそうな魔法を次々と撃ち出していくニーナは、それでも少し晴れない表情で最後の魔法を終える。
「どうだった?」
ニーナはルーナに尋ねてみるも、すぐに返答しないルーナ。しばらく目をつむって考えて、やがてゆっくりと目を開いて答える。
「おそらく一時的な魔力の循環障害だと思います。体の中で巡っている内在魔力がうまく操ることができず、結果、違和感を伴う魔法行使によって不出来な魔法が発生しているのだと思います。」
ルーナの返答にニーナは少し疑問符を浮かべた。
「けど私、この状態になって2週間くらい経つけど全く治らないよ?」
「一時的とは言っても、この魔力障害は治るまでにおよそ1か月から2か月かかるといわれていますし、その発生原因は外の魔力が内在魔力に変換されすぎて起きるものともいわれていますので、無理に治すことはできないですよ。」
続けて疑問に答えたルーナは笑みを作ってニーナのもとまで行き、頭一つ分背の低いニーナの頭を撫でた。
「大丈夫です。魔力障害は治ればそれまでよりも大きく成長できる一種の通過儀礼のようなものです。これからも何度もそれを繰り返していくうちに強くなります。だから今は少し大変かもしれませんが、治るまで頑張ってください。」
ニーナはその優しい励ましの言葉にうれしくなり、ルーナに抱き着く。
身長と服装とが相まって、なんだか兄弟か親子のように見える。
(ルーナって本当に面倒見いいよね。)
(やっぱりお母さんをなくしているのがその要因なのかな。)
ルーナの過去の話では小さいころに母親を亡くしたらしい。
それは子供のうちに踏ん切りがつけるほどの話ではなく、まだ高校生くらいの年齢であるにも関わらずに、私たちよりも大人に見えるのは、実はそれを隠すためのものなんじゃないだろうか。
無理しているというわけではないだろうし、本当のルーナじゃないなんてこともないけど、この母性のようなものはおそらく過去の経験から来ているものなんだろうと思うのだ。
「そうだ!ライムちゃんの魔法も見せてよ!」
そうして私たちが物思いにふけっている途中にニーナが満面の笑みでこちらに向き直る。
おう、なんかすごく期待されている。
(ここは一発どでかいのかましてください姉さん!)
(え?う~ん。さっきのニーナちゃんの魔法を見た後だと見劣りすると思うんだけど・・・。とりあえず頑張ってみる!)
そう言った美景の指示でユミルンの手を動かし、徐々に魔力を練り上げていく。
発動する魔法は私が得意な光魔法。そのなかでも飛び切り派手なものを使うつもりだ。
ただ、それだけだと芸がなさすぎるので、合わせて複数の魔法を同時に展開することにした。
ルーナが言うには魔法を同時展開するのは結構難易度の高い技術らしく、制御が難しいので十分な威力が出ないことがしばしばらしいけど、美景様なら大丈夫!
なんたってみんなが寝ている間に黙々と練習していたおかげでかなり細かい制御ができるようになっていたからだ。
(よし!いくよ!)
美景の掛け声とともに繰り出した魔法は光魔法を主軸に火魔法と雷魔法を合わせ、遥か上空に打ち上げる。
そこで勢いよく魔法を轟音とともに四散させた。
そう、つまりは魔法版打ち上げ花火だ。
結構派手な魔法だし、それなりに技術もいるのであっと言わせるならこれかなと思ったのだ。
ただ、今は朝と昼の間くらいの明るい時間帯で、音は大きくなって満足ながらも見栄えはいいものではなかった。というかほぼ見えなかった。
きたねえ花火だ。
「これは・・・どちらかというと攻撃魔法でしょうか?しかしそれにしては派手すぎますね。いったい何を狙った魔法なのでしょうか?」
ルーナも微妙な見栄えの魔法に少々困惑しつつ、用途のわからない魔法の説明を問いかけてくる。
私たちはとりあえずペンと紙を取り出して返事を書こうと思ったが、ふとどう説明したものかわからず固まる。
(今のリアクションから見て花火に近しいものってもしかしてこの世界にないのかな?)
(そうかも。だいたいこの危ない村の外でこんな派手なことしたらモンスターに気づかれちゃうし・・・。大丈夫かな?)
美景の推測に一瞬あたりを見回して安全確認をしたが、特に異常は見られなかった。
(と、とりあえず夜にもう一度見せるから、その時に説明するって言おうか。)
(そうだね。村の中だったら危険もないだろうし。)
相談を終えた私たちは早速それを紙に書いてルーナとニーナに見せる。
「そうですか。ではどのような魔法なのか楽しみにしていますね。」
「私も楽しみにしとく!」
いちおう了解は得られたのでたぶん大丈夫ってことなのだろう。
ということで夜は花火大会と相成りました!腕が鳴りますね~。
(どんな風に撃ち出そうかな~。どうせなら連発とかやってみたいよね。)
夜になるのが待ち遠しくなるほどそわそわしながら花火の相談を開始するのだった。




