新キャラ登場!今度はショタ(?)です!
ドルン山脈の麓。そこには冒険者が寄り集まってできた小さな村が点在している。
ドルン山脈には未だ見ぬ財宝が多く隠されていると言われ、鉱脈も生きているため、冒険者や鍛冶職人などに人気の場所であり、腰を据えて洞窟に潜る者も多いために小さな村ができるのだ。
冒険者でも上級のものしか相手どれないほどに厄介な場所ではあるものの、相応に準備し、ある程度の人数を集めればそう死人が出ることもない。
とはいえ、まったく死傷者が出ないわけでもなく、欲張ればたちまち全滅してしまうこともしばしばな場所であることには間違いないが。
そんなドルン山脈に点在する村のうちの一つに、最近では名を聞かぬ日はないと思える程に有名な冒険者パーティーが姿を現した。
パーティーの名はエレアナ。数ある伝説に記載された英雄の中の一人であり、この国を建国した人物でもあるお方の名前を冠したそのパーティーは、ディラン王子率いる貴族子女たちで構成されたある意味王国を代表するパーティーだ。
パーティー発足当初は貴族様方のお遊びとして見られていたが、その活躍を耳にするたびに次代の英雄たちではないかと言われるほどの上級パーティーとして認められてきた。
前回ドルン山脈に来たときは、強大な力を持った大蛇型のモンスターを討伐し、モンスターが守っていた宝物を持てるだけ持って帰ってきたなど、ドルン山脈で一攫千金を狙う若者にとってもエレアナは憧れの冒険者たちなのだ。
そんな有名パーティーの一角がこの村、ドーラに来たとなれば、冒険者はこぞって一目見ようとパーティーのいる場所に赴き、職人や商人は何とか商品を買ってもらえないか思案し、宿屋は自分たちのところに泊まらないかと天に祈りをささげている。
そんなことはつゆ知らず、彼らは長い野宿旅がやっと終わったと笑い、どこかいい宿はないかと捜し歩いている。
新人冒険者たちはいち早く駆け出し、彼らと握手したり冒険の話を聞きたいものだったのだが、熟練冒険者はそれに待ったをかけるべく無言の圧力をかけ、エレアナの進む道は何か物々しくも進行方向には人っ子一人いないという俗にいうモーセ状態となっていた。
「おーポートじゃん。久しぶりー。」
そんなわずかな緊張感に包まれた空気を一気に壊した人物が一人。
彼はポートの姿を見つけるなり、すぐに人垣を超えてエレアナのところまで来る。
「リーノじゃねえか!久しぶりだな~おい。なんでこんなところにいるんだ?」
「なんでってそりゃあ財宝探しに決まってんじゃん!ポートたちこそ南に行ってたんじゃなかったっけ?」
リーノと呼ばれた少年は少し小柄で髪は短くそろえられた赤髪で、服装は長袖長ズボンの動きやすそうな服の上に革の鎧を付けた身軽そうな格好である。
武器は短剣がメインであるかのように、左右の腰には20センチほどの刃渡りのダガーが装備されていた。
実はこのリーノ。エレアナ発足当初からよく合同で活動していたパーティーのリングルイのメンバーであり、エレアナほどではないにしろそこそこ有名な上級パーティーの一人であり、彼に憧れる冒険者も少なくないほどである。
ゆえに最初エレアナに気軽に話しかけた空気の読めない子供はだれかとみな血走った眼で探したが、それがリーノだと分かった瞬間に誰もが納得し、むしろ子供だと思って申し訳ありませんと猛省していた。
「いや~。実はつい最近ショープに戻ってな。どっか違う場所に行こうと思って来たのがここだったってだけだよ。」
「なるほどね。ディランさんもお久しぶりです。最近家には戻ってるんですか?」
「いや、最近はずっと家には帰っていないな。」
「じゃあイリアナちゃん寂しがってるんじゃないですか?あの子ディランさんにべったりじゃないですか。」
「イリアナはもう少し外に目を向けたほうがいい。いずれ嫁ぐのだから、いつも私がいなくては話しすらできないというのは困りものだろう?」
「そりゃそうですけどね。でもディランさんは結構妹好きだと思ってましたけど、なんなこともないんですか?」
「確かにかわいいが、甘やかしてばかりではいけないだろう?」
「そういえばリーノくんにもお姉ちゃんいなかったっけ?」
「ああ、あいつはこの間嫁ぎ先から怒りながら実家に帰ったって聞きましたよ。」
「何があったんですかね。」
「さあ。ただ聞いた話によると結構しょうもない話みたいだったよ。」
リーノとエレアナは互いに気安く話をしていたのだが、そこに空気の読めない愚か者が割って入った。
「おい、そこの子供!誇り高きエレアナの皆々様に向かって失礼であろう!」
そう言ってずいっとリーノとエレアナの間に体を入れて壁となる男は貴族のような服装をした金髪の青年で、偉そうなポーズをとってリーノを見下ろす。
「彼らは貴族でありながらこの世界の救いを求める人々に手を差し伸べるべく立ち上がり、冒険者となられた偉大なる方々だ!そのような方々に気安く声をかけるなど、子供であっても許されることではないぞ!」
なにをとんちんかんなことを言っているのかと周りで聞いていた人々は思っており、ディランたちもすぐに訂正しようと貴族然とした男に話しかけようとしたが、すぐにそれを止めた。
なぜか。それは、男に向けられる殺気のようなものを感じ取ったからに他ならない。
「おい、そこの阿呆。」
「あ、阿呆だと!貴様誰に向かってモノを言っている!私は子爵家の人間であるぞ!ディラン王子たちの活躍に倣って冒険者をやっておるが、貴様などがそのような口をたたいて済む相手では―。」
「黙れ。」
リーノが静かに、だが明確な敵意をむき出しにして貴族然とした男の言葉をさえぎる。
男はその圧力に気圧されて黙りこくり、その濃厚な殺気に思わず喉が鳴る。
ディランたちは万が一を考えて武器に手をかけるが、これは自分たちを守るためでは決してない。
「貴様のような屑がいるから俺はあの場所が嫌いなんだよ。そもそもディラン王子と貴様のようなものが一緒なわけがないだろう。低能で貴族至上主義で何も考えていないような馬鹿がエレアナの名を語るな。」
リーノの眼力に恐怖を感じながらも、しかし自分を愚弄するその言葉に怒りを覚え、自身の剣を抜き放つ。
「貴様!そこになおれ!私がその細首叩き切ってくれる!」
男が装飾過多な剣を上段に構えて怒鳴り散らすが、言い終わるとすぐに男の目の前で火花が散った。
金属同士がぶつかる不快音をたてながら、男の目の前で剣を合わせるリーノとディラン。
その姿を見て、もしディランが助けてくれなければと考えて冷や汗をかき、恐怖にしりもちをついた。
「止めないで下さいよディラン王子。この者を殺さなければ私の気が収まらない。」
「目の前で人切りを見逃すほど、私は甘くないのだ。切りたければ私の目の届かないところでしろ。」
「そんなこと言ってもいいんですか?」
「別に構わん。私も友人を馬鹿にされて憤りを感じていたところだ。それに剣を構えたということは死ぬ覚悟も当然あるのだろうしな。」
ディランがすっと男のほうを見ると、男の顔はみるみる青くなっていく。
ディランが自分を助けるために剣を抜いたのではないと分かったからだ。
「しかし、お前が怒っているのはそこではないのだろう?」
そう言われると、リーノは息を一つついてからダガーに込める力を弱めていき、鞘に戻した。
「子供と言われて怒るのはわかるが、そんなことでいちいち人を殺そうとするな。」
「わかってるよ。」
そういうと、リーノはさっきまでの雰囲気を取り戻し、柔らかな笑みを浮かべる。
「よかったな!ディランさんが助けなかったら今頃お前、八つ裂きになってたぜ!」
リーノはしりもちをついて未だ立ち上がれていない男の肩にぽんと手を置いてそういう。
「それと俺の名前はリーノ=アドマールで、知ってると思うけどアドマール公爵家の次男で今年20歳だから。そこんとこよろしく。」
悪戯っ子な笑みを浮かべてリーノは軽く肩を掴み、念押しするように顔を近づけてそう告げると、その言葉の意味を理解した男は泡を吹いて気を失った。
「自業自得ではありますが、追い打ちをかけすぎるのも考え物ですよ。」
「こういうやつは一度痛い目を見ないとわかんねーもんなんだって。それよりみんなはもう宿とか決めてる?」
「いや、まだ着いたばっかりだから決めてねーな。」
「だったらおすすめのところを紹介するよ。僕のところも泊まってるんだ。みんなも交えて話したいからさ、来ない?」
「ありがたい申し出だな。ぜひ案内してほしい。」
「久しぶりにリングルイのメンバーに会えるの楽しみ!」
「じゃあついてきてよ。」
リーノが先導してエレアナのメンバーが移動する。それにつられて周りの人々も後を追おうとしたが、それよりも片付けるべきことができ、頭を抱えながらもまたエレアナのような有名パーティーがこの村を訪れてくれるようにするのは当然の仕事である。
ゆえにその場にいたメンバーは泡を吹いて倒れた貴族様を抱え、村の隅にある安宿の一室に放り込んだのだった。




