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ライムがかわいすぎる件

 ドルン山脈に向かうこと早3日。私たちは順調に歩を進め、遠目でもぼんやりと山頂が見ることができるほど近くに来ることができました。


 戦闘も数をこなし、ライムとの連携がうまくいくようになり、パーティー内での空気もすごくいい。


 これもひとえにライムの頑張りのおかげなのでしょう。


 ただ、私にはどうも一つ気がかりでならないことがあります。


 それはライムの変化。現象としては青色からピンク色に変わっただけなので、それほど大きな変化でもなく、むしろ今までよりもさらに愛らしくなった姿に我を忘れて抱きしめてしまうほどです。


 最近は自重することを覚えて我慢していたところもあったのですが、ピンク色になったライムを見ているとどうにも抑えきれないものがあるといいますか。この感情は何なのでしょうね。


 それはともかく。やはりライムの魔法の威力や動きが変化前と後で格段に違っているように思えるのです。


 これは一見いいことのように見えますが、大きな変化というのは悪いことも多分に含む可能性があります。


 魔法の威力が上がり、動きが最適化され、よりパーティーに貢献できるようになって嬉しそうにするライムを見ているのは何ともなごんでしまい、今も野営中ほかの目を気にする必要がないため、ライムを抱えてムニムニしてしまうのですが。


・・・やはりライムの事になると話がそれてしまいますね。


 とにかく。このまま何事も起こらなければいいのですが。


 「ルーナ!そろそろ私にもライムちゃん抱かせてよ~。」


 レナが私のライムを取りに来る。なので私はライムを抱えたまま立ち去ろうとする。


 「独り占めはよくないよ!」


 しかしレナもすぐに私の後を追ってきてひょいっとライムを取り上げてしまう。


 「ライムちゃんもたまには私と一緒にいたいよね~。」


 ライムに話しかけるレナ。レナの言葉にちらちらとこちらを見ながら困った顔をするライム。


 その表情もかわいいです。


 ただ、困りながらも小さくうなずいたところを見た私はガクッと膝をついてしまいました。


 「そ、そんな・・・。」


 「ほら~。やっぱり独り占めはよくないんだよ~。」


 勝ち誇ったように胸をそらしてそういったレナは、そのままライムを抱えて焚火のほうに戻る。


 「まあ、そう気を落とすなって!別にいなくなるわけじゃないんだしよ。それに普段はべったりなんだからたまにはいいじゃねえか。」


 そういって私の肩に手を置きながらポートが慰めてくれるが、そんな慰めをもらっても意味はない。


 「わかっています。しかしライムと一緒にいたいと思ってしまうのです。・・・まさか、これが恋?」


 真面目に言っているのにポートはガクッと肩を落として苦笑いを浮かべている。


 「お前な~。そもそもモンスターだってことには目をつぶって考えたとしても、相手が男かどうかもわかんね~だろ?それにお前のそれは恋じゃなくて親バカだよ。」


 「親バカですか・・・確かにそうかもしれません。」


 「そこは否定しろよ。」


 「ですが・・・ライムからはどことなく、母の面影がうかがえるのです。」


 「・・・それは、慈愛の光の一件でか?」


 ポートが急にしんみりした表情にして私に聞いてきた。


 そう気にしなくてもいいと思うのですが。この男はいつもは飄々としているくせに、他人の事になると、特に悲しい話になると途端に心を置きますからね。


 「私の事を思ってそんな表情をしてくれるのはありがたいことですが、別に今でもつらいというわけではありませんよ。」


 私はそう言ってレナに抱かれたライムを見る。


 「ライムは優しくて、かわいくて、おっちょこちょいな部分はありますが、とても熱心で。光で癒してくれた時なんかは母の香りさえ感じました。それが気のせいなのかどうかはわかりません。けれど、ライムを母と重ねてしまうくらいには十分なほど、ライムは私にとって特別な存在になりました。」


 ポートは私の話に静かに耳を傾けてくれている。この場面で軽口が叩けるほど、彼は軽薄な男ではない。


 「だからというわけではありませんが、私は少々ライムに甘えているのでしょうね。」


 「甘える・・・か。でもそれじゃあやっぱり親バカとは違うな。」


 「いえ。私はライムに甘えていますが、それと同じくらいにライムにも私に甘えてほしいのです。頼ってほしいのです。ライムは一人で努力しようとしてしまいがちですから。迷惑をかけないようにと思ってしまいがちですから。だから、もっと私に迷惑をかけてほしいのです。それは、親心というものでしょう?」


 ライムは私たちにいろいろ聞いてくれる。どうやったら相手をうまく誘導できるのか。魔法が上達するには。モンスターの種類は。私たちがよくやる連携はどんなものがあるか。


 聞いてはくれますが、決して自分の考えを私たちに言ってはくれません。ライムの考える戦術や、普段思っていること。聞いては見ても、いつも当たり障りのない返答。


 それはおそらく私たちのころを信頼していないわけじゃなく、私たちの事を心配して。私たちの事を気遣って。


 ショープでライムが会った人について、きっとライムは私たちに何か隠している。けれど、それは私たちに迷惑をかけないためにあえて言わなかった。そう思っている。


 私はそんな迷惑をかけてほしいと思っている。ライムが心配だから。まだ数日しか会っていないけれど、それでもあのか弱い生き物を放っては置けない。だから私はたぶん、親ばかになっているんだと思うのだ。


 「そうだな。まあ、数日過ごせば家族同然がこの冒険者稼業だしな。ライムは一番若そうだし、子供を見てるみたいにハラハラするのはわかるよ。」


 ポートはそう言って立ち上がり、大きく伸びをする。


 「俺も、親とは言わないまでも、お兄ちゃん目線でライムを見ていようかね。」


 「私はこんなチャラい息子を持つのは嫌ですよ。」


 「そんなこと言わないでくれよかーちゃん。」


 ポートはそう言ってニコッと笑うと、レナとライムのもとに行き、同じく焚火の前で座って話し出す。


 それを見てルーナも立ち上がり、膝あたりについた土や草を払ってからライムたちのもとにかけていったのだった。


 「家族か。自分自身でも言ったことだしな。そろそろ俺も、本格的にライムとともに歩む未来を模索するかな。」


 陰でこっそりルーナとポートの会話を聞いていたディランは、満点の夜空を仰ぎ見て、その輝く光が手の届かないはるか遠くにあることを知りつつも、いつか掴んでみせると心に決め、ライムたちのもとに向かうのだった。


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