金銭感覚の差
本日2帰路目
ルーナたちが起きだし、簡単に身支度を済ませると、朝食を食べに1階の食堂へ。
ディラン達は先に降りてきていたようで、私たちが席に座ったのを見計らったかのように朝食が机におかれる。
それを早々と平らげると、ディランとポートは食料を、レナは事前に鍛冶屋に渡しておいたらしい装備の受け取りと各種道具の補充。ルーナと私たちはポーションの補充に向かう。
本当は食料を持ち運ぶ私たちがディランと一緒に行った方がいいのだけど、さすがに店先で15日分もの大量な食料を飲み込んでいくところを見せるわけにはいかず、いったん買って帰ってから、部屋で収納することになった。
それに、ルーナは私に何か買ってくれるらしいし、どのみち離れられないというわけだ。
そんなこんなで目的のポーションを買いに来たのだが、本当にこの街にはポーション屋でも十数件ほど建ち並んでいる。
(今通り過ぎたところは赤い色のポーションだけおいてたけど・・・全部ブラッドポーション?)
(どうなんだろう。もしかしたら同じ色になるのは調合の仕方とか素材が似たようなものになってるとかで、効果は全く違ってたりするのかも。)
(ふーむ。ルーナなら見ただけでわかるのかな?)
ルーナは数あるポーション屋を一瞥するだけでさっさと違う店の前に向かっていく。
いったいどんな違いがあるのか。何を持って店に入らずに違うところに行くのか。この世界にまだまだ慣れていない私たちには知る由もないことだった。
しばらく歩いていると、とうとうルーナのお眼鏡にかなう店にたどり着いたようで、ルーナは買い出しのメモを取り出しつつ店の中に入っていく。
店の名前は『コルナット癒し隊』という変な名前の店だった。
しかし、そんな名前からは想像できないほど店の中は神秘的な輝きに満ちていた。
青を基調としたポーションで固められた陳列棚には下から光が当てられているようで、まるでポーションが光り輝いているようなビジュアルである。
それに、光を当てられていないのに光っているポーションもある。
店内の照明が暗めなため、中の雰囲気はさしずめ水族館である。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか?」
女性店員がカウンターから声をかけてきた。ルーナに負けず劣らずの無表情で、営業スマイルのかけらもない。
目もなんだか眠そうにしていて、今にも眠りこけてしまいそうである。
「リンドブルフのヒーリングポーションを3。ルノアのヴェノムポーションを6。トーチカのビルドを4。」
ルーナは注文を終えると銀貨の入った袋を取り出す。
「ドルン山脈ですか?」
店員は注文されたものをカウンターの床下にある物置から取り出しつつそう聞いてくる。
注文しただけでわかるということは、ドルン山脈に行くときのよくある注文なのだろうか?
「ええ。少し稼ごうかと思って。」
ルーナは驚くそぶりを見せず、ただ淡々とそう答えた。
「でしたら、こちらも一緒にお持ちください。お代は半額にしておきますので。」
そう言ってカウンターにおかれた品々には注文したものとは別に勧められたものも含まれていた。
ただのサービス・・・ということではないようだ。
「フィリアノスのクーラードリンクですか?もしかして活動期に入っているのですか?」
「はい。洞窟内では急激に温度が上がっているとの情報が2週間ほど前に伝わりました。もし長く滞在されるのであれば用意された方がよろしいかと思います。」
ルーナは店員の説明を聞いて少し考え込む。
活動期ってもしかして・・・
(火山活動のことなんじゃない?)
(やっぱり?)
ドルン山脈は活火山らしい。それも今は洞窟内の温度が上がるほど活発になっているということだ。
普通ならそんな危険地帯に行くのなんて止められるものだけど、冒険者にとっては準備することが増えた程度のことなのだろうか?
店員も妙に冷静だし、ルーナも心配というよりはどれだけ用意するべきかを考えているという感じだし。
「では、20もらえますか?あと他の注文も3ずつ追加してください。」
「わかりました。」
店員は再び物置から注文された数を取り出し、カウンターの上に並べていく。
「ヒーリングポーション計6の11銀貨。ヴェノムポーション計9の4銀貨。ビルド計7の6銀貨。クーラードリンク計20の40銀貨の半額20銀貨。合計41銀貨となります。」
な、なんかとんでもない値段が・・・。
ポーションってみんなこんなに高いものなのかな?
私たちはちらっと陳列棚におかれている他のポーションの値札を見てみる。
『クスハのヒーリングポーション。銅貨5枚。』
おうふ。
つまりルーナは定価の何倍何十倍のポーションを何の躊躇もなく買ってるってことだよね。
(やっぱりお金持ちなんだね。)
(貴族だしね。)
やっぱり貴族のご令嬢が冒険者をやると財力を使って安全な冒険が可能になるのだろうか?
いや、でもルーナの昔話からすると、昔は働いてお金稼いでいたみたいだし。ということはこれだけのお金をスパッと払えるほど稼いでるってことで。
(歳は近いはずなのになんだろうこの差は。)
(まあルーナさんだししょうがないんじゃないかな。)
天才魔法少女なら引く手あまただったろうし、そりゃ稼げるよね。
しかも10歳から稼げたっていうんだからもう別の世界の話だね。実際に別世界の話か。
ルーナは銀貨袋を開けて41枚きっちり取り出すと、ポーションを一つずつカバンに収めていく。つまり私の出番ということ。
カウンターの人に怪しまれないように、ポーションがカバンの中に収められているかのように、入ってきたところから順次収納。
それを繰り返して最後の一本を収めると、すぐにルーナはカバンのふたを閉める。
ふう。大丈夫みたいだね。
「変わったカバンをお持ちですね。」
ふえ!?
も、もしかしてばれた?!
やらかした?!
「拡張式鞄ですか?」
か、拡張式?
「そうです。この間魔道具店で買いまして。使い勝手がかなりいいですよ。」
「そうですか。私もいくつか持っていますが、重さはそのまま増えるので結局物置の収納スペース拡張の用途でしか使えていません。」
そういって店員は少しため息をついた。
な、なんだか知らないけど大丈夫みたいだ。ばれたわけではなさそう。
「それではこれで。」
「またのご来店をお待ちしております。」
店員の言葉に軽く会釈して、次の店に向かう。




