初めての壁と決意
そうして買い出しの話は終わり、あとは自由時間となった。
といってもルーナは復活したばかりということで、念のために部屋で待機。私もルーナが待機しているならと同じく待機。
レナは買い出しの下見ということで商店街のほうに出かけていき、ディランとポートは飲みに出かけた。
意外とディランも飲みに行くことに対して乗り気らしいという意外な一面を見た気がした。
私たちはルーナと一緒に魔法書を読んでお勉強。
簡単な公式を覚えたり、実際に実験してみて感覚をつかんだり。頭脳担当の美景が頑張ってくれている。
ちなみに公式のほうはさっぱりな私もちゃんと魔法を扱う際に役割がある。
それは指を動かすこと。
指を動かすこと自体に意味があるのではなく、指を杖の代わりにしてそこを魔力の起点とし、それを動かすことで体内の魔力と外の魔力を反応させ、その反応させた魔力を人を手繰るように指を動かすことで威力や方向などを操作するらしい。
慣れるとそれぞれの指で違う魔法を扱ったり、合わせて強力な魔法を扱うこともできるようになるという。
原理は私にはわからないけれど、美景はある程度理解しているようで、見る見るうちに覚えていく。
「流石ですね。呑み込みが早いです。」
ルーナもそう言ってくれている。
だというのに当の本人である美景はというと。
(あーくそっ!これ超難しい!のーちゃんもっと私の指示に合わせて!)
という具合にかなり熱くなっている。
こんな美景を見るのは初めてだった。
初めて出会ってから今まで、できないことは何もないというほどに、難しいことなどないというほどに、何でもできていた美景。
どんな難題でも解いてしまい、学者が解けなかったものでさえ、中学生の彼女が2日で解いてしまったこともあった。
興味を持って取り組んだものはすべて天才といわれるほどの域にまで達していたし、美景は本当の天才だった。
けれど、そんな美景が苦戦し、そして熱くなっている。
言葉がづかいが自然と乱暴なものになっている。
そんな美景を私はほほえましく思った。
(よかったね。美景)
(何言ってるの!?さっさと指を動かす!)
(は、はい!)
私は美景に怒られながらも、うれしい気持ちをいっぱいにし、ひたすら魔法を覚えていった。
魔法訓練で1日を潰した私たちは、深夜、ルーナの腕から抜け出して、目立たないようにそっと魔法の練習をする。
美景に熱が入ったままなので、とことん練習するつもりなのだが ずっと集中し続けているのはどうにも疲れる。
肉体的な疲労はないし、精神的なものなのだけど、かけらも眠くならないということは休む必要性はないってことなのだろうけど。
とにかく私たちは夜通し魔法の訓練。特に精密な操作が出来るように威力を最大限押さえて見たり、細かな動きを思った通りにブレなく調整したり。
そうやってずっと訓練していたからか、覚えた魔法の中で、炎と水と風が上手く操作できるようになってきた。
他にも教えてもらったものがあるのだが、どうにも私たちと相性が良くないらしく、あまり上手く使えなかった。今後の課題になるんだろうな〜。
ちなみに光魔法はかなり相性が良かったらしく、訓練するまでもなくほぼ完璧に操作することができた。
まだ教えてもらっている魔法は炎とかも含めてかなり少なく、初級のいくつかの魔法しか教えてもらっていないので、やれることはまだ少ないけれど、どうにかみんなをサポートするくらいはできそうだ。
(後は実践あるのみだね!)
(実践・・か・・・)
(どうしたの?)
(やっぱり、モンスターと戦うんだよね。)
(そうだね。)
(ということは、殺すってことなんだよね。)
(・・・そうだね。)
相手はモンスター。襲ってくる敵。だけれども、私も今はそのモンスター。つまりは同族に弓を引くといううこと。
簡単に言えば、私たちは人殺しをするに等しい行動を取ろうとしているのだ。
話し合いで解決することはできず、故に殺し合いは避けられない。
わかっているけれど、それとこれとはまた違う。
私たちが人だったなら、こんな気持ちが起こることはなかったのだろう。
けれども私たちはモンスターで、その上人の心も持ち合わせていて。
ショープに来る前に遭遇したモンスターたち。彼らが殺されるところを見ても何も思わなかった。
それは私たちが戦闘に参加していなかったから。どこか映画やアニメを見ているような、俯瞰して見ていたから。
けれど今度は自分で手を下す。無関係ではいられなくなる。殺す側に回る。回らざるを得ない。
仕方ないで、片付けられない。そんなあっさりとした心など、持ち合わせていないから。
(この世界に来てから、いつかはこういう覚悟を決めないとって思ってた。私たちはモンスターだし、襲い襲われの環境でしか生きられないから。)
(そうだね。もしかしたら、人を殺さないといけなかったかもしれない。)
(それを考えたらマシって思ってしまうのは、おかしいことなのかな。)
(前世でも動物だって殺したことなかったんだもん。難しいのは当然だよ。)
(けど、世が明けたら、決めないといけないよね。)
仕方ないではすませられない。けれども仕方ないと言って殺していかなければ生きていけない。
ディランたちも守れない。またルーナに怪我を負わせるかもしれない。
だから、窓から光が差し込んで来た時、私たちは弱々しい心に鞭打って、覚悟を決めた。




