同郷者との邂逅
日本人。
え?日本人?
つまり同郷の・・・え?25年前?
私は状況に追いつけずにプチパニックを起こす。
美景は何とか冷静にしていられているけれど、穏やかではない。
私たちは恐る恐るユミルン形態に変身。
赤木と名乗った青年は少し驚いたようだけどそれだけだった。
私たちはユミルンに変身すると、今でもまだ練習中である疑似声帯を作り出し、ゆっくりと言葉を選んで話し出す。
「そ・・れは・・ほんと・・うです・・・か?」
まだうまく言葉をつなげられないが、うまく伝わったと思う。
赤木はほっとした表情になり、次にまた真剣な表情にかわった。
「ああ。本当だ。俺は。いや、俺たちは、25年前に地球から強制的に転移させられ、今まで生き抜いてきた地球人だ。」
本当に、私たちの前世である地球から来た人。それも同郷の日本人。
だからこそこんなにも懐かしい感じがしたのかと今更ながらに気づく。
けれど、それよりももっと重要なことをしゃべった気がする。
「ほかに・・も・・・いるんで・・すか?」
「ああ。今はアース連合というギルドを立ち上げて、この世界のいたるところに散らばって活動している。」
いたるところにってことは、結構たくさんの人がここに転移させられてきたってことだよね?
「どれ・・くらい?」
「構成人数は全員で1587人。でももともとは1万人近い人数がこの世界に転移させられたんだけどな。」
語られた人数の多さに私たちは度肝を抜かれた。
まさかそんなに多くの人がこの世界に飛ばされていたなんて。
それに最初は1万人以上いたってことは、それだけ人が死んだってことで・・・。
「もんす・・たー・・に?」
「やられちまったよ。」
やっぱりそうだったのか。
私たちも他人事じゃないからわかるけど、この世界は普通に暮らしていただけの人には過酷すぎる世界だ。
むしろよく1500人も生き残ったものだと称賛したいくらいだ。
「日本人だけじゃない。世界各国の人がこの世界に転移されて。それでもこの世界に飛ばされた特典なのか、互いの言語が理解できた。文字もこの世界のものを使えば伝わった。だからこそ団結して生き残ることができた。」
赤木はそういうと下げていたカバンの中から一通の封書を取り出した。
「あんたがなぜエレアナと一緒に旅をしているのかは知らない。まだちゃんとしゃべれそうもないから今聞こうともしない。けど俺たちがいるということだけは知っておいてもらいたい。この封書は俺たちアース連合を訪れたときに見せるといい。きっときちんと対応してくれる。」
赤木は封書を私たちの前におくと、窓際に向かって歩き出した。
「もしも、俺たちのことが聞きたくなったり、他の居場所が無くなったりしたら、グラールという王都近辺の街に来ると言い。そこにはアース連合の本部がある。俺たちアース連合はあんたをいつでも歓迎するよ。」
そういい終わると赤木は窓に手を伸ばしてそのまま外に飛び出した。
この部屋は3階にあるはずなのだが、迷いもせずに飛び出したところを見ると、安全に着地するすべを持っているのだろう。
私たちはしばらく赤木が飛び出していった窓を見つめ、それからおいていった封書を見る。
(まだディラン達と一緒にいたいけど、いつか機会があったら行ってみてもいいのかな。)
(そうだね。ひとまずは封書を受け取っておいて、気が向いたらってことで。)
まだいろいろと整理がつかない。
この世界に同郷の人たちが多数存在することはわかった。それはとても複雑な気持ちで、胸の奥にもやもやとした感情が渦巻く。
うれしいと思うべきなのか、安心したと思うべきなのか、悔しいと思うべきなのか。
(なんだか、少し疲れたかな。)
精神的な疲労感。
スライムの体になってからついぞ感じない体の疲労とは別に、精神的な疲労は蓄積するようで、それでも体がぴんぴんしている分けだるげになったりするわけでもなく。
複雑な思いが渦巻くのみだった。
封書を異次元ポケットに収めた私は割れた瓶がそのままであることを思い出して、さっさと片づけてしまおうと思ったとき、バタンと扉が開いてルーナとレナが勢いよく入ってきた。
「ライム!無事ですか?!」
ルーナが私めがけて一目散に駆け出し、飛びついてくる。
「体はどこも異常がなさそうですね。本当に何もされていないみたいでほっとしました。」
「うわっ!これポーションの瓶?」
レナが私たちがやらかした惨状を見つけてしまい、私たちはぶるっとふるえてしまった。怒られる・・・。
「慌ててポーションを投げつけてしまったのですね。けれどライム自身に何もされていないのなら特に問題もありません。ポーションなら買い直せば済みますが、ライムはどうにもなりませんから。」
ルーナは私たちをぎゅっと抱きしめながらそう言ってくれる。
(な、なんか誤解してるみたい?)
(もしかしてあの赤木って人がここに来たことを知って駆け付けたけど間に合わなくて、この惨状を見て私たちが赤木に驚いて投げつけたって思ってるのかも)
(だよね。これって怒られずに済むってことなのかな?)
ここは話を合わせておいて、穏便に済ませる方が得策なのではなかろうか。
盛大に勘違いしているのは向こうだし大丈夫だよね?
私たちはルーナに抱き着き、怖かったよアピールをすることにした。
ルーナも私たちの行動を見て慰めるように頭をなでてくれる。
ああ、その優しさが痛い・・・。




