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これがリアルな戦闘か・・・

 地面に落ちたとき、少しほかのモンスターが動揺したが、それでもすぐに気を持ち直したのか、今度は警戒を強めながらじりじりとにじり寄ってくる。


 しかし、さっきなんでウーノートはよろめいたのだろうか。


 全く何もない空間で何かにぶち当たったかのような動きをしていたけど、まさか何かの魔法?


 そこまで考えてルーナのほうを見ると、手を何やら動かしている。そしてその手は淡く緑色に輝いており、ルーナが魔法を使って何かしているのがわかった。


 (いったい何をしてるんだろ。)


 (わからないけど、空間魔法は使えないって言ってたから空間自体に何か細工をしているということではないと思うけど。)


 ルーナは私たちが使っている異次元ポケットは魔法であるということを伝えたら、空間魔法はかなり難易度が高く、ルーナ自身は使えないと言っていた。


 ということはルーナが魔法でウーノートの前に壁を作り出したのは事実だが、それが空間魔法によるものではないということになる。


 (空間に作用する以外でどうやって見えない壁を作るのかな。)


 注意して見てみても何をしているのかわからないし、呪文めいたことも言っていないので、どんな魔法を使っているかを知る手掛かりが少ない。


 そうしてルーナを見ていると、モンスター側に動きがあった。


 グルアガがウーノートに指示して移動させ、周囲を円で囲んだのだ。


 「逃がさないってことかね?」


 「単に分散させてまとめてやられるのを警戒したんじゃないの?」


 「ルーナ。次は周りに頼む。」


 「わかった。突撃?」


 「ああ。ひっかきまわしてくる!」


 そうして話し合いが終わると、ルーナの手の動かし方が微妙に変化した。


 そして呼吸を整えてから一気に加速して飛び出したディランは目の前のグルアガに一直線に駆け出した。


 グルアガが慌てて迎え撃とうとするも何かに阻まれたようによろめき、その隙をついて首に横一線の斬撃を放つ。


 防ぐ余裕すらなく剣を受けたグルアガはそのまま首をはねられて絶命した。


 ディランがグルアガに切りかかっている隙に左右からウーノートが噛みつこうとするも、またも見えない壁に阻まれてディランに近づくことすらできない。


 ディランはそうやってまごついている2匹にも斬撃を浴びせて傷を負わせるが、今度は躱されてかすり傷程度しかダメージを与えておらず、まだ動くことはできそうだ。


 そうやってディランが大立ち回りをしている隙に他のものに攻撃しようとしていたグルアガは、しかし先手を打たれてポートの槍の一撃をもらう。


 「俺らが隙を見せると思ってんのか?」


 「ポート。増援が来るかも。数は大したことないけど面倒になりそう。トーキーよ!」


 「まじか!?じゃあ早く終わらせないとな。」


 トーキーというのが何なのかはわからないが、これ以上戦いが長引くのは望むところではないらしく、ポートは近くにいるモンスターに次々と槍を突き出していく。 


 致命傷を与えられてはいないものの、確実に相手をとらえているポートの突きは、相手の体力を削り、動きを鈍らせていった。


 そして動きが緩慢になっていったモンスターの頭部を次々とレナの弓矢で射止めていく。


 戦闘が始まってからわずか数分でモンスターはウーノート2匹となり、その2匹はさすがに分が悪いということで増援が向かってくる方に駆け出して行った。


 「レナ!トーキーは近いのか?」


 「大丈夫!これくらいの距離なら簡単に撒けると思う!」


 レナの言葉を聞いた瞬間に全員は増援が歩を進める進路とは少しずれた方向に走り出した。もともとディランたちが向かっていた方向とは少し違うが、遠回りをしてでもモンスターとの戦闘を回避することが先決らしい。


 (やっぱりゲームとは違うんだね。私だったらレベル上げに必死で森とか歩き回るけどな。)


 (現実だと死んじゃうわけだし、無駄に戦闘する意味があんまりないんじゃないかな。それこそ戦闘が楽しいとか殺すの大好きみたいな変態じゃないと。)


 (確かにね。命大事にが一番だよね。)


 しかし、そう考えるとディランがやったような特攻ってあんまりお勧めできないような。ルーナが何かしていたのはわかるけど、よっぽど自信か信頼がないとできない気がする。


 そんなに強力な魔法なのかな。


 「参考までに教えておきますが、先ほどの魔法は風を利用したものです。」


 ルーナが私に向けて声をかけてきたので聞くことにする。


 「ライムが私たちに見せてくれたものも風を利用したものですが、その魔法は放出系という攻撃系統の魔法に分類されます。対して私が先ほど使った魔法は凝縮系と言い、空気を高圧縮させて固める事により攻撃を防ぐ防護系に分類される魔法です。」


 ほうほう。そんな魔法があるんだ。


 というか空気を圧縮させて壁を作るってかなりすごいことなんじゃ。


 (私たちの世界の技術じゃ到底作り出せないよ。そもそも空気中の分子を圧縮して固めるなんて馬鹿げてるとしか思えないもの。それこそ山ほど分子を固めて圧縮させるか、分子と分子を何かで結合させでもしない限りできないし、そんなことをするならほかに代用できるものはいくらでもあるもの。)


 やっぱり私たちの常識が通じるような魔法ではなかったようだ。


 というかそんな魔法って普通なのか?ルーナが特別なのか、一般の魔法使いでもできるのかによってずいぶん印象が変わってしまうのだけど。


 「ちなみに風を利用した魔法は、放出系は比較的簡単にでき、凝縮系や治療系はかなり難しい部類に入ります。私は風を利用した魔法が得意なので凝縮系も風でやっていますが、本来なら土や水、木などの確かな実体を持ったものを利用した魔法のほうが簡単ですし、使い分けるのが一般的です。」


 やっぱりルーナが特別だったらしい。でもそれならほかの人みたいに風以外で壁を作ったほうがいいと思うのだが。


 「それでも風で壁を作る理由はその利便性にあります。」


 ルーナが小難しい理論などを展開しだしたが、美景が要約してくれた。


 簡単に説明すると、確かに扱いづらいところはあるものの、どんな場所でも行使可能であることや、形や範囲を他よりも自由に設定できること、極めつけはやはり、敵が視認できないというところなどがあり、他の防護系よりも便利で使い勝手がいいということらしい。


 しかし、それは風を利用した魔法が得意で、細かい作業もできるルーナだからこその考え方で、他の魔法使いは大抵ほかのものを利用するとはディランの補足だ。


 (なんかすごいね。魔法すごい!)


 (美景だったらすぐに魔法使えるようになるような気がするけど。あんな魔法書も解読できそうって言ってたくらいだし。)


 (できるようになったらうれしいなー。)


 ルーナの理論もほぼ理解している美景なら、たぶん近いうちに魔法が使えるようになると思う。 


 道中にルーナから教わっている文字や記号を完全に覚えることができればあの魔法書の中身を解明できるだろうし。


 それに私たちの体は睡眠を必要としない。


 だからみんなが寝ている間に魔法書を読んでいれば常人では不可能なほどに早く魔法を覚えていくことだって可能かもしれない。


 現に今は感覚だけでも魔法が使えている。そこに確固たる理論が合わされば、もっと細かくいろんな魔法が使えるようになるかもしれない。


 なんだか夢がいっぱいだ!


 そんな感じでうきうきしていた私たちは、お昼ご飯をたらふく食べすぎて少し大きくなりすぎてしまったのだった。


 「ちょっと重くなりましたね。食べすぎましたか?」


 申し訳ありませんルーナさん。食べ過ぎてしまいました。


 だから太ったとか重くなったとか言わないで!


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