初めての戦闘(見学)
朝食を終えて早々に野営地点から出発したディラン率いる冒険者一行。
この3日の間聞き耳を立てていた私たちは目的地のことをおおよそ知ることができた。
このレゼシア王国の中でひときわ商業が発展した都市。商業都市ショープ。
そこは都市の約4割が商店で構成されており、ほかの街からはもちろん、他国からも訪れに来る者がいるほどにぎわっている都市で、ショープで揃えられないものはないというほどに物であふれ返っているらしい。
前世での東京とまではいかないものの、聞いてる話からするとそれに近いものがあると思われる。
ディランたちはしばらくの間このショープに滞在する予定だったらしく、その道中で私たちと遭遇したということらしい。
ちなみにこの都市では裏取引もかなり横行しているらしく、中にはモンスターを売買することもあるのだとか。
その話をルーナは何度も私たちに言い聞かせた。
レアな魔物ほど取引額が高くなり、小さな町を丸ごと買えるほどの取引額が成立することもあるそうだ。
そんなモンスターの使い道は多岐にわたる。
労働力。観賞用。賭け事用。他にもそれが好きなものの中では卑猥なことのために使うこともあるのだとか。
なので、そのような輩に目をつけられないように、細心の注意を払うようにと厳しく言い聞かせてくれた。
本当に心配してくれているんだろうな。鬼気迫る表情になっているのがその証拠だ。
ルーナもそうだけど、この裏取引に関してはほかの三人も特に注意すべきことだと言っているので、私たちは街中ではカバンの中に引きこもることを決めた。
別にカバンの中でも街の様子はわかるし、私たちも今の状態で堂々と街中を歩くことなんてできないのだし、もとよりそのつもりではあったんだけど、よりその決意を固くする要因にはなった。
しかし、スライムだったら何をされるのだろうか。やっぱり観賞用かな?
「ライムの場合はかなり特殊なスライムということで、その素材を得るために解体されることになるのではないかと思います。」
・・・すごく恐ろしいことになりそうだ。
解体ってどうするの?やっぱり切り刻まれたり?まあどういうことにしろ命はないだろうということなのでやっぱりおっかない。
まだこの世界の料理を味わって食べてないし、ほかにもやりたいことがたくさんあるのに、そんなことのために死んでいられない。
これは細心の注意をしたほうがよさそうだな。
まだ幸いショープまでは幾分距離があるので今日中につくことはないが、早ければ明日の夕方に、遅くとも明後日の昼頃にはつくだろうとのことだ。
十分心構えはできるので、ショープの町でトラブルにあった場合の対処法を複数考えておくことにする。美景が。
(私が考えてものーちゃんが変なことしたら意味ないんだからちゃんと一緒に考えてよね。)
とにかく。もうすぐ人間の街に入ることができるということで、危ないことが多い反面、すごく楽しみでもある。
何せ人の密集する場所に行くのがずいぶん久しぶりなのだ。
それもかなりの都会らしいし、きっと面白そうなものがいっぱい転がってると思う。なんたってファンタジーだし!
店で並んでいる商品も、剣とか鎧とか杖とかが陳列されているだろうし、料理に至っては見たこともない食材がふんだんに使われていることだろう。市場なんかがあればそれこそ見たこともないあれこれが所狭しと並んでいるに違いない。
そんな夢のような場所に立ち入るのである。かなりの期待がこみ上げてくるし、楽しみで仕方がないのはしょうがないことだろう。
(早く街につかないかな~。)
(確かに楽しみではあるよね。ディランさんたちもいることだし。)
そうそう。私たちにはディランたち冒険者パーティーがいるのだ。
ディランたちがこの世界でどれほどの実力者かはわからないけど、きっと大丈夫に違いない。
そうして移動すること数時間。もうすぐ昼に差し掛かるというところで異変があった。
「みんな止まれ。レナは位置と数の確認。ポートは後ろの警戒。ルーナは魔法の準備をしてくれ。」
「「「了解!」」」
ディランの一声ですぐさま指示通りに動く三人。
私たちは何事かと思ったけれど、すぐにどういう状況なのかがわかった。
「前方に3、後方に2、左右に4ずつ。たぶんウーノートとグルアガだと思う。」
「まだ弱っちい奴らで助かったぜ。それなら殲滅できるな。」
「気を抜くなよ。特にグルアガにはな。」
「ライムは私たちの戦闘をよく見ておいてください。あと道具が必要な時は指示するのでよろしくお願いします。」
ということで、私たちがこの世界に来て初めての魔物との戦闘が行われることになった。
実は今まで全くモンスターと遭遇することがなかったのだが、みんなそのことについては全く触れていなかったのでそういうものなのかと考えている。ゆえにエンカウント率が低い、あるいは戦闘はなるべく避けるのが常道かのどちらかであるということだ。
確かに好き好んで魔物に会いに行くようなものなどそれほどいないだろうし、この世界には普通に動物もいるのでわざわざ魔物を狩る必要性がないのだ。
魔物はあくまで害獣であり、被害が出る前の予防策として倒しているのに過ぎないのではないかということである。
まあここら辺の話も追々聞くことができるだろうし、今は戦闘に集中しなければならない。
レナが指さした方向にある草陰から続々とモンスターが出てきた。
数もレナが言っていたように計13で、かなり多く見える。
ウーノートと呼ばれた魔物は見た目はウサギとほぼ変わらないが、額に赤い宝石のようなものが埋め込まれていて、口からは鋭い牙も見える。
グルアガはゲームや漫画なんかで出てくるゴブリンと同じような体で、体色は緑色、体系は5歳くらいの子供と同じくらいで、身体は少しやせ形だけど筋肉はそこそこありそうだ。
ただグルアガと前世で知っていたゴブリンとの差はその装備にある。
手には木で作った盾と自分の片腕ほどの長さの鉄製片手剣を持っており、身体は簡素ではあるものの実用的な革鎧で守られていた。革靴もはいており、帽子をかぶっている者もいる。
そんなモンスターが13。ウーノートが8でグルアガが5である。
そんな相手戦力を知って少し動揺する私たちだけど、ポートはさっき殲滅できるといっていた。
軽口をたたくポートではあるけど、軽いのは言葉使いだけで言っていることは結構まともで正しい。
そんなポートができるというのならこれくらいの戦いは潜り抜けてきたということなのだろう。
ディランがすっと剣を構え、静かに腰を落とした。
そして次の瞬間。ウーノートの一匹が側面からディランめがけて突進してきた。
しかし、ウーノートがディランの間合いに入った瞬間に見えない壁にぶち当たったかのようにその場でよろめき、その隙を逃すことなくディランはウーノートの首をはねた。




