第2話
「初めまして、桐生 竜也です。」
「初めまして、安田 希美子です。」
無難な挨拶から始まった自己紹介。
友の桐生 奈緒から紹介された竜也さんはイケメンでした。
そうだよね、奈緒も美人さんだったわ。
性格がアレだから忘れてた。
そんな考えがまたばれて頭グリグリの刑を受けた。
「い、痛いよ!グリグリは止めて〜〜」
「ふん!今絶対失礼なこと考えてたでしょ。甘んじて受けなさい。」
そんなやり取りを見ていた竜也さんはメッチャ笑ってました。
「ふっ、あっははー!奈緒がそんなに素直に感情出すの珍しいね。希美子ちゃんのことすっごく気に入ってるんだな。あー、おもしれー。」
イケメンが爆笑している。
でも、顔が崩れないあたりイケメン補正って凄いな〜〜。
「はぁ〜〜、笑った、笑った。んで、俺は希美子ちゃんの彼氏のフリすればいいんでしょ?大体の事情は奈緒から聞いてるよ。まず手始めにそっちの学校の前で帰りに待ってようか?そうすればその幼馴染にも話がいくでしょ。」
なんかメッチャやる気あるな〜。
竜也さんは困らないのかな?
でも、あいつの暴走を止めるにはこのくらいしないと。
「頼んでおいてあれですけど、竜也さんは私の彼氏のフリをして困らないですか?」
「うん?別に大丈夫だよ。今付き合ってる子もいないし、何より面白そうだからね」
あ、面白いんだ…。
さすが、友の従兄弟だ。
性格がアレだ。
なんだろう、関わっちゃいけない人を増やしているだけなのでは?
「とりあえず試してみなさいよ。それでダメならまた考えればいいわ。」
ふむ、そうだね。
やってみないとわかんないよね!
「じゃあ、申し訳ないけどお願いします。」
「いいよ。可愛い子のお願いだしね。では、明日から行くからよろしく!」
私よりもやる気だよ。
よし、私も頑張ろう。
こうして計画は進んだ。
ーー次の日
「さて、あいつは来てるかな〜?」
そんなことを言いながら奈緒が窓から校門の方を見ている。
「どうかな?まだ授業終わったばっかりでしょ。」
「いや、今日あいつうちらの方より早いはず……あっいた!てか、もう女子に話しかけられてるよ。」
ん〜、やっぱりイケメン効果は絶大だね!
さて、私はもうちょっと教室にいればいいかな?
ちなみに翔太はまだ教室でハーレムを築いております。
「たぶん、今頃竜也が希美子を待ってることをあの女子達に話していると思うのだよ。」
「ということは、もうそろそろ伝令が来るかな?」
なんて話していたら廊下をドタバタ走る音が聞こえてきた。
教室のドアが乱暴に開けられ、さっき帰ったはずのクラスメイトの1人が私の所にやって来た。
「はー、はー、はー、ふう。や、安田さん!彼氏出来たのって本当?!しかもイケメン!校門の前に待ってるみたいなんだけど!」
お、落ち着こう!
どれだけ焦っているんですか。
たかが私に彼氏が出来たくらいで。
「わざわざ知らせに来てくれたんだね、ありがとう〜。そうなんだ、私にも彼氏が出来たんだ」
私は出来るだけにっこり笑いながらクラスメイトに言った。
翔太の方を見ると驚いた顔をしている。
そんなに私に彼氏が出来たのがビックリだったかい?
まあ、幼馴染兼親友を公言しているのに知らなかったんじゃビックリするよね〜。
「じゃあ、お迎えが来たから帰るね。バイバイ〜。」
私は他に質問される前に教室を後にした。
何やらうるさいがとりあえず無視して竜也さんに挨拶しに行かねば。
校門に行くと竜也さんの周りに女子がいる。
ここにもハーレムが作られているよ!
と、竜也さんが私に気付いた。
「希美子ちゃん!迎えにきたよ、さあ帰ろう」
無駄に笑顔を振りまいてイケメンが誘ってくる。
ここは、私も演技をしなければ…。
「竜也さん、待たせてゴメンなさい。迎えに来てくれてありがとう。」
私も渾身の笑顔で応えた。
周りは呆然としている。
これだけ見せつければ、この情報はすぐ翔太の元にも届くだろう。
私達は手を繋いでその場を後にした。
少し離れた公園で手を離した。
「ふう、面白かった!」
面白い要素は何処にもなかったと思うのは気のせいかな。
「今日はありがとうございました。」
「いいよ、気にしないで。それからこれからも演技続けるなら敬語は止めてね。フリとはいえ彼氏なんだし。」
「あ、うん。わかったよ。」
話をしているうちに奈緒がやって来た。
「おーい、お待たせ!なんか面白くなってきたよ。」
ここにも面白がっている人がいる〜。
この人達味方なのかい?
「どうなってた?良いもの見れたか?」
竜也さんどんだけ揉め事が好きなんですか。
「なかなか、カオスだったわ。まず、クラスの女子が大騒ぎ。ある意味お祭り騒ぎ。だって、希美子に彼氏が出来たってことは翔太くんを独り占めするチャンスだからね。なんか、いつも以上にハーレムが大きくなってたよ。それから翔太くんは呆然としてたかと思うと急に携帯弄りだしたよ。もしかして希美子に連絡入ってるんじゃない?」
言われて携帯を確認してみれば……。
ナニ、これ。
翔太で着信が埋まってる。
メールもいっぱい。
わー、こわい。
無言でそれらを2人に見せる。
「うわー、凄いね。」
「確かに引くくらい凄いわ。」
突然の思いつきで行った今回の計画は恐ろしいことになりそうです。