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[0-4] 声
通路の先には何もない。
誰もいない。
しかし、それこそ錯覚ではないか。
本当は誰かがいるのに、自分には何も見えていないだけではないか。
(――ソウダヨ、何モ見エテナインダ)
脳髄の内側から、声が囁いた。
「ひ――っ」
栞は、恐怖で喉が締め付けられるように感じだ。
(――お前ハ此処カラ出ラレナインダ。一生ヲ、此ノ暗闇デ過ゴスンダ)
ギリギリと音がした。何かが締め付けられるような音だ。
――息が苦しい。
(――お前ハ家畜ダ。盲目ノ侭、喰ラワレル家畜ナンダ)
息が苦しい。首が痛い。
白くほっそりとした手が栞の首を掴み、喉を締め付けていた。そして、あろうことか、それは――自分の腕だった。
栞は絶叫した。
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