1-3 異世界の草原でボクはおっさん陰陽師にあった
天幕というのは布で作った平屋のコテージみたいなものだった。
あまり日本では見かけない感じ。
テレビで見た大草原の遊牧民みたいな人たちの家みたいだった。
で、着いて早々ボクは天幕のひとつに放り込まれた。
気絶したエルザはトウコツが”テツ姉”と呼んでいた人に連れて行かれた。
”テツ姉”の見た目はトウコツそっくりだった。
「で、だ。
あんちゃん、わりぃんだけど暫くここに俺といてもらうぞ」
そう話しかけてきたのはトウコツが”コン兄”と呼んでいた男だった。
「俺の名はコントン。このサイカチ村自警団の、なんだ。
軍師みたいな仕事をしている」
そんなことをいうコントンのは、
ボロボロの陰陽師みたいな格好をしていた。
なんて呼ぶんだかわからないけど、白くてだぶついた感じの服。
下半身は黒っぽい袴みたいな感じだ。
「まぁトウコツが連れてきたんなら、悪ぃやつだたぁ思わねぇんだが、
俺たちのお客さんはお貴族様なんでな。
顔ぉ見せると、ちぃとうるさい事になりそうなんだわ」
コントンは坊主頭に無精ひげを生やしたおっさんだ。
目つきは鋭いが、なんとなく愛嬌のある表情を浮かべている。
「ふむぅ・・・何がなんだかわからん、という顔だな。
あんちゃんたちはアレか、”落ちてきた”口なんかな」
「”落ちてきた”?」
「んむ。言葉もわかるみたいだしな。
いわゆる”ニホンジン”ってやつだろ、あんちゃん」
自分が近所の大型犬だと名乗る女の子や巨大鎧武者を見たときから、
まぁそうなんじゃないかとは思っていたけど・・・
「ここはあんちゃん達の感覚からすると”異世界”ってやつだ。
ウチにもあんちゃんたちみたいに
”日本”から来たってやつが何人かいるからな」
「異世界・・・」
「信じられないかも知れねぇなぁ。
でも事実なんだわ。
さらにいうとたぶんだが、あんちゃんたちは
もう元の世界にゃ帰れんぜ」
「そ、そんな・・・」
「まぁいきなり言っても信じられないだろうからなぁ・・・
あんちゃん、もう神様にあったか?」
「は?」
「俺は聞いただけだから細かいことは知らねぇんだが、
”日本”からここに”落ちて”きたあと、
必ず神様に呼ばれるんだと。
いやいや、そんな顔するなよ。この世界には神様が実在するんだぜ。
聞いたところ”日本”にはいないっぽいけどな。
まだ会ってないんだったら、たぶんそのうちあうだろ。
そん時に聞いてみりゃいいさ」
神様・・・白い服白いひげの後光で顔が見えない系おじいさんだろうか?