明るい未来
聖暦 5999年12月 西方州 州都 王城
「陛下、東方は300万もの人間を日本から入手し、空前の景気だそうです。」
「ふむ。やはり面白くないな。工作のほうはどうなっている?」
「まだ、思うようには結果は出ておりません」
「うーむ。そうか。続けよ。召還計画は?」
「ハッ、この者から新案の計画提出が出ております」
・・・・・・
「・・・ふむ、等価交換理論を応用しイギリスを召還する際に、日本を元の世界に送り返すことが可能だと?」
「先の話のように時間的な差異はないのだな。よし、その計画、進めよ火急だ。」
(伝聞によれば、イギリスの人間は、日本の半分程度だそうだが、東方が実際に入手した人間は300万、召還日まで増えても500万程度。最終的に5000万の人間を手に入れれば、真王の条件を満たすのは余だけか)
「フッ。勝ったな!」
聖暦 5999年12月 対馬 港 東方州エルフ橋頭堡 将帥館
日本政府から、我々の退去要請の話がまたあった。いつもあるのではあるが、今回は強い調子で言ってきた。日本政府の担当官の話しでは保守と名乗る集団の要請らしい。先日の話では煩い連中が減ってやりやすいとか言っていたはずだが・・・日本も少なくない問題を抱えているようだ。
実は一万人いた上陸兵も今では駐留部隊200人ほどだ。ここでは大っぴらに人肉が食えないので多くの兵は東方州に戻している。日本政府と市民団体の協力で人間の輸送に、こちらのエルフが関与する必要もなくなってきた。
既に1000万人の移民を条件に退去の密約はできているが、移民が完了していない以上退去するわけにはいかないが、評議会に伺いくらいはしておくか。少なくても彼らは約束は守るし協力的だ。
聖暦 5999年12月末 西方州 西部 カレ湾沿い
「提督、成功です。 西方に陸が現れました」
「おお、そうか。まだ、見えぬがどれほどの距離だ」
「はっ、魔界反射板によると30Km西に陸地と人間大の生命反応だそうです」
「よし、王城の陛下にお伝えしろ。これからが、大変だぞ。5000万もの人間を家畜化せねばならない。
心してかからねば。全艦隊西に進路を取れ! これで、西方は。西方は救われる!」
聖暦 6000年1月 東方州都 評議会 評議会議長室
「何、日本が消えた。だと?」
「ハイ、12月末の満月の夜に突如として消え去りました」
どういうことだ?召還した島が消えただと?
「魔法局の連中は何といっている」
「ハイ、調査中とのことで、正式な結論を出していません」
「駐留の部隊は?」
「日本と一緒に消えたかと・・・」
・・・日本から手に入れた人間はおよそ500万人。半分以上、繁殖に向かない潰して食肉用途にするしかない人間だ。魔因子による品種改良も着手したばかり。過去のように完成した秩序を取り戻すのに時間がかかるが、単に時間だけの問題だ。駐留部隊と予定していた500万の人間は惜しいが。
「南方州に向ける予定の人間は、全て労働用に回せ。街道の肥やしにするには惜しい」
「ハッ。既に送り出したものも戻しますか?」
「いや。奴らにも必要だろう。種付け用に10万も雄人がいれば文句は言うまい」
「了解しました。そのように処置いたします」
担当官が去っていくのを見ながら、私は思う。この世界の人間の絶滅の危機は救われた。そしてエルフも救われた。困難があろうとも皆が力を合わせれば立ち向かうことは可能だ。聖書に記された通りである。
さて、王擁立も間近だ。準備を急がねば。