戦車の強靭なる足、キャタピラと懸架方式(サスペンション)について
そうだ、クビンカ戦車博物館に行こう
と思ったけど資金不足と知識不足から急遽中止に!(←解りきっていた事だろ)
さて今回は、これが無ければただの薄っぺらいトーチカ、サスペンションとキャタピラ、後特に書いていなかったが転輪と動輪の話をしよう
ステップ1「足回りの種類」(長め、されど書かれていないのも多々あり)
まずはサスペンションの種類を話そう
・スプリング型
・コイルスプリング
・リーフスプリング
・トーションバー型
・油圧サスペンション型
・空気圧サスペンション型(これは戦車に使用していないが参考程度に)
・リーフ式サスペンション
・独立懸架方式
・シーソー式連動懸架
などなど、他にもたくさんあるがこれらくらいしか内容を把握していないのでご容赦のほどを…
次にキャタピラの種類ははめ込む構造としては
・シングルブロック方式
・ダブルブロック方式
・蛇腹方式
の三つでほかにも色々ある…
他には接合方式での種類は
・シングルピン
・ダブルピン
の二つである、詳しい事はまたあとで。
なお、材質は主に鉄の合金で作られている
つぎに転輪と動輪の種類はこれくらい
転輪
・大型転輪
・中型転輪
・小型転輪
・挟み込み転輪・千鳥足転輪
動輪
・起動輪
・遊動輪
・誘導輪
此処までで色々と書いたが、書いているのはごく一部、それらをピックアップしたのがこれである
ステップ2「サスペンション(懸架方式)の説明」
まずはスプリング型の二つについてから話そう
コイルスプリング(ばね)とは、簡単に言ったら砲撃した時の衝撃や走行する際の振動を抑えるために『ばね』を使用して
衝撃を受けとめようとした方法の事である、利点は低コストで高い信頼性と整備性を持つ
だがしかし、欠点はと言えばバネレート(※1)が構造上一種類しか使えないと言う事だけだろう
これは主に前大戦でのアメリカ戦車などでよくみられる
…と言うよりも偉大なるクリスティー博士が作ったクリスティー戦車が派生した為であろう
次にリーフスプリングとは、鉄の弾性を利用し衝撃を少なくするサスペンションの事である
このサスペンションの利点は安価で単純、しかも丈夫で戦車に利用するには申し分無くこれを使われた戦車は多かった
だが欠点は操縦性と乗り心地が悪く、車に弱い人間にとっては最大の敵と言えるだろう(まぁ戦車に乗る時点で車酔いする奴は戦車兵にならないだろうが)
これは前大戦のドイツ陸軍のII号戦車やルノー乙型で見られる
ただし、このリーフスプリング方式は一纏めにしているがかなり種類が多い為注意が必要である
次にトーションバー型サスペンションの話をしよう
まずトーションバーの言葉自体の意味は『ひねり棒』という意味で、その名の通りひねった段階で反発する現象を利用している
上記してあるコイルスプリングと比べて同じ重量で衝撃を吸収でき、そのために軽量に出来て尚且つ、まっすぐで細い為スペース効率も良い
だが、コイルサスペンションよりもコストが高い事と生産性が悪いことだろう、現に戦後の日本でも治金技術の問題で苦労している
これは主に大戦時のソヴィエト戦車で多く見られる、だが最初に戦車に利用されたのはスウェーデンの戦車とか…
次に、油圧サスペンションだが、そんなに難しくはない構造だが、コストが上記の物と比べると高い、
例えば注射器を想像していただこう、押す所を押して中の物をだしたり引き出したりして転輪の位置を調節するのだ
コンピュータが無いと、それくらいしかない…実際にカール自走臼砲に使われていたが、砲弾を発射する際に出来る衝撃波を吸収するために地面に車体を置く様な形で使用していた
…で、コンピュータなどの精密機械が出来始めてから、作られたのが『64式戦車』や『MBT-70』を筆頭とするMBT群
これを搭載した理由は先ほども書いたように転輪の位置を調整することで、車高を低くして見つかりにくくなり被弾面積を少なくできるのだッ!!
車高が高ければ高い程敵に見つかりやすくなってしまいボコボッコにされてしまう
それを防ぐためにダックインと言う戦法もあるが…そもそもの話、戦車の車体をすべて隠せるくらい掘ると言う作業はどれほどの労力を要するのかは想像に任せますが
さらにダックインと言う戦法上、後方にもいくつか車体を隠せるくらいの穴を掘らなければならない
つまりは車両の数×2~3と、途方も無いだろう、工兵の方々と油圧サスペンションに感謝!
…しかし、これを第2次大戦で採用するとなると難しい、何故ならコンピューターの無い時代、更に整備性は悪化
生産性? 何それおいしいの? と言う様なものであるため、量産車両には向いていないだろう
尚、独立懸架方式と言う物は、上記のコイルサスペンションやトーションバーが各転輪に一つづつ付いた物と考えて頂ければ幸いである
ステップ3「キャタピラについて、あとどうでもいいけどヒ●ド●ブとニーベ●ゲンのキャタピラってすごいよね」
いきなりだが、無限軌道、クローラー、トラックベルト、履帯…これらがすべてキャタピラと同義と知っているだろうか?
一つの物が複数の物をさすことは良くあることである……うん…
構造の方から説明すると
シングルピン方式
長い1本のピンで片方から接合する方法で利点は部品点数が少ないため耐久性が高く、おそらく生産性は良いが
欠点は履帯が取り付けにくい事である。
ダブルピン方式
短い2本のピンで両方から接合する方法で、シングルピンとは逆の性質を持っており生産性は低くなるがその分履帯が取り付けやすい。
で、接合方式での種類分けの説明だが
シングルブロック方式
キャタピラを構成するピース同士を直接ピンで接合する方法で、利点は部品の数が少なくコストが低いので大量生産向きではあるが
欠点は柔軟性(※2)がなく、さらにピンが外れやすいという駄目な点もある
そのため、高軌道を求めない車両…工作車両や耕作車両等に向いている
ダブルブロック方式
キャタピラを構成するピースを接合部品を介してピンで接合する方法で、利点は柔軟性に優れてピンが外れにくいという利点を持つ
欠点は、部品の数が多くコスト高でその分信頼性が劣っていると言う点であろう…これに目を瞑れば、重戦車や中戦車と一部の軽戦車等に向いていると言う事でもある
しかし欠点に目を瞑りたくなければ、上のシングルブロック方式で我慢するしかないだろう
蛇腹方式
キャタピラのピースを止めるピンを左右にも折れ曲がるように接合した方法で
驚く事無かれ、履帯自体も左右に折れ曲がるように設計されている。
こうすることで柔軟性があってしなやかに動ける…が、コストも部品数も信頼性もすべての点においてビックリする…
…そもそも、第2次大戦レベルで『こんな物が作れるか?』と言う話にもなる
この事から、リアル重視で書くならばまずはシングルブロック方式で軽戦車や自走砲(小口径砲の)、突撃砲等を大量生産し機甲部隊(あくまでも焼き付け刃)
次にダブルブロック方式の中戦車や重戦車、あとは大口径の自走砲を作ると言うのが自然の流れになるだろう
因みに、現在の戦車…第3世代に使われている方法はダブルピン方式のシングルブロック方式である
ステップ4「転輪と動輪についてソヴィエト(話し合い)しようか」
そもそも転輪と動輪とは何か? それを簡単に説明したら…キャタピラの車輪の事を両者ともに指しており、
『転輪』と言うのは地面に接している一杯ある方
『動輪』が両端にある地面に接していない車輪やハーフトラックのタイヤの部分の事である。
まずは大型転輪についてだが、第2次大戦中頃から戦後しばらくのソ連製に良く見られて、74式戦車にも使用されたことのある転輪で
他にもイギリスの巡航戦車などに使われていた。 キャタピラ上部を支えるために大型化した。
利点は大型化することによって高速走行に優位に立てて機動力と言う点では拍手者だろう
だが欠点は…大型化したことによって転輪の数が絶対的に少なくなり、車輪同士の幅が大きくなって車体を支えるサスペンションの数も
比例して少なくなり不整地での行動…移動力は低い。更にキャタピラ上部の振動によって転輪が破損しやすく、大型車両には余りお勧めでは無い、と言ったところだろう
次に小型転輪だがこれの歴史は戦車(装甲はっ付けて銃砲をくっ付けた広義の意味)が登場するよりも前に生まれていた。
…おそらく、キャタピラが発案されたと同時にこれも考案されたのであろう(憶測注意報発令)、これを付けることによって転輪同士の間隔を狭く出来るために
上部のキャタピラは別の小型の転輪で支えられており大型転輪のように壊れやすくはない。更に移動能力が高い事である…これならば砂漠でも荒れ地でも走行可能だろう(※3)
だが、機動力には限界があり軽車両等には向いておらず、逆に大型車両に向いている転輪である。
尚、これを採用して量産に至った戦車はイギリス陸軍のマチルダIIやチャーチルなどが代表に挙げられる
・・・どれも駄目じゃん! と思った方はまだ早い、これらの良い所取りの奴はある…それが中型転輪
中型転輪とは大型と小型の良い所と悪い所を妥協してできた転輪であり、両方の利点と欠点が混ざっているがそこまで深刻ではないために引っ張り凧
所謂、オールラウンダーと言う奴だろう。
これで使われている戦車は最近のMBT…90式とか10式とか後はM1A2等に使われている。
尚、この中型転輪はポルシェ・ティーゲルや92式重装甲車にも使われているため、この事を考えれば第2次大戦物でも出しても別段問題はないはず…はず
で、お待たせしました、ドイツ戦車マニアにはたまらない一品、千鳥足転輪(挟み込み転輪とも言う)の説明となります
この転輪は大型店リンと小型転輪の良い所だけを取ろうとして開発された転輪で、大型転輪を重ねて…と言うよりもティーゲルの足回りを想像してもらいたい
あのようにする事によって転輪の間隔を狭めて移動力を上げて、さらに機動力も得ようとした野心の結果である
…のはずが欠点は重ね合わせるように配置した転輪のせいで奥の方の転輪が破損したら手前の方も取り外さねばならず、さらにサスペンションが破損した際に
その構造から交換が難しく、更に奥の方と手前の方の転輪に泥や土が入りやすく、凍結もしやすく、整備性の点で大問題
しかも、移動能力の向上には思ったよりも効果を示さなかったた………
これを利用した戦車はドイツのV号シリーズとVI号シリーズを主とした超絶有名な戦車である
…尚、前大戦終結後に新規で作られた戦車に採用されたことはほとんど存在せず、架空戦車でこれを採用するのは止めにしておいた方が良いだろう。
ただし、これは事前知識があるからこその物であってわざとこれを採用すると言うのもありかもしれない。
……余談だが、なぜキャタピラの上部を支えるかと言ったら、数10Kgもの奴が何個も付いた物が6~7mも支えなしで続いていたら……それを防ぐためである
しかし、支えなくてもいい設計の戦車もある…これは憶測だが、それを結合しているピンやキャタピラの強度が強いのか、それとも単純に軽いのか…
さて、次は動輪についての説明をしよう。
まずは…
起動輪について話そう、これは前後の端、どっちかに存在し…と言うのもエンジンの位置によって前後の位置が変わるが
同僚源とつながっており、ここでキャタピラを前後に動かして戦車を動かしているのである。
尚、種類としては歯車状になっている物もあったりキャタピラにある突起物と噛み合って動かす種類の物もあるが、
後者の物は主にT-34やT-55などの旧ソ連製戦車等で使われているが、現在の所は前者の歯車の方が作られている
何故なら、キャタピラを破損した時に突起物があるキャタピラと突起物が無いキャタピラが交互に配置されており、その突起物が無いキャタピラだけが破壊されて交換部品が無かったら?
逆に突起物があるキャタピラだけ破壊されたら? …詰まる所、そう言う事である…確率は低いが全く無い事はあり得ない、それが戦場の常である。
しかし、いまだに旧東側諸国では使われているためまだまだ現役である。
次に誘動輪について説明すれば…期動輪とは反対の場所に存在する物で位置を前後に移動させることキャタピラの張り具合を調整する役割を持つ
…何故張り具合を調整するかと言えば、走行することでキャタピラを接続しているピンとその周辺の摩耗が進み、徐々にキャタピラの幅が延びてくるために調整が必要になり
これをしなけらばより一層破損する確率が高くなってくる。
それを予防するために存在するのだ。
最後に、誘動輪についてだが…一言でいえば、ハーフトラックのタイヤの部分
と言うのは簡単すぎなため一応詳しく説明すれば後ろの戦車は動輪の出力を制御をして右左折、超信地旋回するのだが
(第2次大戦レベルで)超信地旋回を必要としない車種…トラック等の場合は無用の長物であり、それならと取っ払って代わりに付けたのがこれ
これならば面倒な生産工程をいくつか飛ばすことが出来るため生産性もアップ
…これのお陰で、初期のドイツ軍の快進撃を支えたと言っても過言ではない
しかし現在、ドイツ軍が天然ゴムの代用品として作った合成ゴム、それとリアルチート国家アメリカの生産能力でトラックはタイヤ、
或いはキャタピラが採用されて、これを採用している車は(民間車含めて)ほとんど絶滅危惧種であり、そのうち博物館か映像、或いはスキー場等でしか見られなくなるであろう
ステップ5「稀にキャタピラを外してタイヤ走行する戦車もある」
…皆様はこのような戦車をご存じだろうか…
BT-7快速戦車というソ連製(変態)戦車を……
この戦車はキャタピラが着脱式で、しかもキャタピラを外したら転輪がタイヤで、起動輪が転輪の一つと密接しており車輪走行可能で
ロシアと言う無駄なまでに広い大地で迅速な兵員展開を可能にするために作られた戦車で、BT-1は7.92mm機銃を2丁載せてあり対人戦闘主眼でしたが
BT-2から37㎜砲を装備、対戦車にも少しばかり目を向けた(と言うより歩兵支援のため?)戦車である
なお、BT-2のスピードはキャタピラ時で時速50km、車輪時でなんと時速70kmを記録する…だがその代わり大幅に削られたのが装甲厚
これはBT-3(2の主砲を45mmに)にもBT-4、BT-5、BT-7にも見られる傾向で火炎瓶攻撃や対戦車ライフルなどで
ボコボコ(・・・・)…主に日本陸軍とフィンランド陸軍にされて更に独ソ戦でもその弱さが目立っており
…しかも、車輪走行は余り使用せずに更に、操縦方法の違い…タイヤ走行時は普通の車両と同じく前輪の向きを変える方法で、キャタピラ時は普通のキャタピラ走行であった
兎に角…その操縦方法の違いが構造上難しくなり、『あれ? この機構いらないんじゃね?』と言う事になってBTシリーズでこのタイヤ走行快速戦車は打ち切りとなった。
…これは今回とは全く関係は無いが、一応このような車種もあると言う事を頭の片隅に入れてもらえればこれ幸いかと
※1
バネの硬さによって振り分けられる種類の名称
単位は、『1tの重りで10cm沈むバネ』で10Kg/mm
※2
高機動や超信地旋回等の事
※3
ただし泥濘などは保証しかねます
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うわぁ、とっても難産だったぁ…特にサスペンションと転輪の所…書いては消し書いては消しを何度繰り返した事か…
それでは次回、どれにしよう?
甲、戦車の命の水(?)、砲弾について
乙、戦車の矛盾点について
丙、戦車の鋭利なカギ爪、副砲について