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校正者のざれごとシリーズ

校正者のざれごと――不正アクセスなんて他人事だと思っていたのに

作者: 小山らいか
掲載日:2026/08/28

 私は、フリーランスの校正者をしている。

 今年のお盆休みは8月8日から16日という人が多かったのではないか。私の所属する校正プロダクションでは、8月12~14日を夏季休暇にするということになった。8月11日が山の日の祝日、15、16日が土日なので、一般的に考えれば8月11~16日が休みになる。

 ところが、この「一般的」が通用しない会社もある。ある編集プロダクションに「12~14日は夏季休暇です」と伝えたところ、「じゃあ初校の納品は11日(山の日・祝日)で」と言われた。再校の出校は15日(土曜日)だという。さらに別の大手出版社からは、13日納品の仕事が来た。「休暇と伺ったので納品は宅配便でいいですよ」とのことだった。ご配慮、ありがとうございます。いやいや、だから、休暇とは?


 というわけで、世間一般のお盆休みの時期は私はとても慌ただしかったのだ(ずいぶん長い言い訳だ)。そして、事件は起きた。


 カードでちょっと大きな買い物をしたので、引き落としがいつになるか明細を確認しようとした。先月の「お支払金額のお知らせ」メールからカード会社のサイトにログイン。IDとパスワードを入力すると、セキュリティ強化のため、カード番号を入力しろという。

 ――あれ?

 いつもはこんな画面は出てこない。慌てて、さきほどのメールを確認する。すると、同じ「お支払金額のお知らせ」のメールがもうひとつあることに気づいた。しまった。すぐに、カード会社のHPからログインしなおし、パスワードを変更。これで大丈夫なはず?


 変更したパスワードでもう一度ログインしてみた。明細などは変化なし。ところが、何となく画面に違和感がある。気づくと、ずっと使わずにためていたはずのポイントがほとんどなくなっている。そして、数秒後にポイントご利用のお知らせメールが届き、AMAZONポイントへの交換履歴が。もちろん、確認するとAMAZONギフトカードの番号はすでに利用された後だった。ここまで、わずか4、5分。

 うわあ、やっちゃったなあ。実は、先ほどのお盆休みに初校・再校の校正をした本は、高齢者に起こりがちなトラブルへの対処法をまとめたものだった。もちろん、詐欺への対策もあった。高齢者に限らず、気をつけなきゃいけないとわかっていたのに。


 失敗談だけ書いて終わるのも情けないので、言葉の話でも入れようと思い、この文章のタイトルをわざと「他人事だと思っていたのに」とした。

「他人事」は「ひとごと」? 「たにんごと」?

 この「他人事」は本来「ひとごと」と読む。だが最近は「たにんごと」の読みも使用される機会が多くなった。広辞苑の「ひとごと」の項目は「人事・他人事」とあり、説明の最後に「近年、俗に『他人事』の表記にひかれて『たにんごと』ともいう」とある。

 例によってNHK放送文化研究所のページを確認。すると、こんな記事があった。


『「ひとごと(人事)」と「たにんごと(他人事)」』

「他人事」「たにんごと」という表記(書き方)と言い方・読み方は、どちらも放送では原則として用いないことにしています。「自分に関係ないこと」などを意味する場合の伝統的な言い方は「ひとごと(人事)」とされ、放送でもこの語法を採っています。表記は、「ひと事」または「ひとごと」です。 


 もうひとつ気になるのが「自分事」という言葉。ビジネス書などでよく見かける。「他人事」の表記から対になる語として使われ始めたようだ。毎日ことばplusでは2019年、2026年の2回採り上げられていて、2019年には約7割の人が「おかしい」としていたのが、2026年にはその数は5割ほどに減ったという。毎日新聞用語集では、「自分事」は極力避け、「自分の事」「我が事」を使うよう案内している。


 同じようにビジネス書でよく使われる言葉に「まるっと」がある。これも私にはしっくりこない。ゲラ(校正紙)で見かけると、「一般的ではないようですがOK?」などとエンピツを入れている。これはNHKではどうなんだろうと思い検索してみた。すると、『まるっと!』という番組名があるのを発見。NHK名古屋放送局の夕方のニュース番組で、愛知・岐阜・三重を中心とした地域の情報を扱っているらしい。

 さらに、朝日新聞「街のB級言葉図鑑」という記事にこう書かれていた。「まるっと」は愛知県を含めた各地の方言で、全国的に使われるようになったのは仲間由紀恵さん主演のドラマがきっかけだった。そうか、だから名古屋放送局の番組名なのね。いまでは辞書にも採用されているという。エンピツでの指摘も難しいところだ。

 

 そして不正アクセスの後日談。

 事件は週末に起きた。週明けにサポートセンターへ電話してカード番号の変更手続きを依頼。不正に使用されたポイントは返してもらえることになった。これでひとまず実害はなし。しかし、このあとカード払いにしていた各所へアクセスしてカード情報の変更をしなければならず、手間と時間を要した。

 何やってるんだろうな、私。まあ、こんな経験も、いつか仕事で役立つかもしれない。いい経験だった。いや、負け惜しみだな。皆さんもお気をつけください。


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