第22話 残っていた感情
ハルは陸にこの街の状況の説明を求めた。
そして陸が話し出した。
「戦争が始まったが俺たちは、シェルターに入れてもらえなかったんだ」
シェルターに入れてもらえなかった人達は、兵士に誘導され避難場所に向かった。
だが、これだけ大勢の市民が全員避難できるはずがなかった。
シェルターに入れなかった人達の大半は戦争に巻き込まれて死んだ。
その後、敵の兵士がシェルターを撃破していった。
シェルターで生き残った人とシェルターに入れず街で生き延びた人達によりこの街でいくつかのグループができた。
「ねぇ、シェルターで生き残った人がいるの!?」
「ああ大半は死んだが、シェルターから逃げ出して生き残った奴らもいるが、兵士にかなり殺されてるから今はどれだけ生き残ってるかわからない」
「清新中学の生き残りを知らない?」
「俺は、中学生に知り合いはいないから分からないがあそこはかなり派手に攻撃されてたから生き残った者がいるかわからいな」
その言葉にハルは悲しい顔をした。
微かな望みが断ち切られた気がした。
「その状況がわかる人はあなたの仲間の中にいるの?」
「知ってる奴は俺達の仲間の中にいるかもしれない、だがあれだけ殺されたんだ!生き残りの可能性は少ない、弟か妹なのか?」
「そうよ、私の弟・・・死んだ可能性が高いのは分かるけどもし生きてたら・・・」
ハルの目から涙が溢れ止まらなくなった。
陸は、女の涙に弱いお人好しだった。
「まあ、ここは狭い街だ俺の知り合いに片っ端から情報集めてやるから、その泣かないでくれ」
その言葉でハルはふと気づいた。
悲しくて目から涙が出てる事に、この前二葉からシェルターが、攻撃された話を聞いたときはショックが大きくて気づかなかったが、悲しくて涙を流す感情がまだ残っていた。
またこれからどれだけ人を殺すかわからないのに家族が死んだと思うと悲しくなる。
お父さん、お母さん、アキト・・・会いたいよ、生きていて、再会したらいっぱい泣けるよ、そのときだけは普通の女の子に戻れる気がした。
「仲間たちの所に案内するよ、状況を知ってる奴がいるかもしれない、なんてたって俺達の仲間に中学生もいるし、子供から年寄りまでな」
ハルは、三人の仲間に相談した。
みんな.陸の仲間の所へ一緒について来てくれると言ってくれた。
この街は、救助がいつ来るかわからない状況の中で食料を確保する為に強いグループが作られていった。
死んだ兵士の武器を多く集めたグループはより大きくなっていった。
敵の兵士が出てきたときは、銃を使った戦いになった。
そして、戦死した兵士の武器を更に回収して勢力を上げていくグループが出てきた。
ときには市民のグループ同士による銃撃戦がはじまった事もある。
どのグループも弾には限りがあり、弾が無い銃を向けて脅し、威嚇した後にナイフなどの武器を使って戦っていた者も多くいた。
このグループも実弾がなくなり、弾のない銃を持ち威嚇していた。
陸に案内されて隠れ家に向かった。
「なあ、あんた俺達のリーダーになってくれないか?」
「あなた達の事はまだ信用出来ないわ!それに陸、あなたを信じても、あなたの仲間を全員信じるなんて怖くてきないよ」
「ああ、お互いそうだ!俺達だって怖い、だが、弱いグループは強いグループに酷い目にあわせられるんだ!生き残るには勢力を大きくして強いリーダーが必要なんだ」
「私なんか強くないよ」
「だが、あいつを倒したのはアンタだ!」
お互い生き延びるために協力し合うという事で、手を結ぶ事にした。
「救助が来るまでよ」
「わかったよ、それでいいがこのメンバーで何かやりたい気がするけど」
「あまり夢とか将来に対して期待してないのよ」
陸の案内で隠れ家まで来た。。
「ここなの?」
着いた場所はとなりの街の小学校だった。
「ここからだと敵が近づいて来てもすぐに分かるし色々と便利だ」
学校に入ると100人近い様々な年齢の男女がいた。
そこでハルが紹介された。
「新しいリーダーだ!若い女性だからといって舐めた態度をとると死ぬぞ!」
ハルを見てみんな嬉しそうだった。
前のリーダーからは相当酷い目に合ってたことが伺えた。
だが、アキトの情報を知る者はいなかった。
ハルの話から始まりみんなの身の上話を聞く事になり、みんなで食事をしてるうちに少しづつ仲間意識が芽生えていった。
小学校の中には、着るものも多く集められていて、給食用の冷蔵庫の中には色んな店から物色してきた食べ物がたくさんあり、衣食住には困らなくなった。
この二日間は、戦闘の音が聞こえなくなっていた。




