親友がわたくしの婚約者の腕にぶら下がっています
「まぁ! はしたないですわよ! ひとのこんやくしゃのうでにぶらさがるなんて!」
そうわたくしが指差して言うと、わたくしの親友フィリアに言い咎めると、フィリアがごめんなさい、と謝罪した。
「リーミラ嬢。私はそれくらい、気にしませんよ?」
フィリアを軽く持ち上げていた婚約者ドロントのそんな言葉に、わたくしは目を吊り上げて返答した。
「なんですって!? こんやくしゃいがいのおんなにふれられて、きにしないって!? あなたがきにしなくても、わたくしとせけんがきにするのです!」
わたくしがそう言うと、ドロントが優しく笑ってわたくしの頭を撫でた。
「世間なんて難しい言葉、よくご存知ですね。リーミラ嬢。でも、あなたたちの年齢で気にすることでは……すまない。淑女に失礼だったね」
わたくしの顔を見て謝ったドロントに、わたくしは赦しを与えた。だってわたくし、かんようないい女なのだから。
「リーミラ嬢。では、あなたを持ち上げてもよろしいですか?」
「よろしくってよ!」
ドロントがそう言って差し出す両手にわたくしは淑女らしくゆったりとした動作で近づいた。腕にぶら下げられるあの子たちと違って、婚約者のわたくしは、ドロントに抱き上げてもらえるのだから。
「ほら、リーミラ嬢。たかいたかい!」
「きゃあ! ドロント! もっとよ!」
羨ましそうにドロントを見つめる令嬢たちに、わたくしの自尊心は高まる。ドロントに抱き上げられるのはわたくしだけ。
「ドロント君。いつもリーミラとその友人たちの面倒まで見てもらって、すまないな」
「いえいえ。かわいい子たちの相手をさせてもらえて嬉しいですよ」
そう笑うドロントに、わたくしは頬を膨らませて言う。
「ドロント! かわいいといっていいのは、こんやくしゃにたいしてだけよ!」
「これはこれは、リーミラはドロント君に手厳しいな」
笑うお父様を睨んでわたくしは宣言します。
「わたくし、もうお父様と結婚するなんていいませんから! ドロントと結婚するんですもの!」
表情が抜け落ちたお父様を放置して、ドロントを連れて庭園を駆けることにしました。親友たちももちろん一緒ですわ。
「ドロント様。無事のお帰り、お待ちしておりました」
「ただいま。リーミラ。今日は腕にぶら下がらないのかい?」
「ドロント様ったら。そんな子供の頃のこと、持ち出さないでくださいませ」
わたくしがそう笑ってドロント様に向かって手を差し出すと、一瞬不思議そうな顔をしたドロント様が笑みを浮かべた。
「エスコートか。リーミラもそんな歳になったんだね」
「ドロント様! 親戚のおじ様のようなことをおっしゃらないで! わたくし、もう十四になったのですよ?」
「まだ十四か……君が立派な淑女になるのが待ち遠しいよ、リーミラ」
突然いつものように笑ってそんなことを言うドロント様に、わたくしは今も昔も振り回されてしまうのでした。




