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小説は難しい

 昔から小説が書きたかった。

去年、ようやくまともに一本の短編が書けた。

出来はともかく、ふざけずに、真っ当に書きたいことを書けたと思う。

小説は難しい。

書いている人は当然感じていると思うが、とにかく頭を使う。

設定、プロットまでは行く。やりたい場面もある。

だが細かい動作やセリフに躓き、そのシーン運びが思うようにいかず放置してしまう。

俺の根本的な趣味の活動は音楽で、その表現方法の一つに、小説を書きたいというのがあって、もしかすると割いている熱量が少ないのかもしれない。

それで長らく、書きたい気持ちは片隅に鎮座し、断片的に設定やシーンをメモしておくという状態が続いた。

そうして、幾つかの映画や本によってインプットしてきたものが形になり、自分の思っていることを日記のような意味合いで記録したいという意欲でやっと筆を執った。

熱量が少ない、と述べたが、意欲で言えば十年前の方が遥かにあったように思う。

個人的に、物事に取り組む時の最大のポイントは“気楽さ”だと思っていて、最初の短編が書けたのは「まあ納得できなくても完成させてみよう」というところが大きい。

そして、最も影響を受けた作家の言葉もかなり重要な要素で、それが小説、というか文章を書く姿勢に深く根ざしている。

・書き手の存在を気にさせないよう地味に

・簡潔に分かりやすく

若い時はおそらく、カッコよくとか量を書かなきゃとか、そういう変な意識が働いていて、それが完成を妨げていた。

今も学ぶべきことは膨大にあり伸び代は果てしないが、この意識を努めるだけでだいぶ変わったように思う。

それから何より、感受性が大事なようで、そこと論理的な言葉の整理がアンバランスだとクオリティに影響する。

技術ではなく感覚として、エッセイやコラム、詩、ライナーノーツ的なものはまあそれとなく簡単に仕上がるが、小説、というか物語形式のものが難しくてなかなかこなせない。

物語を通して、何か伝えたいメッセージを込め、それを表す。

何を書かず、何を書くべきか。

様々な描写や各キャラクターのセリフに悩み、

どう展開し、どの情報をいつ出せば効果的か、その構成の妙に頭を捻る。

語感、文体、読んだ時のリズムにセンスを求められる。

(思うに句読点は映画でいうところのカット割か?)

個人的に引っかかる、というか照れが生じる理由というのが、その避けられない具体性だと思う。

こういう設定で、こういうシチュエーションで、こういうキャラクターで、こういう仕草で、こういうセリフで……「そういうのが好きなんだ〜」と思われてしまう恥ずかしさ?

当人の趣味嗜好が丸出し。

いや、その共有を求めてはいるんだけどね。

良いように反映されればいいけど、必ずしもそうではなく、上手く表現しきれなかった場合にも好みと思われてしまうリスクがある。

例えば詩なら(それはそれなりの難しさがあるのは承知で)、抽象的な表現でごまかしが利くところ、物語はそういうわけにはいかない。

整合性やリアリティなども追及せねばならなくて、その辺の把握や情報収集に労を費やすのも正直ダルい。

そこを操れるのが面白さでもあるとは思うんだが。


 そもそもみんなはどういうきっかけから書くに至るんだろう?

自分の場合は……

・この気持ちや考えは他人にわかってもらえるか

・こういう話ってないから自分で書いてみよう

・自分が好きなものの追求、自分の今の状態の把握

といった感じで、偉そうにも“ちょっと俺に書かしてみろよ”的なノリで書き始めた。

だから書き上げられる人ってのは、才能がどうってより欲なんだろうね。

技術があっても欲がない人には書き上げられないわけだし。

それで書いてみると、自分が何に影響されて何が好きなのかの解像度が上がっていく。

オリジナリティは確立できないが、個性が見えてくる。

料理は作れなくとも、もうちょっとこうした方が好みかも? のアレンジを思いつけるくらいに。

というかオリジナリティに関しては好きなものの組み合わせ方、着眼の仕方、その出し方によるから、そこの心配は個人的にはいっさい要らないんじゃ? くらいまで思ってる。


 で、初めの一作はどんな感じか?

よく映画や音楽でも、第一作目はその作家のやりたいことが全て詰まってるみたいなこと言うけど、あれは素人の初めの一作にも同じことが言えるんじゃないか?

手探りで時間と力の注ぎ方が最も掛けられていて、極めて純粋な状態というか。

常々オールタイムベストを考えるのが好きで、他人のを見るのも興味深いんだけど、好きになったものもやっぱり無知の時に得た比較的最初のものの方が影響力はデカいんじゃないかと思う。

だからまず着手するには、何に惹かれたか分析し、どうすればそれに近づけるか研究するのが大事で……

それから出来上がりの反省点を改善して成長していく、ってのは分かっちゃいるんだけど、今、まさにその着手に及べず足踏みをしている次第。


小説は難しい。

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― 新着の感想 ―
小説は難しい。 まず間違いなく、マッチさんにとって私、山羊野は「小説を難しくさせた側」なのだと思う。 まあ、だからと言って償いの品だの神がかり的助言だのができるでもないので、とりあえず書けることをつ…
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