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第7話 魔力循環2

「んぁ。あぅ」


 アリシア様の声がする。

 集中して作業している間に、いつの間にか朝になっていたようで窓からは朝日が差し込んでいる。


「おはようございます、アリシア様。」

「あぅ?」


 アリシア様はぼんやりとした目で、視線を右左へと動かしていた。

 一晩の作業でだいぶ魔力の消費を抑える事が出来た。その分私のプログラムもかなりカットしてあるが、元々魔力が足りていないためなんの問題もない。

 私の中に魔力が溜まってくると、アリシア様から流れてくる魔力の量が減るようになった。

 微々たる差ではあるが、負担は減るだろう。

 そう思いアリシア様を眺めていると、突然顔を歪ませると泣き始めた。


「あー。あー」

「あ、アリシア様! どうしました? あぁ、お泣きにならずに……」


 アリシア様に呼びかけるも、返ってくるのは言葉にならない声のみ。

 どうしたらいいのか分からない。

 困って部屋を見回すと、寝ているレイラがいる事に気付いた。

 アリシア様が起きたら起こすように言われていた。


「レイラ様! レイラ様! 起きてください! アリシア様が起きました!」

「ん……んー。んー? おはよぅ?」


 レイラはベッドの上でもぞもぞと動くと、大きく体を伸ばす。


「久しぶりによく寝たわ。エデンさん、おはよう」

「レイラ様、おはようございます。起きてさっそくなのですが、アリシア様が泣かれていまして」

「あらあら、夜起きなかったしお腹すいたのね。おむつも交換しなきゃ」


 レイラはアリシア様におはようと声をかけるとテキパキと動き始めた。

 あっという間におむつを交換し、抱きかかえて授乳し始める。

 アリシア様は泣き止み、レイラの乳をよく吸っている。


「レイラ様はすごいですね。アリシア様が何に困っているか分かるのですか?」

「ふふ、そんなの分からないわよ。あら? アリシアちゃん体調良さそうね。いつもよりよく飲んでいるわ」

「私が消費する魔力量を少なくしました。これで負担が減ると良いのですが」

「そんなことができるの?」

「はい。魔力に余裕が出来たので、その魔力を動かすことから試してみようと思います」

「分かったわ。この後エバさんや村の人達が来るから、また落ち着いたら話しましょう」



 日中はエバをはじめ数名の女性が部屋にやってきた。

 アリシア様のための新しいおむつを持ってきたり、レイラが部屋を離れる間アリシア様の面倒を見たりと人が入れ替わるが、皆アリシア様にやさしく声をかけていた。

 これまでにも見たことがある人であることを確認しつつ、私は魔力を動かす方法を検討していた。


(ふむ、魔力の動きに規則性はないのですね)


 余った魔力は消費されず、私の中に溜まっていた。

 細かな魔力の粒子が、水の中を浮いているように不規則にふわふわと流れていく。


(音声認識システムオン。……オフ。……オン)


 私のプログラムに反応し、必要なだけの魔力が異動する。


(ですが、これだと魔力が消費されてしまいます。どうしたものか。)


「エデンさん、調子はどうかしら?」


 声に反応し視覚情報を起動すると、レイラが向かいのベッドに腰かけえていた。


「皆お昼を食べに一度帰ったわ。進展はどう?」

「魔力を動かすことは出来たのですが……」

「あら、動かすことは出来たのね?」

「ええ。ですが、その魔力は消費されてしまいます。思うように動かせているわけではありません」

「ふーん……。聞かせてもらってもいい?」

「はい。私のプログラムを起動するのに合わせて、必要な場所へ魔力が動く事は確認しました」

「プログラム?」


 首を傾げるレイラを見て、この世界にはプログラムなんて物はないのだと思いなおす。


「そうですね……私の持つ力といいますか。それを発動する時に、魔力は異動しました」

「それって、こういうことかしら?」


 レイラはそう言うと、指先に灯を灯す。


「今私の指先にライトの魔法を使ったのだけれど。これは私の魔力が指先まで伝って消費されたってことね。これと同じこと?」

「そうですね。目的を達成するために、適した形で魔力が異動しているという意味では同じかと」

「それが出来るなら、魔力を動かすことは出来るはずよ?」


 レイラは首を傾げる。


「レイラ様は、どのように魔力を動かしているのですか?」

「魔法を使う時と同じよ。ただ魔法は発動せずに、グルグルと体の中で動かすの」

「魔法は発動せずに、グルグルと……」

「そう。魔法を使うときは、その魔法に必要な魔力を発動したい場所に動かすの。でも魔力循環で魔法は必要ないから、体全体を通るように魔力を動かすわね。んー、感覚的な話で申し訳ないのだけど」

「なるほど。魔力を動かすのを目的に魔力を……」


 そうだ。魔力は動いている。ただ動きの目的が違うだけだ。


「何かヒントになったかしら?」

「ええ。うまくいくと考えます。ありがとうございます」

「いいの。あなたには助けられているわ」


 レイラは笑うと、アリシア様の面倒を見た後戻った女性と入れ違いで退室していった。



 アリシア様が寝た後、私は自身のプログラムを確認し始めた。

 確認する場所は制御プログラム。その中にある電力に関する内容についてだ。

 私のプログラムは全て、涼花様が一から書かれた。

 あまりに膨大なデータを高速で扱うため、徹底してパフォーマンス効率を上げないと熱暴走を起こす可能性があったからだ。


(ありました。必要に応じて電力を効率よく振り分けるように書かれています)


 このプログラムを元に、電力を消費するのではなく循環させるように組みなおせば魔力を動かす事が出来るはずだ。


(新しいプログラムを組むしかないですね。使用してない魔力を使って……)


 プログラムを組むために、未使用領域の魔力を使用する。

 だが処理速度が上がらず、遅々として進まない。


(仕方ありません。少しずつ、進めていきましょう)

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