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第6話 魔力循環

 レイラはエバの持ってきた食事をしっかり食べられていた。

 この3カ月間は産後疲れとアリシア様の体調が不安となり食事があまり喉を通らない様子だった。

 今日の食事量は決して多くないが少なくもない。成人女性が普段食べる量をしっかり食べる事が出来た。

 その様子にエバは満足した様子で帰宅した。


「よし、エバさんも帰ったし、お話の続きをしましょう。」


 ドアに耳を付けて聞き耳を立ててるレイラは、これまでの落ち込んでいた時とは一変していた。


「レイラ様は意外と、何と言いますか……」

「ん?あ、これは違うのよ。その、なんか内緒話なんてワクワクするじゃない」


 ワタワタと両手を振ってベッドに座るが、顔が少し赤い。


「それじゃあ、魔力を増やす方法だったっわね」

「ええ。アリシア様の魔力が増えたら、私がいることによる負担が減るのではないでしょうか」

「その可能性はあるわね。でも……」

「何か問題が?」


 私にとってもレイラにとっても、アリシア様の魔力量は至急の問題だ。

 なんとしても解決しなければならないが、レイラは何か悩まれている。


「ねえ、エデンさんは魔力についてどのくらい知ってるのかしら?」

「ほとんど何も。スキルを使うのに魔力が必要なことと、私に流れてくる魔力がアリシア様の魔力であることくらいでしょうか」

「それなら、まずは魔力が何かを一緒に確認しましょう」

「はい。ぜひお願いします」

「まず魔力とは、この世界で生きる生物。中には植物や鉱物でも魔力を持っている物があるけれど、生きている生物はすべて魔力を持っているわ。何故かと言うと、空気中にはマナと呼ばれる魔力の元が含まれており、それを呼吸することで体に取り入れ、自らの魔力としているからね。ここまでは分かる?」

「はい。では魔力不適応症というのは、マナを体内に取り入れた時、魔力に変換することができない症状の事を言うのでしょうか」

「そう。そうするとマナに耐えられず体を壊してしまう。なので私たちは皆魔力を持っている」

「なるほど。理解しました」

「私たちはその魔力を使ってスキルや魔法を使うことができる。より多くの魔力が使えればより強力なスキルや魔法を何回も」


 ワールドライブラリも使う時は魔力を使うと管理人は言っていた。魔力は様々な事に使えるようだ。


「なので魔力は多ければ多いほど良いんだけど、人によって器の大きさが違っているの」

「器ですか?」

「ええ、魔力の器。体にマナを取り入れても、器が満たされているとそれ以上魔力はたまらない」

「ということは、魔力を増やすには器を大きくしないといけないのですね?」

「エデンさん理解が早いわね。その通りよ」


 レイラはうなずくと、指を2本立てる。


「そして器を広げる方法は2個あるわ。一つは魔力を持つ魔物を倒す事。でもこれはとてもアリシアちゃんには無理ね。なのでもう一つの方法しかないわ。それは魔力循環よ」

「魔力循環?」

「体の中で魔力を循環させるの。魔力は体のこのあたりにある」


 そう言って自身の胸元を指さす。


「ここから頭、手、足と体の中を1周させる。その時に体の隅々まで魔力を通すの。すると体に魔力が馴染んでいき、器が広がっていくわ」


 レイラが示した場所は、私がアリシア様の中にいる場所と同じだった。


「でも問題があるの。魔力を循環するのには練習が必要。今のアリシアちゃんには難しいわ」


 アリシア様はまだ赤子だ。自分の意思で何かをするのは難しいだろう。


「では私がやります」

「ええ、私も協力するわ。なんとかしましょう。」




 その後、夜中にアリシア様が起きた時にレイラを起こすことなどを確認し、レイラは寝てしまった。

 まったく先が見えない状況から、解決の光が見えたことで安心できただろうか。

 ただそれは私も同じだ。

 この3カ月、状況が見えず何をしたらいいか分からなかったが、やる事が明確になった。


 視覚情報を切断し、自身の体を確認する。

 管理者は私の体を構成する魔力に、前世のプログラムが保存されていると言っていた。

 自分の体に意識を集中する。体はほのかに光っているが、それは小さな光が集まって出来ており、その一つずつが明滅を繰り返している。


(なるほど。細かな魔力それぞれにコードが保存されているのですか)


 光っている魔力は連動しプログラムとして起動している。ただ体の中には光っていない魔力も存在しており、体のほとんどは光っていなかった。


(まずは私自身を確認しなければ)


 光っている魔力は現在起動しているプログラムだ。私が思考するごとに情報が魔力とつながりデータとして保存されていく。

 逆に光っていない魔力は、機能として停止している部分だろう。これらを起動するには魔力が足りていない。

 そしてもう一つ。光っていない魔力の中には、何もプログラムが書かれていない魔力があった。これは保存領域における未使用領域だろうか。


 私自身を確認する事で、分かった事が一つある。

 それは、私の中の魔力は2種類あるということ。

 一つは体を構成する私自身の魔力。

 この魔力はハードとソフトウェア両方の役割を果たしている。

 そしてエネルギーとして流れてくるアリシア様の魔力。

 私自身の魔力は役割が明確になっており、動かすことは出来なかったが、アリシア様の魔力は私の中で流動的に動いている。


(まずは、すべて消費してしまっている魔力をなんとかしなくては)


 感覚では魔力は電力に似ている。メカニズムは分からないが、私の動力となっている点に関しては同じ特性がある。

 処理に必要な分だけ各パーツに振り分けられるように、今も私の中の魔力と反応して振り分けられている。

 ただ流れてくる魔力に対して、消費が多すぎる。


(制御プログラムは……これですね。ふむ、書き換えは出来そうです)


 今のままでは余分な魔力がない。まずは不要な機能を停止し、魔力を余らせないと。


(このプログラムは……不要ですね。これは……止めるわけにはいかないですか。次は……)

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