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第1話 エルメスの亡霊

どこにでもいる17歳高校生、彼の一番の特徴と言えば、

本名が武田信玄という事だけであろう。


ある日、いつも通り放課後、友達と何気ない話を

していた時、突如として国家存亡の危機を打開するため

異世界から召喚されてしまった。


異世界の人々と時間を過ごす中で、彼の心は成長する。

だが、ある日を境にそんな順風満帆の日々は

突如として消え去ってしまった………

「なあ!武田信玄!!」


「お前!フルネームで呼ぶなって何回も言ってんだろ」


「良いじゃねぇか!カッコいいだから!」

「それよりお前!今日のアルスラ見た!」


「まだだけど?」 


「今日のはヤバかったなぁ~!」


「ネタバレすんなよ」

「そんな感じで毎週ネタバレ聞かせられてんだから」

「ネタバレ食らってからアルスラ一度も見てねぇよ」


「ネタバレじゃねーし!」

「俺はお前にアルスラの魅力を語ってるだけだって!」


「アルスラはいいよ」

「どうせあれだろ、、結局は全部勝って」

「一番強くなんだろ!」


「バカヤロー!」

「結果はそうでも過程がいいんだよ!」


「主人公が異世界に転生でもしたら」

「見てやるよ!」


「バーカ!さすがにしねえよ!」

「てっ………おい!」

「急にどこ行った!?」

「おいー!!」

「おーーーーーいいぃ!!!!」



ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーー

「また成功だ!」

「これで36人目!!」


ん……………

え?……………

なんだここ………………

俺確かさっきまでアルスラの話をしてた気が……………



「静まれぇ!」


!!!!!!!!??


ビックリした!誰だあのオッサン……

王冠に黄金の鎧………………

見るからに偉そうな感じだな……

アルスラにこんなヤツいたなぁ


「そなたにお聞きしたい…………」

「名を伺ってもよろしいか……」


「え?」

「アルスラ……」


「ほう、アルスラ……」

「今までの異世界人とは名前の雰囲気が違うようだ……」


いや、アルスラじゃねぇよ!

何を言ってんだ俺は!!

くっそ!………

最悪だよ……


俺の名前の武田信玄なのに………





「異世界人の統率を取るために出身も統一したかった」

「のですが…………」

「こちらの言葉が通じているということは」

「他の者と同様になんらか能力を持っているかと……」




「アルスラ殿よ」

「貴殿に割って話したいことがある。」


ゴクッ


「我が王国、エルメス王国の近衛兵になってはくれぬか…」


近衛兵?………

なんだそれは………

やばい、近衛兵て何ですかなんて聞けない…



「不躾ですまない。」


「国王!」


「頭を上げてください!!」



あの人たちは見るからに聖職者ぽい見た目だな

てか、国王が頭を下げるなんて、何かあるのか??



「国王、私から説明致します。」


危ね~………

聞かなくてすんだ~!

よかった~!


「近年、人類の領域を脅かす」

「魔王軍の侵攻が活発になっております。」

「その影響で魔王領域との境界に位置する」

「アトラス帝国が侵攻の影響で後退し始めました。」

「帝国の人々を受け入れたエルメス王国は」

「多くの住民を受け入れたのですが、、、」

「エルメスの土地神、竜神様の領域に足を踏み入れた」

「者がいまして、、」

「いつ土地神様の厄災が起こっても」

「不思議ではありません。」

「そのため現在貯蔵、していた魔力を使用し」

「異世界召喚を繰り返した所存でございます。」



それは大変だな………

てか、魔王軍にアトラス帝国、、

土地神様か……異世界ぽくなってきたな!



「アルフラ殿」

「どうかエルメスを救って頂け無いでしょうか…………」


「いいですけど」

「僕、只の人間ですけど役に立てますかね………」


「とんでもない!異世界人の方々は」

「こちらの世界に来る過程で」

「いくつかの能力を所持しています。」


「能力……」

「その、私にはどんな能力があるのですか?」


 聖職者たちは鑑定士たちを呼び鑑定を始めた。


 能力  意志疎通

     どんな言語を喋っても相手との意志疎通を可

     能とする


     変幻自在

     魔力を自由に操ることができる


意志疎通はともかく!変幻自在は強そうだ!!


コソ「おかしい、他のものはこれより上級の」

  「言語マスターだったはず」

  「このものだけ、意志疎通…………」

  「それに、変幻自在…………」

  「魔力総量が少ない彼には、」

  「到底扱える能力じゃない………」


 コソコソ喋ってるけど

 全部聞こえてるって…………


「アルスラ様、竜神様の討伐が終われば」

「無事にもといた世界へ送り直すことを約束します」

「討伐のほどご協力お願いしたい………」


「わかりました」

「力になれるかわかりませんが……」

「協力します。」


 まあ、帰れるならちょっとくらいこっちにいるか……



 「アルスラ様」

 「部屋の方、準備しております」

 「こちらへ、」


 うわ、こういう時って

 かわいいメイドが出てくるんじゃないのか……

 なんか超強そうなおばあちゃんが出てきちゃっよ… 



 召喚された部屋を出て廊下に出た。

 てかさっき他にも召喚された人がいたような

 話をしていた気がする


 「あ、あの………」


 「私の名前はマドラサです」

 「気軽にマドラサとお呼びください。」


 「は、はい」

 「私はたけ、、あ、アルスラと言います。」

  

 「存じております。」

 「今から向かう先には」

 「アルスラ様と同じ世界から来た」

 「異世界人の皆様がいらっしゃる所です。」

  

 気の優しいおばあちゃんて感じだ

 でも、優しいだけじゃない強さを感じる気がする… 

   


 しっかし、せっかく異世界にいるなら本名で名乗れば

 良かったな………

 武田信玄………

 あっちの世界じゃからかわれて

 堂々と言えないもんな…




 「みなさま、これで36人全員が揃いました。」

 「改めて、竜神様の討伐にお力添え」

 「誠に感謝いたします。」

 「みなさまのスキルがあれば」

 「きっと竜神様を倒せましょう」


 「ああ!任せください!」

 

 「竜神なんて!俺がぶっ殺してやるよ!」



 ああ、こんなんで大丈夫か本当に……

 不安で仕方ない……

 


 「なあ!みんな!」

 「いくら俺たちが強いからと言って」

 「個々で戦うのはリスクが多すぎる。」

 「ここは36人ひとつのチームとなって戦おう!!」


 「いいぜ!お前名前何て言うんだ!」


 「俺はカイト!」

 「よろしく」


 「俺はタツヤ!」


 熱く握手なんてしちゃって

 異世界に来たのに日本人ばかりじゃ現実と

 あんま変わんねぇじゃねぇか……


 「じゃあみんな!」

 「みんながどんな能力を持ってるのか」

 「確認したい!」


 「まって僕には能力鑑定がある。」

 「それで見た方が早いよ。」

 

 「君は、」


 「僕はハルト。」

 

 「ハルトよろしく!」

 「じゃあ鑑定頼むよ」


 リーダーシップ強めのカイト

 気の強いタツヤ

 知的メガネのハルト


 今後はコイツらが主導を握るだろう………

 異世界来たけど、早く帰りたいかも……



 ハルトが鑑定した能力はたくさんあって覚えらないほ

 どであった。

 

 カイトは飛行、炎操作と莫大な魔力

 タツヤは強力な剣術能力

 ハルトは鑑定に加えて自由創造を持っていた


 どいつもこいつもチートばかり

 

 「えっと………アルスラくんは」

 「意志疎通と……魔力操作……」

 「だね、」


 うん。もう言うことないよね

 無理するな


 「えっとエリカちゃんは」

 「魔力譲渡と、花を生やす……」


 ハハハハ!ハハハハ!ハハハハ!ハハハハ!



 おいおい、

 みんな揃ってそんな爆笑するかよ……


 「あんたのスキル弱すぎよ!」

 「花でどうやって戦おうて言うのよ!」


 「花でもあげて仲良くなろうっての!?」


 かわいそうに、やはりみんながみんな

 チート能力を持っている訳ではないし

 異世界に来たのを喜んでいるわけでもなさそうだ……



 ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーー

「アルスラ様、明日は異世界人のみなさまで会議を」

「なさるそうです。」


「マドラサさん、ありがとうございます。」

「あと、部屋もわざわざありがとうございます。」


「いえいえ、異世界人の方々は丁重に」

「おもてなしするのは当然の事なのです。」


「そうなんですか………」

「じゃ、じゃあ、おやすみなさい……」


「はい。おやすみなさい。」


はー、やっと一人になれた




今日は本当に散々だったな

でも、フカフカのベットに広い個室

落ち着くような落ち着かないような………


今頃、父さん、母さんは心配してんだろうな……



………

てか、時間の流れはどうなってんだ?

こっちで過ごした分、あっちでも同じように時間が経ってたらかなり面倒だぞ、


行方不明者が突然帰ったとなれば

大事件だ。あー面倒くさい


できれば時間は経たず

アルスラの話の続きがいいな……


こんなにアルスラの話を聞きたいと思えるのも

今のうちだな………


ああ、もう限界だ……

今日は良く寝れそう……



ーーーーーーーー

 ーーーーーーーーー

 チュン チュンチュンチュン

 朝日と鳥の鳴き声で目を覚ます

 なんて良い朝なんだ!

 

 この幸せな朝を迎えられたことを素直に喜ぼう


 昨日はぐっすり眠れた。

 体がこっちの世界に馴染んできた気がする


それにしても、アイツら

朝から会議とは、張り切ってんな……


ガチャ


「ねえ!エリカ!あんた弱いんだから」

「その分!仕事しなさいよ!」


 あ、危ねぇ………


 アイツらは花咲かせるやつと、他の女子たち………

 それに、昨日のリーダーぶってたやつ………



 俺は異世界に来てまでトラブルに巻き込まれたく

 無いんだよ………


「で、でも」

 

「部屋の片付けくらいやりなさいよ!」

「無能なあんたに仕事くれてやってんだから」

「感謝しなさい!」


ハハハハ!ハハハハ!ハハハハ!


 嫌なやつらだ

 異世界に来てまだ1日だっていうのに

 カーストなんて作りやがって……


 あ、目が合った

 

 「ぼ、僕も手伝うよ」


 「いいよ、私一人でできるし………」


 「でも、2人でやった方が早く終わるよ!!」


 「…………ありがと……」


 手を貸してしまった

 これで俺も虐められるかもな


 2人は無言で掃除を終え

 エリカは植木鉢に花を咲かせた


 「なあ、」

 

 「?」


 「俺はあんたのこと無能だなんて思ってないよ」

 「戦いに使えないかもしれないけど」

 「俺は花を咲かせる能力好きだ」

 

 「…………」


  あー!くそ!何言ってんだ俺は!



 「ご、ごめん!」

 「なんか調子に乗った」


 「ううん、ありがと」

 「でも、私と一緒にいたら君も大変だよ」

 「だから、あなたのためにも私に無理に」

 「合わせなくていいよ………」


 「…………なあ」

 

 「?」


 「ちょっと探検してみないか?」


 「え…………でも勝手に歩いたら怒られない?」

 「それに私、あの子達の所へ行かないと………」


 「怒られない!怒られない!」

 「俺たちは!異世界人だぞ!」

 「それに、あんなやつらほっとけ!」


 まさか自分がこんなことをするとは

 思ってもいなかった


 エリカの手を握り、建物の高いところへ進んでいく

 

 王国中を見渡せるベランダに出た

 そこには綺麗に整った城下町が広がっていた


 「きれいだ………」


 「空の色は同じでも、いる世界は違うんだもんね……」


 「うん、違う世界とは思えないよ」

 「ねえ!あそこで剣を振ってるひとがいるよ!」

 

 「ホントだね!」

 「凄く強そう」


 「おーーーーーーーい!!!!」


 「ちょっと、大丈夫??」

 「私たちがここにいることバレちゃうよ!」


 「いいのいいの!」

 「マズかったらその時はその時!!」


 「おーーーい!!お前たち!」

 「こっちを来い!良いもの見せてやるよ!」


 「わかりました!今からそっちへ行きます!!」


 「ねえ!あの人はなんて言ってるの?」

  

 エリカは聞こえないのか

 そうか、俺は能力を持ってるから意志疎通

 こんな遠くでも聞こえるのか………

 雑魚能力かと思ったら以外と便利

  


 「おまえたち!階段で下るより!」

 「こっから飛び下りた方が早いぜ!!」


 「ね、ねぇなんて言ってるの?」


 「いや、あの人が言うには」

 「こっちに来い、良いもの見せてやるって」

 「でも普通に下るより、ここから」

 「飛び下りた方が早いって言うんだ………」

  

 「そんなの無理よ!」

 「こんな高さから飛び下りたら……」


 「おーーーい!!」

 「早くしないと警備兵が来るぞー!」


 後ろを振り向くと警備兵らしき人影が


 「エリカ!飛ぶぞ!」

 

 「え!」

 

 「後ろに警備兵がいる!」

 

 「え、ええぇぇぇええぇえぇぇ!」

 

エリカの手を引っ張って飛び下りた


 「うあわぁぁぁ!!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーー

ーーーーー





ボフ

視界が真っ白になっている

どう言うことだ………


「アハハ!」


「ぼあ!死ぬかと思った………」


「ねえ!今の凄く楽しかった!」


「あー、楽しかった………」

 エリカ、これは絶対絶叫得意だな


「大丈夫か!」

 さっきの剣士の人が近づいてきた


「驚いたろ!?」

「これは俺の魔法!」

「ふんわり雲だ!」


「ねえ!私にこの魔法教えてくれませんか!!」


「お!目の付け所がいいな!」

「いいぜ!穣ちゃん!」


 俺はいつの間にかエリカの笑った顔に見とれていた



「ねえ!アルスラくんも魔法教わろうよ!」


「え、俺はいいよ……」

「それにもうそろそろ朝食だし…」

「朝の会議だってあったはず……」


「いいの!いいの!私たちは」

「どうせ戦力にならないじゃない!」



「……それはそうだけど……」

 俺はいつの間にかエリカの元気に押されていた

 エリカが元気になって良かった……


「でも、俺は魔法じゃなくて剣術を教えてほしい」


「いいぜ!」

「えっと、確か……」


「アルスラだ!」

「よろしく頼む!!」

 俺はらしくない、握手を求めた


「俺はグリッド!!」

「よろしく!」

 俺とグリッドは熱い握手を交わした


 それからはグリッドとエリカ、そして俺、3人で

 日々、魔法と剣術を教わる日々

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 グリッドは金髪で好青年に見えるが、オッサンの

 ような要素も持ってるノリのいい兄ちゃんという

 ところだ


 「なあ!知ってるか!」

 「メイドのマドラサ!アイツはあんな身分だが!」

 「エルメス随一の魔法使いだ!」

 

 「マドラサさんがですか!」

 「わたし!今度指導お願いしたいです!」


 「いや、それはやめといた方がいいんじゃないか…」


 「お呼びですか、グリッド」


 「げっ!」

 「いや、呼んでないですよ汗」


 「そうですか……」

 「それよりグリッド」

 「あなた、いつの間にか国王軍の隊長まで」

 「上り詰めたのですね」


 「は、はい!」

 「お陰さまで……」

 「それもこれも、マドラサ様のお陰ですよ…」


 あの強きでいつも調子に乗ってるがグリッドが弱腰…

 この2人どんな関係だ?


 「グリッドは私の弟子です」


 「え!グリッドがマドラサさんの弟子!?」


 「でも!マドラサさんは魔法使いで」

 「グリッドさんは剣士じゃないですよね!?」


 「はい、良いところに気がつきましたね」

 「エリカさん。」

 「彼は魔法、そして剣術も得意とする」

 「魔法剣士という珍しい部類なのです。」


 「へー、やっぱり剣術だけじゃ厳しいんですか?」


 「いえ、基本的に騎士は魔法使いからの攻撃を」

 「防ぐいわば盾なのです。」

 

 なるほど、攻撃の中心はあくまでも

 魔法使いというわけか……


 「悲しいことに……」

 「魔法のほとんどは人を殺す魔法なのです。」

 「ですので、私はあなたたちの能力を聞いて」

 「嬉しかったのです。」

 

 「エリカ様は花を咲かせる能力」

 「アルスラ様は魔力を変幻自在に操る魔法」

 「どちらも殺し以外の目的が存在します」


 「そうだぞ!魔法は素晴らしいものなんだ!」

 「俺のふんわり雲を作るのも苦労したんだから…」


  人を殺さない魔法を作るのは逆に難しいのか?



 「私から提案があります。」

 「2人とも、私の指導の下、魔法剣士を目指しては」

 「どうですか?」


 「はい!もちろんです!」

 「私は人を救い助けられる魔法剣士になります」


 エリカ即答!?

 凄いな、最初にあった頃はあんなに弱気だったのに

 俺も負けてられない!!


 「俺も、グリッドさんみたいな」

 「強い人になりたいです!!」




 「では、今から指導を始めます」

 「グリッドあなたも最近は怠けてばかりね」

 「特別に一から鍛え直して差し上げます。」

 「覚悟は良いですか??」


 「はい!」「はい!」


 それからの日々は正直楽しかった

 毎日、剣術、魔法の練習に明け暮れ、

 充実した日々を過ごしていた。

 



 竜神様が来ないまま、半年が経過した


 「マドラサさん、その竜神様はいつ来るんですか?」


 「それが、わからないのです。」

 「国王軍が調査したところ」

 「不思議なことに」

 「竜神様の領域には気配が何も無かったようです。」

 

 「マドラサさん!でも、今のコイツらなら」

 「竜神の攻撃くらい耐えられるんじゃないか?」

 

 「確かに、魔法で防御壁を展開させれば」

 「防げるでしょう。」

 「ですが、防いだところで王国が無くなっては」

 「意味がないのですよ」


 


 「アルスラ、エリカ」

 「もし竜神様が出現した場合」

 「無理をしないことです。」

 「自分の力以上のことをしようとしてはいけません」

 「命は何より大切だということを覚えておきなさい」


 「はい!」「はい!」

 

 いきなりの事だ。

 マドラサさんとグリッドが同じ方向を向いて黙った。



 「マドラサさん!!!」



 「いつか来るとは思っていましたが、」

 「今ですか、」

 

 「え?今って」

 

 「あれが竜神様………」

 

 「違う。違うよ。」

 「おかしい。あれは竜神様なんかじゃない。」


 

 マドラサの戸惑いの声は初めて聞いた気がする


 そんなことを考えているその瞬間

 視界は激しい光に包み込まれた

 

 覚えているのはグリッドの「伏せろ」という

 今までに聞いたことの無い怒鳴り声だった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 目を覚ますと、中庭の端にいた。

 さっきの衝撃で吹き飛ばされたのだろう

 幸い致命傷にはなっておらず、マドラサが防御壁を

 展開してくれたのだろうと思った


 そうだ、竜神が来たということは

 他の異世界人が戦闘をしているはず…………

 

 どこだ!

  

 グオオオォオォオォオォォオォンンンムムム


 後ろから凄まじい轟音が響き渡る

 気を抜くと音の気迫に押し倒されそうだ


 「マドラサ!!」

 そこではマドラサが魔法で竜神と戦っていた

 

 「さすが!マドラサだ!」


 そうだ!マドラサは強いんだ!

 とりあえずグリッドとエリカと合流しよう



 アルスラは中庭から飛び下り城下町へ行く

 グリッドから教わった、ふんわり雲を駆使し

 見事に着地した


 いち早くためにも大通りへ向かうため、全力で走る


 目の前に隊列を組んだ兵士がいる

 あんな兵士は見たことが無い

  

 おそらく敵兵だろう


 「近衛兵の制服!」

 「異世界人だ!!!」

 「気を付けろ!」


 変幻自在! 魔力の剣!!

 

ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーー

「本当はな、お前らみたいなガキに」

「頼むことじゃねぇんだ」

 

「ガキって!俺はもう17歳だ!」

「ガキじゃない!」

 

「いいや、誰がなんと言おうとガキだ」

「だから……そんなガキたちにすがるしかないこの国を」

「許してくれ」

「お前たちの……手を血に染めてしまう

「弱い俺たちを許してくれ」


ーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーー

グリッド、そんなこと言うな

俺はこの世界に来て良かった!

あんたらと出会えて良かった!!


だから、恩返しがしたいんだ!


「貫けぇ!!マジックソォーーードォォォー!!!!」


魔力で生成した無数の剣は敵兵たちを貫いた


「どけぇ!!」


敵兵を押し退け大通りへと向かう


そこには、召喚されたみんなをまとめていた

カイトとタツヤが協力して

ドラゴンと戦っているのが見える


良く見ると下にいるエリカが

魔力譲渡で2人を回復して

3人で戦っていた


よし!俺も加勢しよう!

そうすれば絶対勝てる!!


回復する瞬間、ドラゴンは喉を膨らませていた

「まずいぞ!」


「防御壁展開するよ!!」


口の隙間から赤く光る金色の炎が見える


「こんなところで、死んでたまるか!」


ドラゴンが炎を吹き出す瞬間


ものすごいスピードでドラゴンを横切る人影

ドラゴンの首は炎を放出する前に落とされた


グリッドだ!

さすがグリット!ドラゴンなんて敵じゃない!




「グリッド!!」

 エリカはグリッドへ抱きつきいた


「グリッド………ありがとう」

 エリカは涙を浮かべていた


「エリカ、うかうかしてられない」

「今すぐにここを離れてマドラサのところへ」


「グリッド!!エリカ!!」

 離れてからまだ、数時間しか経ってないはずだが

 なぜだか、とても時間が経ったように感じる。


 まるで、久しぶり再開したかのような気持ちだ



「おお!アルスラ無事だったか!」

 おう!無事だったよグリッド!!

 グリッド!あんたなら生きてると信じてたよ!

 

「アルスラ!!大丈夫だった!」

 ああ!このくらいどうってことないさ!エリカ!


ブッシャァァアァァァアァァァアァァァァァァ


まただ、また目の前が真っ白になった

今度は熱い…………


………………………………………………………………



熱い?


………………



なんでだ?


グリッドとエリカ、カイトとタツヤは

焼け焦げて死んでいた



横を見るとさっきグリッドが落とした首がある

おそらく、首を落とされる前に貯めていた

炎を放出したのだろう


ドラゴンの首は役目を終えたかのように

深い炎に包まれていた



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうだ、マドラサのところへ行こう


大通りには敵兵が沢山いた。

国王軍と戦っている。

街中が戦場だ。


他の異世界人も何をしている



 この街は本当に広いな

 マドラサのところまでまだ時間が掛かりそうだ


 

 …………………………………………………………


――――――――――



「マドラサ」


「アルスラ無事だったか!」

「少し手を貸してくれ」


「マドラサ………」


「アルスラ………なにがあったか知らないが」

「今は目の前の戦いに集中してもらうよ」


「………」


「おそらく竜神様は何者かに操られている」

「領域に侵入したくらいで土地神を信仰する」

「国を滅ぼすはずがありませんからね…」


「………」


「今から衝撃魔法で竜神様の動きを数秒止めます」

「合図したら一斉に打つ!」


「わかりました」


変幻自在 魔力の杖 マジックスタッフ


 こんな状況なのに酷く冷静だ

 エリカとグリッドが死んだのに……


「アルスラ今だ!打て!!」

 

 まだ、グリッドにありがとうって言えてないのに

 エリカにも、エリカにもまだ何も言えてないのに……


「うわぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁ!!」

 


 2つの衝撃魔法は竜神に直撃した

 竜神は首をガクッとしいる


 「アルスラ!渾身の一撃を竜神様の頭をぶつける!」

 「準備はいいな!!」


 「はい!」

変幻自在 魔力の拳 マジックハンド

 やってやる!よくもグリッドとエリカを!!



 「行くぞ!アルスラ」

 「王国の仇!!取らせて貰うぞぉ!!」


 嫌な予感がしたんだ

 不自然に首の力が入っていない竜神に


 「マドラサ!!」

 

 竜神の首は一瞬で元に戻り、目が金色に光だした


 「マドラサ!攻撃が来る!」

  

 ズサッ


 マドラサに攻撃が来ると伝えようとしたんだ。でも


 横には炎の槍が何本も突き刺さったマドラサがいた


 「ま、マドラサ………」

 「マドラサ!!マドラサ!!」

 「マドラサ!マドラサ………」


 「くそったれえぇぇえ」

 「貴様らあぁぁぁあぁぁぁ」

  

 「マドラサを撃ち取った!!」 

 「我らの勝利は確実!!」


 「貴様ら。良くもマドラサを……」


 その時だった、マドラサを刺した炎の槍が

 竜神の頭を貫通している


 竜神は倒れた

  

 なんだ!何が起きた!!??

 なんで、マドラサに刺さった炎の槍が竜神に!?

 おかしい、なにかおかしい……


 竜神を刺した炎の槍が飛び込んでくる

 


 ヤバい!体が言うことを効かない!

 

 炎の槍が向かってくるのが見える

 ドス!!


 なんだ、なにかに押された………


 グサッ

 

 そこには動かない体を魔法で動かし

 身代わりになってくれたマドラサがいた


 マドラサの目は、優しくもどこか申し訳なさそうな

 目をしている。


 そんな目をしないでくれ

 俺は、俺は礼を言いたいんだ………


 マドラサの奮闘も虚しく

 次なる攻撃によって炎の槍は俺の心臓に貫通した。

 炎の槍はそのまま、竜神の心臓にも突き刺さり


 俺は倒れた竜神の上に串刺しにされた


 そうか、炎の槍は……

 炎の槍は竜神の技じゃない…………


 


 「エルメスの領土はこれで我らのアトラス帝国の物」

 「アトラス帝国に栄光あれ!」

 

 「アトラスに栄光あれ!」

「アトラスに栄光あれ!」

 「アトラスに栄光あれ!」

「アトラスに栄光あれ!」

 「アトラスに栄光あれ!」

「アトラスに栄光あれ!」


 アトラス……………

 アトラスがみんなを…………

 


 もう意識が…………

 

 アトラス………

 「あ、アトラスめ…………」

 

「「そなた、生きたいか………」」



 そ、そりゃあ、生きたいとも………

 


 その時、アルスラと竜神の心臓に突き刺さった

 炎の槍が不自然に金色に光だした


 「総員、戦闘配置!!!」

 「防御陣形用意!!!」


 竜神とアルスラを包んだ金色の光は

 膨張しだした


 「なんだ、なにが起こってる………」


 


 陣形を取っていた敵兵は逃げ出す

 「陣形を乱すんじゃない!!」


 「……………しかしなんなんだこれは…………」

 


 その瞬間、音もなく

 エルメス王国全体は光の玉に包み込まれた


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目を覚ますと夜だった。

目の前には、エルメス王国だった廃墟たちがある


不思議と頭が良く回る


どうなっているだ


誰もいない。

「誰か!!」

「誰かいないか!!」


遠くに光が見える

アルスラは走った。 

さっきはあんなに長く思えた大通りも今は一瞬に感じる


「生き残りか!」

 よかった、生き残りがいたんだ……

 マドラサ、エリカ、グリッド

 無駄死にじゃなかったんだ……


「お前!生き残りか!」

 

「あんたたちも…………」

 

「いいや、俺らは消滅したエルメス王国へ探索を」

「依頼されたんだ」


暗い夜の中、薪をしながら

エルメスにあった様々なものを持っている2人の男がいた


「他に生き残りはいないのか!」


「ああ、聞いたことねぇな」

「あんた今日は寒いだろう、」

「今夜はここで寝な」


「ああ、ありがとう」

 生き残りはいないだと………

 



「じゃあ、お休み」


その夜は寝れなかった

戦いがあったとは思えないよつな静かさで

違和感を感じる。


朝日はいつも通り綺麗だ。

だけど鳥の鳴き声は聞こえない



「おはよう!昨日は良く眠れたか?」


「はい、昨日はありがとうございます」

「あの、生き残りは本当にいないんですか……」



「ああ、見つかってないって話さ」

「それに生き残りどころか死体も見つかってないんだ」

 

「は、はあ……」

 どう言うことだ?

 何があったんだ??



 コソ「なあ、そろそろ行こうぜ?」

  「アイツなんか気味悪いぜ?」


 コソ「ああ、そうだな」

 「おい!あんた!」  

 「俺たちはこれで帰る!」

 「あんたも無理すんなよ」

 

 「はい!ありがとうございます」

 「そちらもお気をつけて!!」



 2人はエルメスを後にした

 「なあ、やっぱおかしいぜ」

 「エルメスが滅んでから3ヵ月は経ってんだ」

 「なんであいつは生き残りがいるかなんて聞くんだ」

 「気味悪くて仕方ないぜ……」


 「うるせぇ、そういうのは考えないようにしろ」

 「やつはきっと亡霊………」

 「エルメスの亡霊なんだ………」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーー


3か月後


エルメス王国跡地から約30km


とある酒場にて


「なあ!エルメスの亡霊がここんとこ」

「ここらでうろついてるらしいぜ!」

  

「エルメスの亡霊か………」

「あいつは人間なのか?」

 

 

「最近じゃらアトラス帝国に喧嘩売ってるらしいぜ」


「恐ろしい、恐ろしい………」



「エルメスの亡霊……か…………」 

  

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ーエルメス王国ー

アトラス帝国の策略により消滅。

なお、土地神であった竜神はアトラス帝国に利用され

兵器として使用された。

しかし、争った形跡はあるものの

エルメスの王族、貴族を含めた住民20万人

侵攻に参加したアトラス兵総勢2万人

召喚された異世界人、そして竜神までも

生存者、死体までなにも見つかっていない………


ただ、そこには、崩壊したエルメスを徘徊する

1人の男がいるとの噂がある。

人々はそれを「エルメスの亡霊」と呼ぶ。

 ………………………………………………………………………………

 

 

 俺はアトラス帝国を潰す……………………

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