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人間殺処分  作者: 風花舞花
第一章 人間殺処分
6/7

4話 変死

検索履歷

『猫 死骸 事件』

2月××日午前7時頃、××県××市で頭部のない猫の死骸があると110番通報があった。捜査を進めると頭部は鋭利なもので切断されたとみられる。市内では今月だけで同様の事件が5件以上発生しており警察は同一犯の犯行、動物愛護法違反の疑いで捜査を進めている。

『××県で頭部のない猫の死体が連続で発見』

『鋭利な切り口で頭部を切断』

『死亡の男性会社員不起訴動物愛護法違反』

3月××日午前、近隣住民から異臭がすると通報があり警察がかけつけたところ、この家に住む会社員××××さん(××)が亡くなっていた。捜査を続けると先月から市内で発生していた猫死体遺棄に関連するものがあり警察は犯人と断定。男を動物愛護法違反被疑者死亡不起訴処分とした。



「……」

「こんな時間にどこに行くんだ?」

「散歩」

「…気をつけてな」

「あぁ」





これはどういう状況だ?俺は今、全裸で手足を縛られていて動けない。しかも目は隠されていて何も見えない。口も布のようなもので塞がれている。幸い耳は聞こえているが何の音もしない。この状況になってどれくらい時間が経っただろうか?ていうかどうしてこんな状況になったのか?仕事から帰ってきてすぐ風呂に入って、喉が渇いたから水分をとろうとして…そうだ。後ろに何か気配を感じて振り返ろうとしたら気を失った。首元を何かで叩かれた痛みが今になって増す。助けを呼びたいが口が塞がれていて叫べない。誰か……足音が近づいてくる………冷たっ!?何だ!?何か冷たいものが腕に触れる!!全身が寒気に覆われた!!!

「〜〜〜〜〜っっっ!!ンンンンン!!!!!」

言葉にならない声を上げる!助けて!!誰かっっ!!



「怖い?」

誰だっ!?怖いに決まってる!!はやく!!解放してくれ!!!

「あのコたちも怖かったはずよ」

あのコたち!?誰だよ!?それよりはやく!!!

「同じ目に合ってもらう」

同じ目!?それって一体…………ッッッッッッ!!!?

「ンンンンンンンンッッッッ!!!!!!!!!!」

痛い!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイッッッッ!!!!!!!!

何だよ!?何が起きてんだよ!?腕がッ!!左腕が痛いィィイイイイ!!!!!!!

脈がどんどんはやくなってるのを感じる!!!はあっ!!はあッッッ!!痛イイイイッッッ!!!!

「んぐぅぅぅぅっっっっ!!!!!!!!!」

「腕を切ったくらいで大袈裟ね。まだ始まったばかりなのに」

切った!?俺の腕を!?しかもまだ始まったばかりだとッツ!?

「言ったじゃない、同じ目に合ってもらうって」





……………………………………どれくらい時間が経っただろうか?俺の腕を切りつけた奴はその後も俺の腕を切り続けノコギリのようなもので俺の腕を何度も前後に引き…肉を削ぎ………骨に当たってもなお同じ動き続け……………腕は……………切断された。こんなに痛いのに、こんなに痛くても俺の意識は失われない。むしろどんどん目が冴えていってドクドクと全身の脈は動いていて脈を打つ度痛みがどんどん増していく。何でこんなに痛いのに俺は死なない?もういっそのこと殺してくれ。一発でラクに殺してくれッッ!!!



「…最後に言いたいことは?」

…俺の願いが届いたのかこれで最後らしい。やっと死ねる…この痛みから解放される…口を塞がれていた布が剥がされる…話せる…今から大声を出せば近所の誰かが気づいて助けに来てくれる?なんて思いがよぎったが今の俺はもうそんな気力すらなくなっていた…

「な…んで……こんな、こと…を……」

「私もあなたに問う。何故あのコたちを痛めつけた?」

あのコたち…痛めつけた……同じ目………そうか…こいつは知っていたのか。…………俺が猫の死体を遺棄した犯人だと…



やっとの思いで買った新築。決して広くない家だけど俺にとっては城だった。なのに半年も経たずに庭に猫の糞尿や吐瀉物が撒き散らされていた。怒りが収まらなかった。猫よけグッズなど使ってみたがどれも効果はなかった。ある日、仕事帰りで偶然俺の庭に糞をしてる猫がいた。すぐ捕まえた。怒りを全てぶつけるように体を縛り付け全身を痛めつけた。それでも怒りが収まりきれずホームセンターでノコギリを買い体を切断した。やっと怒りが収まった。そしてその快感がたまらなかった。その後もその辺にいる猫を捕まえては切断し遺棄した。しばらくするとニュースに取り上げられやばいと思いそれ以来はやめていたのに……そうか、こいつは知っていたのか…



「謝罪もないのね」

奴は再び刃物を俺の体に振り落とし切り刻む……痛い………アツイ……アツイ…


「死ね人間。苦しめ、もっと。最後の最後まで苦しんで死ね」


……腹部に急激な痛み…目隠しされていた布がずれ視界が一気に明るくなる………うっすらと…薄くなる記憶の中で………俺が最後に目にしたのは………………………刃物…俺が猫の切断に使っていた………ノコギリを……俺の首元めがけ振り上げていた………×色の目をした………………………………………………女だった。





居酒屋

…飲みすぎた。気持ち悪い。久しぶりにこんなに飲んだなぁ。いつもはいつ呼ばれるかわからないからノンアルで誤魔化してたけどやっぱり酒はアルコールが入ってないと。

…あぁもうすぐ門限だ。すぎたら怒られる。でもこんなに飲んでいたらもう何も変わらないだろうな。

「隣いいですか?」

男は返事も待たず俺の隣の席に座る。知らない人だったが特に断る理由もなかったからそのまま飲み続ける。

「随分飲まれましたね。何かあったんですか?」

男はワイングラスを片手に俺の顔をうかがう。言えるわけない。どうせ女と別れてやけ酒だとか思ってるのだろう。男の顔をよく見ると整った顔立ちをしていた。イケメンだ。

「仕事で少し、でも大丈夫です」

「そうですか」

イケメンはワインを一気に飲み干し店員に同じのをと言いグラスを渡していた。スマホが鳴る。ルームメイトから門限10分前のメッセージ。電源を切りポケットの中にスマホを入れる。

「いいんですか?返事しないで」

イケメンは追加で注文したワインを店員から受け取り口をつける。

「もういいんです、辞めるんで」

「辞めるんですか?」

「…もう何も見たくない」

「よほど辛い思いされたんですね」

「…………うぅぅ〜〜〜っっ!!!」

今まで張り詰めていた糸が切れた。涙が止まらなかった。イケメンは俺が泣き止むまで隣の席を離れなかった。

「…すみません、急に泣いて」

「いえ、泣いてスッキリしたでしょう?」

「…まぁ少し」

話してしまいたい、先日あったこと全部。そうすれば全部スッキリするだろう。でも話してはいけない。新人だけど警察が捜査情報を他人に話すなんて。

「本当に辞めてしまうんですか?せっかく警察官になれたのに」

……えっ?このイケメン今何て?警察官?俺このイケメンに自分が警察官だって言ったっけ?

「すみません、怪しい者ではありません。あなたは覚えてないでしょうけど俺同期だったんですよ、あなたと。警察学校で」

「えっ!?嘘!?本当に!?マジで!?覚えてない…」

「まぁ班も違ったし卒業して俺は地方に配属になったので。つい懐かしい顔がいたので隣に座ってしまいました。気を悪くしたらすみません」

「全然っ!むしろ覚えてなくてごめん!!てか同期ならタメロでいいし!」




…二日酔い。気持ち悪い。調子に乗って飲みすぎた。あまり記憶がない…えっと、居酒屋で飲んで…どうやって帰って来たんだっけ?とりあえず財布…レシート、レシート……思ってる以上に飲んだな。あれ?ブドウジュース?そんなの俺飲んだっけ?………あっそうだ、警察学校の同期だったという男と意気投合して飲んだんだ。あのイケメン、ワインじゃなくてブドウジュース飲んでたのか。いつ呼ばれてもいいように…流石だなぁ…何の話したっけ?…………駄目だ全く思い出せない。まぁでも久しぶりに誰かと飲みながら話せてすごくスッキリしたな。あ、そういえば名前聞くの忘れた。でもまたどこかで会えるだろう、あいつも同じ警察やってるんだ。どこかの現場でばったりとかあるだろうし。

「…もう少し頑張ろ!!」





「じゃあな~!また飲もーなー!!」

「気をつけてな」

男はベロベロになりながらタクシーに乗って寮へ帰って行った。イケメンは歩きながらイヤホンをしスマホの録音を聞く。


『今ニュースになってる事件あるだろ…これこれ。俺上司にくっついて同行させてもらったんだけど…ひどい死に方で…』

『報道規制かけてるって言ってた』

『遺体が全身切り刻まれてて……左腕がっ…切断されてて……腹がこう…縦に切られてて…ぞっ…臓器がっ!…ぶっ……ぶちまけられてたんだよっ!!!』

『首がっ……切られてて…まだ………頭っ!!見つかってねぇんだっ!うっ…うぅぅぅぅっっっ!!!!!』


「.....はぁ」

...捜査内容べらべらとしゃべりやがって。まぁおかげで欲しい情報が手に入ったけど。

「……………」「……………」「………………………」「…………」




「……そこまでして………×は………何で…」


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