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人間殺処分  作者: 風花舞花
第一章 人間殺処分
5/7

3話 虐待

××小学校1年1組教室

「明日から夏休みです。怪我や事故のないように元気な姿で9月にまた会いましょう!では健太君号令!」

「きりーつ!きょーつけ!れい!」

「「先生さよーならー!!」」

「僕家族で沖縄行くんだ!」「私はおばあちゃん家!」

「おみやげ買ってくるね」「健ちゃんばいばーい!」「じゃーね健ちゃん!」

「じゃーねー!みんな!また9月!!…はぁ」

みんなの家はいいな。パパやママと遠い所に遊びに行ったりおばあちゃん家に行くみたい。教室ではそんな話でみんな大盛り上がり。僕のパパは、たんしんふにん?で帰ってこないし、ママもお仕事が忙しくて帰ってくるのはいつも夜遅く。夏休みなんてなくていい。学校だったらみんなと一緒に遊べるのに。

「夏休みなんてはやく終わっちゃえ」

明日から夏休みでまだ始まってすらないのにこんな願いをするなんてって思ったけど、家にひとりでいるくらいなら学校にいる方がよっぽどいい。



「ただいまー」「ワン!」

まめが僕にかけよってくる。まめは4月に僕が公園で拾ってきた犬。ひとりで公園で遊んでいたらすべり台の下に隠れていた。

「君もひとりぼっちなんだね」

なんだか放っておけなくてかわいそうでつい拾ってきてしまった。ママに怒られるかなと思ったけど自分で面倒見るならいいって許してくれた。

「まめ、明日から夏休みでずっと一緒だよ、いっぱい遊ぼうね」「ワン!」

拾った時は小さかったから「まめ」って名前つけたけど、少しずつ大きくなってるのを感じる。おすわりもふせもすぐ覚えたしまめはいい子だ。




「ただいま」

ママだ!!いつもより帰ってくるのはやい!!どうしたんだろう?

「おかえりママ!お仕事お疲れ様!」

「健太、ママね明日から出張になっちゃってしばらく帰ってこれないの」

「えっ…そうなんだ…しばらくってどれくらい?」

「1週間位かかるかもしれないわ。ご飯は適当に買ってきたから期限早いのから食べて」

ママはスーパーで買ってきた大量の食材を冷蔵庫に次々と入れていく。

ゆっくり話がしたいのに今話したら怒られるかな?

「レンジで温めて食べるのよ。たりなかったらおかしかカップラーメン食べて。お金も少しだけ置いていくけど無駄遣いは駄目よ。あと暑い日が続くからクーラーを入れて水分もとって…」

…ママ…僕ね…

「まめのお世話もよろしくね。犬は暑いのも寒いのも苦手だからお水も飲ませるように。お散歩は日中はやめて朝のうちと夕方で…」

……ママ…

「健太はまめのお兄ちゃんだからできるわよね?」

…僕はまめのお兄ちゃん…

「…わかった!お兄ちゃん頑張る!」

「そう。夏休みだからって夜遅くまで起きてちゃ駄目よ。宿題もはやく終わらせること。あ、もうこんな時間。健太はやく寝なさい」

「…おやすみママ」


…ママ、帰ってきて一度も目を合わせて話してくれなかった

…ママ、僕お兄ちゃんじゃないよ

…ママ、寂しいよ

…ママ、本当に一週間で帰ってくる?

…ママ、クラスの子はみんな家族で旅行に行ったりするんだよ。僕もママとどこか行きたいよ

…ママ、もうすぐご飯なくなりそうだよ

…ママ、宿題終わらせたよ。えらい?

…ママ、今日で1週間だよ。今日帰ってくるよね?

…ママ…寂しいよ………ママ…

「寂しいよ…ママ…うっっ…うぇーーん!!ママぁあああっっっ!!!!!」

「ワン!ワンワン!!」

まめが僕の周りをウロウロしてる。心配してくれてるのかな?僕お兄ちゃんなのに泣いちゃったよ。お兄ちゃん…僕お兄ちゃんなの?なんでお兄ちゃんなの?いつからお兄ちゃんなの?…まめが来てからだ…そういえばまめが来てからママが帰って来る時間が遅くなった気がする。まめが来てから僕はお兄ちゃんになって色々我慢することがふえた気がする…もしかして……まめのせいで…ママが帰って来ない…?

「…まめのせいだ」「…クゥーン?」

「…まめのせいだっ!!!」

バン!!

「ギャンッッ!!」

「まめのせいでママが帰って来ないんだ!!」

バシッ!ドン!!

「まめのせいだ!!まめのせいだっ!!うわぁああああん!!」

近くにあるおもちゃをまめにむけて投げつける。最初は当たってたのにだんだん当たらなくたってきた。まめが逃げるから。当たらなくなるのもだんだんムカついてきて…

「はぁ…はぁ…もうっ!!」

近くにあったボールを思いっきりっっ!!


…プルルル…プルルルルル……


…電話?…ママからだっ!!急がないと切れちゃう!!「もしもしっ!!ママ!?」

「もしもし健ちゃん?元気?」

…ママじゃない。ママは僕のこと健ちゃんなんて呼ばない。

「…元気だよ。どうしたの?」

「今日僕ん家で遊ばない?新しくゲーム買ったんだ!一緒にやろうよ!」

「えっ…いいの?」

「もちろん!じゃあこれから僕ん家来てね!待ってるよ!ばいばーい!」

電話の相手はママじゃなくてクラスメイトの子だった。遊びに誘ってくれた。嬉しい。新しいゲーム、楽しそう。僕がいない間にママが帰ってきたら?と思ったけど多分今日も帰って来ない、そんな気がした。それより遊びに誘ってくれたことの方が今の僕にはすごく嬉しかった。急いで行こう。戸締まりだけはちゃんとするようにいつも言われてるからしっかりして…よし急がないと。窓、玄関の鍵…よし。外はすごく暑かった。行くだけで汗でびしょびしょになりそう、日陰を通って行こう。

「楽しみだな…へへっ」




「お昼ごちそうさまでした!おじゃましました!」

「じゃーね健ちゃん!また来てねー!」

「うん!またねー!」

新しいゲーム楽しかったなぁ。お昼はそうめんとかき氷をごちそうになった。おいしかった。沢山おかわりしちゃった。おみやげにっておかしももらっちゃった。夕飯はこれで足りるかな?

夕方なのに外はとても暑かった。さっきまで涼しい部屋にいたからより一層暑く感じた。帰ったらまめの散歩しないと…

「ただいまー…あっっつい!!!!!」

ドアを開けると熱気が一気に僕の体にかかる。外より暑い。窓閉めっきりだったから…あれ?僕クーラーつけて行かなかったっけ?

『犬は暑いのも寒いのも苦手だから』

『クーラーを入れて水分もとって…』

どうしよう…どうしようどうしようどうしよう!!!?

「まっまめ!ただいま!どこっ!?」


家中を探したけどまめは見つからなかった。どうしよう!!まめが死んじゃったら!?お兄ちゃん失格!?ママに怒られる!?どうしようどうしよう!?

ガチャ

玄関が開いた音がした…ママ?どうしよう!?まめがいないのがばれたら怒られる!?どうしてまめいないの!?窓もドアも閉めてたから逃げられないはずなのに!でも!!あれっ!?もう!!どうしようどうしよう!?正直に言わないと!でもママお仕事で疲れてるのに!?

………どうしてママは玄関を開けたのにリビングに入ってこないんだろう?トイレ?でも音がしないし、もう一回外に出たのかな?…あれ?そういえば車の音したっけ?いつも車の音がして、鍵についてる鈴の音がして玄関を開けるのにその音が全くしなかった。僕が聞こえなかっただけ?じゃあ……じゃあ…今僕の目の前のドアから見える人影は一体誰…?

「…ママ?……ママだよね?」

…返事がない…ドアノブがゆっくりと回る…

「…ママ…おかえり…あのね…」

ドアがゆっくりと開く…

「…僕いい子にしてたよ…宿題終わらせたよ…まめのお世話も…」

「………ねぇ…ママ…………ママだよね?」

ドアが開いた先にいたのは…

「…おかえり…………ママ…」




『ママおかえり!』

『ただいま健太!お留守番させてごめんね?でももうお留守番しなくていいのよ。ママね、お仕事辞めてきたの。だからこれからはずっと健太と一緒にいれるわ』

『本当!?…でも…ママごめんなさい…まめが…』

『いいのよまめのことは。あ!そうだ!健太どこ行きたい?一緒におでかけ行こうか!行きたい所ある?』

『おでかけ!?いいの!?えっとね!僕はー』




「ママの行きたい所でいいよ!!……………あれ?」

…ここどこ?目の前は真っ暗で何も見えない。何故か手も足も縛られて…体が動かせない。ガタガタ揺れてるし…ここは…車?……なんで僕は何も見えない状態で手足を縛られて車の中にいるの?





「ママの行きたい所でいいの?」



「えっ!?だっ誰!?」

誰か近くにいるの!?目の前が真っ暗だから誰がいるかわからない!!それに話しかけてきた人の声はママじゃない…じゃあ、さっきのおでかけの話は夢だったんだ…

「あなたの意志はないの?」

「…僕はママと一緒ならどこだっていいんだ」

そう、ママがいれは僕はどこだっていい。ママがいればどんな所だってきっと楽しいから…………返事がない…

「…ねぇここどこ?」

…怖いよ…どこにつれて行かれるんだろう?

「…ママ…会いたい…うっ…うぅっっっ!!」

涙が止まらない…怖いよ…ママ助けて…

車が止まりドアの閉まる音がした。すぐに僕の左側のドアが開いた。外の空気は少しむわっとしていた。足の拘束が解かれたけど何も見えないからどこに行っていいかわからない。

「…ねえ、どこに行くの?…ねぇ、お」




「子供はね、高く売れるのよ」




××小学校1年1組教室

「おはようございます。皆さん夏休みはどうでしたか?」

「楽しかったー!」「僕プール行ったよー!」「先生健ちゃんはお休みですか?」「………」

8月下旬、9月からの授業に向け準備をしていた午後、警察がやってきた。健太君が行方不明だと。両親はすでに離婚しており親権を持つ母親と連絡がとれず捜査は難行してるという。そして××海岸で健太君が着用していたと見られる衣服が見つかっていて唯一の手がかりがそれしかないとのこと。職員会議を開き警察とも相談し生徒達の影響を考えて情報は一切漏らさないよう「転校」という形で話をすすめることにした。

「…健太君はご両親のお仕事の都合で転校することになりました。急なお話でしたので皆さんに挨拶は出来ませんでした…時間ですね、体育館へ行きましょう。始業式ですよ」

「転校だって」「寂しいね」


…健ちゃんが転校?前遊んだ時はそんなこと一言も言ってなかったのに…嘘だ。先生は嘘をついてる。僕は知ってるんだ。先週健ちゃん家の前にパトカーがとまってたこと。何かあったんだ!健ちゃんに!!今日帰ったら健ちゃん家に行ってみよう!何かわかるかもしれない!



健ちゃん家はここだ。カーテンが閉めっきりで中は見えないドアも閉まってるし…健ちゃん本当に転校したの?また遊ぼうって約束したのに…健ちゃん…

「ワンワン!」「チビ待って!ゆっくり歩いて!」

びっ、びっくりした。犬か…そういえば健ちゃん家も犬飼ってるって言ってたっけ。名前は小さいからまめってつけたって言ってたけどどんな犬なんだろう?見てみたかったなぁ。

「チビ行くよ!」「ワン♪」



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