9 父
蜘蛛怪物、宇梶改め。
父、中村剛士と中村倫也は歩いていた。
何のきっかけか蜘蛛怪物から父の心を取り戻した今、平穏が戻ろうとしていた。
父は海の向こうを見る。遠くで船が行き来していた。
「懐かしいだろ。」
「父さん・・・本当に記憶が戻ったのか・・・」
「ああ、もちろんだ。ここにも母さんたちと一緒に来たよな。懐かしいよ。いつの間にかこんなに、ははっ、大っきくなって、頑張ったな!」
頭を撫でようと手を伸ばしてくる
「や、やめてくれ!もう子供じゃないんだ」
中村は照れくさくて首を引いて避けた
「そうだな。でも・・・頼む。まだ子供でいてくれ」
「父さん・・・」
海が見える港を歩いていると
「ふん!」
突如現れたパープルスカーレット4が中村を殴り飛ばした
「ぐあ!」
中村が吹っ飛ばされる
パープルスカーレット4と
「と、父さん!どうして!」
父が蜘蛛怪物へと姿を変える
「ピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッ!」
蜘蛛怪物が鳴き声をあげる
「騙したのか!」
そうすべては蜘蛛怪物の卑劣な策略だったのだ。
許せなかった。
中村の中で怒りがわきあがる。
デストロ専用のソフトカードを携帯機にセット
中村が叫ぶ
「神来!」
雷が落ちると同時、綺麗な光の粒子が中村を包み込みスーツが体に装着された。
「デストロ!起動!」
両目が緑に光る
「はあああああああああああ!」
高橋も駆け付けると、いつの間にかブルーセイバー4へと身を包み戦いを始める
2対2での戦いが始まった
高橋vsパープルスカーレット4
中村vs蜘蛛怪物の組み合わせだ。
パープルスカーレット4の圧倒的な戦闘スタイルを前に高橋が苦戦している間に勝負を決めなくてはならない。
「うああ!」「ぐえ!」「ぶええ!」「ぎゃはあ!」
高橋が一方的にボコボコにされている。
「うおおおおおお!」
中村はソードを振りかぶり、蜘蛛怪物と対峙する。
ギャイン!ギャイン!ギャイン!
何度となくソードと爪が交差した
蜘蛛怪物が余裕で言った
「ははははははははははははははははははっ!無駄無駄だあああ!」
猛烈な攻撃が中村を討ち、中村の攻撃など効いていないと主張してくる
「ぐっ!」
ソードと爪がつばぜり合うと火花が散った
「楽しい家族ごっこだったよ!」
爪が振るわれ中村を傷つける
「ぐあ!」
「貴様の父親はすでに俺の中に取り込まれている!」
爪が振るわれる
「うあ!」
「やつの精神はかけらも残っていないんだよおおお!」
爪が振るわれる
「うあああああ!」
何度も爪が振るわれ火花が散った
「くっ!そんなことない!父さんは生きてる!生きてるんだ!父さんを返せえええ!」
「死ねええええええええええええええええええええええええええ!」
鋭い突きが繰り出されようとしたときだった。蜘蛛怪物の手が止まる
「ぐ、・・・くっ、バカな!」
そこにわずかに父の姿を見た。
「まさか・・・父さん!わかるのか!俺だ!倫也だ!」
何度も呼びかける
「ゆ、倫也・・・」
「そうだ!俺だよ!父さん!」
「黙・・・れえ・・・」
「倫也・・・」
蜘蛛怪物の中で父と蜘蛛怪物の精神が戦っているようだった
「父さん!負けないで!」
「倫也・・・」
「黙れええ・・・」
「ふん!」
グサ!
蜘蛛怪物は、いや、父は自らの胸を爪で突き刺し倒れ伏した
「とうさあああああああああああああああああああああああん!」
慌てて抱き起す
「倫也・・・」
「父さん!しっかりして!すぐに病院に連れてくから!」
ガッ、と服の袖をつかまれる
父は無言で顔を左右に振るうと笑顔を見せて、静かに息を引き取るのだった
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「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
高橋が吹っ飛ばされる
そこに中村が現れるとソードを構えて言った
「立て!高橋!来るぞ!」
「ぐっ!ああ!わかってる!」
パープルスカーレット4と激しい戦闘を繰り広げる
パープルスカーレット4の二刀流と2足り係で戦いを挑む。
何度も火花が散り、戦いは熾烈を極めた。
呼吸の一つ一つを感じ取り、精神を研ぎ澄ませ、ギリギリの攻防を繰り返す。
「うわ!」
高橋がソードでぶっ飛ばされるも、中村の斬撃音は鳴りやまない。たった一人でも戦い抜いて見せる。
「父さんは、俺に何一つ言葉すら残すことができなかった。」
すべての想いを斬撃に込める
「だけど俺にはわかる!父さんは俺に言っていた。仇を取ってくれって!そう言ったんだ!だから・・・てえああああああああああああああああああああああああ!」
わずかな技量の差で斬り捨てる。
ふらつくパープルスカーレット4
中村がデモリッション・ソードをデモリッション・ガンへと変形させる。
「バースト・モード!」
音声を認証し、デモリッション・ガンがさらなる大口径に変形する。
銃口を向けた
「ハイ・デモリッション・ストライク!」
銃が音声を認証。
凄まじい荷電粒子の一撃が直進していく。
ドカーン!
斎藤工が血を流しながらつぶやくように言った
「ゆ、倫也・・・」
ドサン・・・。
ドカーン!
大爆発、勝利したのだ。
父の無念を晴らし、同時にそれは親友を手にかけたことも意味していた。
勝利の喜びなど感じられるわけがなかったのだ。