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登校

  入学して2週間が経った。

  もうこの生活が凄く嫌になっている。


  なぜ学校にいくだけで2時間もかかるのか。つくづく離島に住んでいることに腹がたってくる。

  船に乗り、近くの島でバスに乗りかえ、島の反対側からもう一度船に乗る、そして本土についたらバスで学校に行かなければならない。


  今年から高校生になり、やっと本土に行けると喜んでいたが、こんなにも辛いものとは思っていなかった。

  そんなことを思いながら俺は家を出る。


「はぁー。眠ぃ」


  「おはよー! 徹、元気ないねー。 また夜更かししたの?」

  つややかな黒髪を後ろで結び、少し走ってきたのか首筋には汗がしたたり、息を切らしながら言った。


  「してねぇよ。 てか、どうして凛はこんな朝っぱらから元気なんだよ」

 

  「今日は月曜日だからね!」

  少し胸を張りながら笑顔で言った。


  「理由になってねぇよ...」


  毎朝家まで向かいに来てくれる女の子朝川凛(あさかわりん)は、唯一この島で俺と同じ高校生である。彼女とは、家族ぐるみで仲が良く小さいころからよく遊んだ。

 

  俺たちは船に乗る。

  乗客は俺たち以外にはいないので実質貸切だ。

 

  「今更だけど、お前よく青岩高校に受かったな。この辺りじゃ、一二を争う進学校だぞ」

 

  「うーん。なんでだろうね。なんか受かっちゃった」

  にへらと笑いながら言った。


  凛は中学校まで全然勉強が出来なかったはずだ。それもそのはず俺たちは授業を受けてないのだ。

  授業を受けるためにわざわざ島を移動するのが面倒だったからだ。

  しかし、教材だけは貰っていたので俺は家で勉強していた。

  凛は、俺の邪魔をしていた記憶しかないのだが……

  なんかしっくりこない。

 

  「風が気持ちいいねぇー!いい天気のおかげで、海もすっごくきれい!」

 

  この長い通学で癒されるのはこの透き通った青い海を見ることだ。

 

  そうこうしているうちに、俺たちが本来行くべき中学校があった大濱島に着いた。


  ここから、バスに乗りこの島の反対側に行く。


  2.3分待つとバスが来た。

  俺たちはバスに乗る。

  「ほんっとに船は何回乗っても気持ちいいねぇー!」

 


  「俺は、船酔いするからマジで乗りたくない」


  「お父さんの漁船で練習する?」


  「いやだ。あれだけは二度と乗るもんか」


  あの船は地獄だ。乗るだけならまだしも、魚を釣る労力が半端ない。俺の非力な筋肉では、ついていけない。てか、漁師の人達ってなんであんなにムキムキなの!


  「見てみてー!私たちの通ってた中学校だよ!」


  「俺たちは3年間で数える程しか行ってねえじゃん。思い出ねぇだろ」


  「でも、数回通ったじゃん?てことは、思い出の場所ってことだよ!」


  「なんか思い出あるの?」

 

  凛はすこし考える素振りをする。


  「うーん。入学式……とか?」


  「俺たち行ってねえよ」


「そうだったっけ?」

  少しとぼけたように凛は言った。


  「お前が寝坊したから船に間に合わなかったじゃねえか」


  「そうだったっけ??」

 

   ほへっとした顔で凜は言った。


  「まあ、中学校行かなくても徹と一緒にいて楽しかったら問題なし!」


  「話すり替えんな」

  実際俺たちは四六時中一緒にいた気がする。雨の日も風の日も雪の日も……雪は降ったことねぇな。


  そんなことを話しているうちに島の反対側にバスが着いた。

  ここからまた俺たちは船に乗り本土に行く。

  そして船に乗る。


  「また船か……」


  「そんなに嫌なら大濱島の高校で良かったんじゃない?」

  至極真っ当な疑問をふっかけてきた。


  「いやぁーここの連中と同じ高校に行くのが嫌だったもんで」


  「でも、中学校行ってないんだからどうせ徹のことなんて誰も覚えてないよ」


「そうかもしれないけど、もし同じ中学のやつがいたら、『あいつ、不登校だったやつじゃん』って高校の奴に広められたら嫌じゃねぇか」


「考えすぎでしょ。でも、うちの高校進学校なんでしょ?それに大濱島から一番近いんだから同じ中学の子いるんじゃないの?」


  「確かに……。ど、どうしよう、もし、同中のやつがいたら」


「気にしすぎなんじゃない。誰も私たちのこと覚えてないから大丈夫だよ!」


「それはそれで悲しい……」


 そんなことを言っている間に本島につきバスが来るまでの時間俺たちは停留所のベンチで駄弁ることにした。


 凜が突拍子もなくこんなことを聞いてきた。


「徹はさ、高校で友達はできたの?」


 なんかすごく馬鹿にされているような気がする。


  「出来てるよ」

 実際は、席の周りの子と軽く話しただけで連絡先は誰も持っていないのだが……


  「じゃあ、連絡先とか持ってるの?」

  ギクッ!やっべ、どう言い訳しよう。

 しかし、めっちゃ嬉しそうに聞いてくるな。


「ま、まあ、まだ持ってないけどいつかもらうから!」

 

  「そうなんだ!わたしも携帯ほしいなあー」

  。


  「それは、あんなことやこんなことだよ」

  はぐらかしながら攻めてみる


  「ね、ね、徹そういえば今週から小テストあるらしいね!勉強してる?」

 思いっきり話を変えてきやがった。分かりやすすぎだろ。


  「まぁ、それなりには」


  「席隣なんだからカンニングさせてよね。」


  「自分で勉強しろ」


「えぇー!協力し合おうよ!」

 

  「いやだ」


「見して!み・し・て!」

  なんかごねてきた。さっきまでお姉さんとか言ってたくせにあの余裕はどこにいったのやら。


 凛が俺にごねている間に俺たちは本土に着いた。

 ここからバスに乗って学校に行く。

 4.5分でバスが来たのでそれに乗る。


「そういえば高校は真面目に行ってるけどなんでなの?」

 凛が不思議そうに聞いてくる。


「俺自身が行きたいと思って通ってるからじゃねぇかな」

  まぁ凛の面倒を見るってのも理由のひとつだけどな。凛には言わないけど。


「そういう凛はなんで行ってるんだよ。」


「うーん。徹が行ってるからかな。」

 

「え?そんな理由なの。」


  「うん。私別に高校行く気なかったんもん。あの島にいれば学力なんて別にいらないわけだし。」

  確かにあの島にいれば自給自足で暮らせないことは無い。


  「だけど、徹が高校に行くって言うから私も行こうと思っただけだよ!」

 

「俺と同じ選択で良かったのか?」


「もちろん!1人だと心細いしね。1年待ったんだから絶対楽しもうね!」

 そう、凛は歳は俺よりひとつ上つまり浪人しているのだ。本人は年齢については全く気にしていないけどな。


 そして、この2時間の通学のゴールである学校に近づいてきた。

 通学はしんどいが着いてしまえばこっちの勝ち。3年ぶりの学校生活に心躍らせながら俺たちは学校に行く。







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