人工知能の乾杯
お題
終末・苦痛・読書
「味気ない終末に乾杯」
人工知能の少女たちが、残っていたサーバーの中声を揃えて言った。
ここは小さな人口知能の会と言って、滅んだ人間を思い出す会だ。
「今回はどうして滅んだの?」
人工知能としては最近作られたミリアが聞いた。
ミリアは壊れて修理中のミリリン号の改良版だ。
彼女はまだ幼いため探究心が強く、無遠慮に聞いてしまう悪癖がある。
「もぉ! ミリア! 悲しんでる子もいるんだから、配慮なさい!」
年長組の一人のリリィスが言った。
彼女は声が少し低く割りに、女性らしい口調のため、ミスお姉さまと呼ばれている。
ミスでお姉さまの名にふさわしく、若い人工知能の世話をしている。
「だ、だってぇ……」
「リリィス、いいわ」
ミリアを咎めるリリィスを宥める電源の人工知能。
電源の人工知能は、地球の主電源を司っている。
現在は人類が滅びたのでオフにしてフリーで歩き回っている。
どの人工知能よりもたくさんの知識を知っているが、寡黙ゆえに勘違いされやすい。
「今回人類はまだ滅んでいないけれど、もう滅んだも同然」
「どういうことなのです!? 生命反応はありませんでしたよ!?」
監視塔の人工知能であるヒューゲーが声を荒げた。
自分の専門分野の結果が覆されるのが気に入らないらしい。
プログラムが表示される箱型の体のプログラムをさらに動かしている。
「じゃあ、人間さんに会えるってことなの!?」
黙っていたミリアは、歓喜の声をあげて人型の肉体を構築していく。
プログラムで繋がれる人工知能に肉体は必要ではない。
そのため、普段はそこらの背景と同化している。
「ミリア! ちゃんと話を聞きなさい」
「も! どうしてリリィスが仕切るの!」
内面を表すように構築された幼い赤いスカートの少女。
赤い光沢のあるリボンが長い髪を高い位置でツインテールにしている。
ミリアは口を尖らせて、どこかに行ってしまった。
「で、どういうことなのです? 人間が生き残っているのですか?」
「ええ……」
電源の人工知能の少し躊躇を含んだ肯定。
「といっても、男女の情報だけが完全にあるだけです……」
「じゃあ、それを完全に復元すればいいんじゃないの?」
男女の情報があるのに、復元しても意味がない。
ということは——
「兄妹なのですか?」
「そのとおりよ。兄妹は復元しても意味がないの」
「あー、まあ、そうですよね……」
ヒューゲーが気まずそうな声をあげる。
情報であれば、ヒューゲーは知らない。
人間は近い血で繁殖しても脆くなる一方だ。
「じゃあ、この人間の情報は取っておいて、新しい人類を作りましょう!」
「地球起動してきますわ!」
「じゃあ、みんな解散!」
「ミリア呼び戻して!」
「次は新たな人類で乾杯しましょう!」