僕と蜘蛛と時々第三の変化
「ん?どうした?どういうものなのか教えてくれないか?」
そう言われ、僕の背中に流れる冷たい汗は加速する。
よし。
「あのですね。これは傘と呼ばれるものでして、雨をしのげるのですよ。。こうやって」
僕は傘を開いて見せた。
クッコとその取り巻きは「ほー」「へぇ」「ふーん」と反応は様々であったが、「まぁ外出る時には便利よね」という事で意見が一致した。
「あっちょっと待ってくれ」
無事に牢獄より出た僕にクッコさんが再び呼び止める。
まだなにか?
そんな危険な返答フラグは建てずににこやかスマイルで応対する。
「ハイ!」
「これはお詫びとして受け取って欲しい」
そういうと金貨を1つくれた。
おうおう!!
冤罪扱いかましてくれて、金貨1個とはずいぶんじゃねーか!?
騎士団長なんだろ!?
もっと持ってんだろ!?
オラッ!ジャンプしろよ!!
な~んてことは申しません。脳内だけで済ませる。
「こ、こんなにたくさん!?ありがとうございます!!」
魔女のキ〇と同じような返答。返答としては100点満点だろ!?
最敬礼もキマり、クッコさんの顔を見ると嬉しそうな表情をしていた。
クッコさんと分かれて牢獄のあった建物から出ると、ちょっとした砦だった。
その周辺を取り囲む様に小さな屋台が並んでいた。
さすがにちょっと腹減ったな。
僕は屋台を見て回り、焼き鳥の様なものを見つけて食べてみた。
おっ!?
こいつは美味しい!
こっちの世界でも焼き鳥ってあるんだな。
なんだかふしぎ発見を肌で感じつつ、感傷に浸っていた。
銅貨10枚で2本。金貨1枚貰って正解だったな。これで多少は食いしのげる!
なんとなくここに滞在するのは危険と判断して、道なりに歩みを進めた。
よろず屋で周辺地図の様なもの購入して、ここから50キロくらいの小さな村を目指した。まずはこの世界の情報収集だろうな。
多分森を突っ切れば、最短半分の距離で行けるはずだ。
変に方向を変えない様に、まっすぐを目指してっと。
森に入り傘をシールドに変化させて、道なき道を進んでいくと雰囲気がガラッと変わった。
なんか冷たい。ヒヤッとする。心霊体験か?
などと思っていると、前方にポワッと明るい所が見えた。
やけに辺りが紫色な状態でふと空を見上げると、うっそうと木々が生えており、日の光も入らないものだった。
何か嫌な感じを受ける。
何かいる。
傘をそのままモード:シールドで警戒する。
プシュー
音のする方へ顔を向けると、白い塊が飛んできた。
ギリギリの所でかわすと塊は木に当たり、大きな蜘蛛の巣に塊が変化した。
あっぶねー!!
モンスター戦かよ!!
シールドを白い塊が飛んできた方向へ構え、周辺の索敵を開始した。
カサカサ
周辺で音がする。
くっそー。まっすぐ行ったら危ないとか、どこのゆう〇うはくしょだよ!
余計な事を考えつつも、索敵を再開。
ガサッ
木の上で音がした。目を向けると上から大きな蜘蛛が、僕目がけて落ちてきた。
シールドをそのまま蜘蛛に向けたままローリング。
途中蜘蛛の爪がシールドに当たり、ガン、ガンいっているが体制を立て直し、蜘蛛との距離を測る。中距離程度。それなら!!
「モード:ショットガン」
傘を閉じ。ショットガンに変化させる。ポンプアクションを素早く行い、トリガーを引く。
「オラー」
ドォン! ガシャコン
ドォン! ガシャコン
キシャー!
大きな蜘蛛を傷つけるのに、ショットガンの拡散弾は効果的であった。思わず飛び上がり木の上に退避する蜘蛛。
ヘイヘイ!大きな蜘蛛さんビビッてるよ!!
とは言ったものの、ショットガンではちょっと遠い所に行ってしまった。遠距離の状況だが、例えスナイパーに変化させたにしても、慣れないスコープ武器で手間取るし、ブレイドじゃ届かないし。
うーん。
あ!
ちょっとやってみたいことあったわ!!
んじゃさっそく。
形状を傘に戻してから中央部分を握り、取っ手が蜘蛛側になる様に持つ。
「モード:マジック」
すると淡い紫色に傘が光りだし、魔法使いの杖に変化した。
熱いですね。
熱過ぎて溶けませんか?