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殺戮のダンジョンマスター籠城記 ~ヒッキー美少女、ダンジョンマスターになってしまったので、引きこもり道を極める~  作者: 虎馬チキン


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3 初戦闘

「ひっ……!」


 私の口から、反射的に悲鳴が出た。

 似ていたのだ。

 ゴブリン達が私に向ける視線が。

 両親を殺した、あのストーカーと。


 つまり、あいつらは、性的な目で私を見ている。


 聞いた事がある。

 ゴブリンは、邪悪で、ずる賢くて、そして人間の女を◯◯◯(ピー)して繁殖する。

 某ゴブリンをスレイする漫画は私も読んでた。

 私の感じる悪寒と恐怖が本物なら、このゴブリンどもは、あの漫画に出てくるゴブリンと大差ないだろう。


「ギィ!」

「ギギ!」

「ギィギィ!」


 三匹のゴブリンが、戦闘力を持たない哀れな生け贄(わたし)に近づいて来る。

 怖い。

 怖い。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


 さっきまでは野垂れ死んでもいいと思ってたのに。

 今はどこまでも死ぬのが怖い。

 いや、死ぬ事よりも、その前に味わうだろう苦しみを想像すると、どうしようもない程、怖くて嫌だ。

 嫌だ。

 嫌だ嫌だ嫌だ。

 こんな、こんな死に方は望んでない。


「ぃ……ゃ……」


 その小さな声を合図にしたかのように、三匹のゴブリンが私に向かって走り出す。

 きっと、ゴブリンどもは、あの手に持った粗末な棍棒で私を殴って、あの腰布の中にある粗末な棍棒(比喩表現)で、私をズッコンバッコンと◯◯◯(ピー)するのだろう。


 そんな絶望の未来を回避する為に、体は私の予想に反して冷静に動いた。


 もしかしたら、あのストーカーを撃退した事で、精神的な耐性でも出来たのかもしれない。

 体の震えは止まらないし、溢れ出る涙も止まらない。

 それでも、体は動いた。


「メニュー!」


 私の体は、咄嗟に最善と思った行動を取っていた。

 剥き出しのダンジョンコアに触れながらそう叫ぶと、私の前に透明なディスプレイが現れる。

 そこに表示されているのは、ダンジョンコアの能力で召喚可能なモンスターの一覧。

 でも、それを行う為の魔力、DPは、現在僅か12DP。

 これじゃ、スライム一匹(10DP)くらいしか喚べない。

 私のラノベを参考にした想像が間違っていなければ、スライムはゴブリンよりも格下だと思う。

 壁になるかも怪しい。


 でも、私は諦めない。

 DPがないなら増やせばいい。

 ダンジョンコアの情報を頭の中にインプットされた私は知っている。

 DPを増やす方法はいくつかある。

 地脈から魔力を吸収する自動回復。

 侵入者を殺す事。

 侵入者がダンジョンエリア内にいる状況を維持する事。

 アイテムをDPに還元する事。


 そして、━━ダンジョンマスターからの直接注入。


「行っけぇええええええええ!」


 ダンジョンマスターが自分の魔力を注入する事によって、ダンジョンコアはそれをDPに変換できる。

 私に魔力なんてものがあるのかはわからない。

 私は生まれてこの方、魔力なんてものを感じた事はないし、そんなものはフィクションの中にしかないと思ってきた。

 でも、ここは異世界(多分)だ。

 ダンジョンコアがあって、ゴブリンがいて、なら、私に魔力くらいあっても不思議じゃない!

 お願いだから、助けて私の魔力!


 そんな私の祈りは、届いた。


「「「ギィ!?」」」


 ダンジョンコアが一際激しく発光する。

 それに驚いたのか、ゴブリンどもが足を止めた。

 メニューを見れば、凄い勢いでDPが増えている。

 これは、ご都合主義きたかもしれない!


「召喚!」


 そして私は、一気に増えたDPでモンスターを召喚した。

 選んでいる暇はなかったから、心の中で「今あるDPで喚べる、一番強いやつ!」と念じながら。

 このメニューは、別にタッチパネル式じゃないから、それだけで召喚は成立する。


 そして、私の目の前に光り輝く魔法陣が展開され、その中心から一体のモンスターが現れた。


 西洋の全身甲冑、フルプレートメイルみたいな、鉄色の鎧。

 どこまでもシンプルな形状で、どこまでもシンプルな色合い。

 剣も盾も持っておらず、武装の一つもしていない。


 でも、感じる力はゴブリンよりも遥か格上。


 それを見て私は思った。

 助かったかもしんないと。


「命令! 侵入者を駆逐せよ!」


 咄嗟に口から出た命令に従って、鎧が動き始めた。

 見た目に反して、かなり俊敏な動きで。

 そのまま、鎧はゴブリンの一匹に、その拳を叩きつけた。


「グギャッ!?」


 武装がないとはいえ、鎧の拳は文字通りの鉄拳。

 その破壊力にゴブリンは耐えられず、頭蓋骨をひしゃげながら崩れ落ちた。

 ダンジョンマスターとしての感覚が、新しくDPが入ってきた事を告げる。

 つまり、あのゴブリンは死んだのだ。


「ギィッ!」

「ギギィッ!」


 残る二匹のゴブリンが、細い木の幹をそのまんま使ったような、粗末な棍棒を鎧に叩きつける。

 だが、効かない。

 鎧は体を守る為の防具。

 その防御力は伊達じゃないらしい。


 攻撃が効かない事に動揺したゴブリンは、一匹が鎧に蹴り飛ばされて、洞窟の壁に叩きつけられ、

 もう一匹は、振り向きざまの右ストレートを食らって沈んだ。

 どっちのゴブリンからも、DPが入ってきた感覚がある。

 死んだのだ。

 全滅したのだ。


 つまり、私は生き残った。


「か、勝った……助かった……」


 私は、未だに恐怖でドクドクと脈打つ心臓の鼓動を感じながら、フラフラと、その場に崩れ落ちた。

 お尻と膝が岩壁に打ち付けられて痛い。

 でも、そんな事が気にならないくらい、私はホッとした気持ちでいっぱいだった。

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殺戮のダンジョンマスター籠城記(1)
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