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海の声  作者: 如月アル
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私は…

「ごめん、どういう事??」


海美は俯いたまま暫く黙ったままだった。俺が静かに答えを待っていると、海美の口がそっと開いた。


『あのね…私…』


海美は唇を噛み締め、禁忌の呪文を唱えることを躊躇うかのように潤んだ瞳で俺を見つめた。


「大丈夫だよ。なんだか分かんないけど。きっと大丈夫だからさ。」


海美は下を向いたままゆっくりと深呼吸をすると小さな声で一言『わたし、しんじゃったかもしれない。』そう告げると同時に床の板に一滴の雫が染み込んでいく。


俺はしばらく海美の言葉の意味が理解できずにいた。


「何言ってんの…?そんな訳…ないじゃん!!だって…」


『そうだよ。きっとそうなんだ。じゃなかったら私が見えないなんて事ある訳ないでしょ??』


「だから何言ってんだよ。だって俺にははっきり見えてるし、そんな馬鹿げた話…信じれないよ普通。」


『そう…だよね。私の勘違いだよね。』


海美は下を向いたまま黙り込んでしまった。俺が間違っているんだろうか。嘘はついていない。つくはずがない。心の中ではその確信があるにも関わらず、俺は"信じるよ"という言葉をかけてやることができないでいた。


「なんで、そう思ったの?」


『なんでって…そうとしか考えられないんだもん…』


俺は海美から今までの事を聞いた。

気がついたら"あの浜辺"に立っていた事、お母さんの身体を"すり抜けた"事、

家に戻って何をしても"何も気付かれない"事…

話を聞き終わってからも、その"常識を逸脱した話"を俺は理解できていない。


「どうして…俺には普通に見えてんだぞ…」


『海石…』


「えっ?」


『海石が関係あるんじゃないのかな…』


海美の手が俺のペンダントへとそっと伸び、夏の陽射しをキラキラと反射した石を指先で転がした。


「そんなワケ…」


刹那、あの時の記憶が蘇った。


ピタリと止んだ潮風と波…あれは気のせいじゃなかったのか…


『くよくよしててもしょうがないよね。私は誠司くんに気付いてもらえるってだけで頑張れるから。』


「海美…ちょっと付き合ってよ。」


『え?ちょっ…どうしたの?』


俺は海美の腕を握ると灼熱の浜辺を駆け出した。たしかに海美はここにいる。だけど…それを知っているのが俺だけなんて可哀想すぎんだろっ!!

確かに伝わってくる海美の体温を感じながら、俺は海沿いの道を過ぎ、脇道を駆け上がった。


『誠司くんッ、急にどうしたの?』


海美の息遣いが背中に伝わる。


「ここで…ちょっと待ってくれない?」


『えっ?うん…』


俺は大きな切り株の上に腰を下ろすと、海美の腕を引き寄せた。


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