俺のレシピ
「おい!こんなん違ぇだろっ!!」
それと同時に、振り向こうとしたタクヤの身体がバランスを崩し俺が肩へと置いた腕を軸にクルリと宙を舞った。
ストップモーションアニメのように進む時間の中、タクヤは目を見開き俺を見つめていた。
次の瞬間、魔法が解けたように世界が動き出した。
鈍い音と共に目の前にいた筈のタクヤの姿が消えた。
"キャーっ!!!"
下の方から聞こえた女子の甲高い声の方向に目を向けた時…俺は全身の骨が消えてしまったような感覚になりその場へ崩れ落ちた。
「…タクヤは頭を打って意識不明の重体。そんで先生達からは犯人扱いで事情聴取みたいなこと毎日されてさ。俺の担任なんて"この子が突発的に起こしてしまった問題"なんて言って、私は関係ないオーラばんばんでさっ…クラスの奴らは俺の事"殺人犯"みたいな目で見てくるし、あん時は本当に…あ、ごめんななんか。こんな暗い話にする予定じゃ無かったんだけどなぁ、わりっ!!」
『…それで?それからどうしたの?そっからクラスの奴らと今まで通りになれたわけじゃないんでしょ??』
「あ、あぁ。散々だったよ。"ヒト殺し"だの"近づくと殺される"だの…だから俺はやめたんだ。」
『…なにを?』
「友達を作る事。要するに逃げたんだ、俺。学校も行かずに家に引きこもって毎日同じ景色見てさ。」
『だからなの?』
「なにが?」
『だからさっき返事しなかったのかってコトだよ!』
美雨は真剣な眼差しで俺の服を掴んだ。
そんな過去の事は俺の個人の問題であって美雨は関係ない。それも分かってはいるけど…
「ごめん。関係ないのは分かってるんだけど…なんかさ、ダサいけど怖いんだよ。"友達"って位置付けが確定しちゃうのがさ。」
そう、海美が"友達"と言ってくれた時から。今まで逃げてきた分、その存在ができてしまった事で失うのが怖くなってしまったんだ俺は。
大きな溜息が聞こえたかと思うと、美雨はスゥーっと息を吸い込んだ。




