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【五話 悪魔の森の仔~黒フリル宣言「お掃除の時間です」後半戦~】

「あ、マーリン君起きているみたいですよ」(小声)

「ほほう!これはこれは一体どういう事か?坊や初めて完全にが()に出ておる!」(小声)

「?マーリン君はまだ部屋の中にいますよ?」(小声)


マーリンの世話係第二号に任命されたウーサーと、その第一号自称ブリテンで一番チャーミング&プリチー茶目っ気おじじことエムリスは、現在マーリンの部屋のドアを少しだけ開けて、その隙間から彼の様子を伺っていた。


因みにマーリンを縛っていた鎖は昨日のあの時から解いてあるよ。

ウーサー曰く「もうあの【()()()()】は出てこないから大丈夫です」との事。


そんな二人をマーリンが暴れた時に直ぐに抑えられる様、見張り役をしている騎士三人は少し離れた所で二人の様子を見ているが、


「ベイリンさんあのお二人は・・・ウーサー様とエムリス様、ですよね?」

「そうだ」

「あの、何であんな怪しい格好しているんでしょうか?」


頭から黒の三角巾・変な形のメガネ~(略)そして一番目立つ黒いフリルなエプロン姿の二人(エムリスも強制的に同じ(エプロンは白のフリフリ)格好になった)が一人の子供の部屋を気付かれない様に除いている姿。


・・・・・うん、どっからどう見ても奴等は不審者にしか見えんわ。


一応見張りの騎士三人は(上司だけ)、二人である事に気付いて捕縛はせずちゃんと通した。かなりドン引きしていたが。


「戦装束、だそうだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「いくさしょうぞく?」

「そうだ」

「?????」

「発狂促進装置的な格好の間違いでは?」


彼の言う事は最もである。

騎士達の疑問はと不安が更に深くなって行く中、それを作った原因である二人は作戦の最終確認をする。


「いいですか、エムリスさんは風の魔術でドアと部屋の窓をバーンと開けて、換気をよくします」(小声)

「その後にウーサー様が例の“アレ”を使って坊やを眠らせる、ですな?」(小声)

「はい、そこからが本当の勝負です!!マーリン君が寝ている間に丁寧に克迅速に、この汚部屋を綺麗清潔にします!」(小声)



・・・・・本当にそんな作戦が上手く行くのかは疑問に思うよね?このまま話を進めれば分かるさ。

うん?なんか馬鹿馬鹿しい展開になりそうだから、そこだけ略して話せ?

やだよ。ここまで来たんだから話すに決まってんでしょ。聞きたくないなんて我が儘言わないの!ってか道連れにしてやる!

ほら!続き話すよ!



「では行きますよ。3,2,1!」

「ホイッと!!」



ビュオオオオオオオオオオッ



ウーサーの合図でエムリスの風の魔術が発動。

魔術で生み出された風は、バババンッと音を立てドアから窓へと次々に開けていく。


「!!!!???(何だっ!?)」


風の魔術で開け放たれた窓から差し込んできた火の光。

暗闇に慣れきってしまったマーリンはあまりの眩しさに思わず目を瞑ってしまった。

しかし、目を瞑っても光は難なく薄い目蓋を貫通し侵入してくる。


「(っクソが!!!)」


強制的に現実に引き戻された挙げ句、視界を奪われ何の対策も出来なかった自身に苛立つ。

背を預けていた壁を利用し、なんとか立ち上がる。

そして風を発生させた魔力の気配の方に身体を向けて身構えた。


「おはようございます、マーリン君!今日は!とても!良いお掃除日和ですねっ!!」

「っ!?(この声はっ!)」


そう、あの【灰色の竜】を視る直前に確かに聞いた。

あの時は意識は殆ど朧気だったが、何故か「あっ、まず・・・・・」っていう台詞だけは何となく耳に残っていたのだ。

ただ、何が「あっ、まず・・・・・」だったのかは分からなかったが。

この声のモノがあの『ドコカ』の主のハズだ!

根拠も証拠もないが自分の直感がそう告げている。

マーリンは直ぐに自身の目にありったけの魔力を注ぎ、視界を回復させ、赤紫色の目を開くそして、目に映ったのは・・・・・







「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」







上から黒の三角巾を頭と口に巻き、透明なガラスで出来た現代で言うゴーグル見たいなメガネを装着。

両手両足には騎士達が使う厚手の頑丈そうな手袋とブーツ。

そして、一番目を引いたのは動きやすそうなラフな私服の上には、少し大きめの黒い


・・・・・・・・・沢山のフリルが付いた片方黒、もう片方白くて可愛いエプロン、を着た不審者二名だった。


これは流石のマーリンの全意識が停止してしまうのも無理ない。

いや、普通の思考回路持っている人は混乱するか、思考停止するかのどちらかが普通だわ。どうやら彼は後者のようだ。


可哀想に・・・・・真実を確かめようと頑張って視界を回復させてまで見たモノが、こんな怪しさバリバリの未知な格好をした二人なんだからさ。

コント耐性と適応力が無い者は脳の処理が追い付かず、頭ん中ショートしちゃうよ。(ちなみにこの城にいる人々の殆どはどんな下らない事が起ころうとスルーできる耐性・適応レベルはカンストしている)


「むむ!マーリン君が立ったまま動きません。どうしたのでしょうか?」

「ふむ。おそらく儂等の(100%ヤバイ不審者の)格好に驚いて固まっているのでしょうな」

(((うんうん)))

「これでですか?何故??」


気付かないのは天然灰色のアホ(ウーサー)だけ。



* * * * *



今、目の前に今まで見たことの無い不気味な格好のヒトの形の何か。

棒状の物を背に担いでるただのチビと髭のチビが二体いる。


その内の一人は多分、もしかしたら、間違っていて欲しいが、俺が確かめようとした声の主だ。本当に俺の勘違いであって欲しいがっ!


だが、現実は残酷だ。

内容は右から左へ出ているが、髭じゃないチビの声は「あっ、まず・・・・・」と言った声と一緒だった。確信したくは無いがコイツがあの『中』の主だ!クソがっ!!!!


更に分かってしまった残酷な事実。

髭じゃないチビの掛けている、変な眼鏡が覆う目の色が、最初に見たのと『どこか』で視た【竜】の目と同じ・・・・・・・・・・・・キレイな、《色》。


【竜】と同じ


・・・キレイな


・・・・・・・・・あの


・・・・・・・・・・・・・・同じ


・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



マーリンは“現実逃避”を覚えた!

マーリンの“現実逃避”のレベルが10上がった!!

* * * * *



マーリンが習得したばかりの現実逃避をしている間、彼の状態に全く気付いていない原因の最凶世話係の二人は、彼に更なる追い討ちをかけた。


「ウーサー様これは好機ですぞ。今こそ“アレ”を使う時!!!」

「確かに!と言う訳で、喰らいなさいマーリン君っ!!!!」


エムリスの言葉を合図にウーサーは持って来た白い筒の中の

モノを取り出した!

未知で不気味なモノをモロに見てしまった事、その内の一人があの【竜】のいた『中』の主だと分かってしまったショックから、まだ抜け出せずに固まったままのマーリンに向かって突きつけた。







「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」







マーリン、本日三度目の長い沈黙。

いつでもマーリンが暴走した時に対処出来るように、ドアの近くで見張っていた騎士達は、


「・・・・・・・・・・あの・・・、ベイリン隊長。ウーサー様の持っている“アレ”って、もしかしなくても“アレ”ですよね?」

「ああ、“アレ”だな」

「そうですね。“アレ”ですね。自分もよくが摘んで遊んでましたよ。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・猫と」



ウーサーのてにあるそれは、細くて長い茎の先に10㎝位の立派なふさふさの花穂のある草。

皆ご存じの有名なその草の名は



"ネ  コ  ジャ  ラ  シ"



そう、猫の玩具でもその形を用いられているし、実際それで猫と遊べる草。


・・・・・・分かっているよ。《キミ》が何を言いたいか。

何故そこでネコジャラシなんだよっ!?

って、言いたいのは分かる。

その疑問(ツッコミ)を今から“君”に何でそうなっちゃたのかをその結果を含め、ちゃんと説明させて欲しい。


まず、ネコジャラシの件はこの前に話したマーリンとウーサーが対面する前に、エムリスが言った言葉を思い出してごらんよ。

そう、彼はウーサーにこう言ったよね。




『いやぁ、最近森で()()を拾ったのですがのぉ』




ね?これ言ったよね?このジジィ、マーリンの事「猫」と言ったよね?

その言葉に何を思い付いたのか、ウーサーは世話係に任命された次の朝、中庭に生えていた新鮮で上質なネコジャラシを摘んで来たのさ。

これならマーリンを100%抑えられると自信満々に言って・・・・・。


そして今、彼の目の前で「にゃー、子猫のマーリン君。怖くないですよーおいでー」と言いながらふりふりと振っている。



* * * * *



「にゃーにゃにゃにゃー。ほーら、子猫のマーリン君。怖くにゃいですよーおいでー」



一気に視界が現実に戻る。

相変わらず無い不気味な格好のヒトの形の何かが目の前にいる。

そして髭じゃないチビが持っている物が緑の草、ネコジャラシ。


それを振りながらコイツは何をしている?

いや、それよりもさっき何つった?


子猫、小さい。子ネコ、小さい。こねこ=小さい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チビ




ブチッ





「誰が子猫(チビ)だぁっ!!!!

ブッ殺すぞテメェェッ!!!!!!」






* * * * *



「しゃべった!?発狂小僧がしゃべった!?」

「ああ、普通の人語だったな」

「そうですね。ですが、初めて発した言葉があれなのは如何なものかと・・・・・」

「ほっほっほっ♪初めて喋った言葉はどうであれ、これで一歩前進じゃな!」

「「「・・・・・・・・・」」」


いつの間にか騎士三人の会話にちゃっかり入っているエムリス。

そんな彼等の目の前では、ネコジャラシを軽やかにそして匠に振り回すウーサーと、何故かネコジャラシに異常に殺意の籠った攻撃をするマーリンによる激しい攻防戦が繰り広げられている。


「むっ!やはり反応しましたね!エムリスさんの言った通り猫っぽいですね、貴方は!!」

「フシャアアァァァアア!!!!」


「あ、猫だ」

「猫だな」

「猫じゃな」

「怒り狂った猫ですけど。て言うか、せっかく人語喋ったのに人外語(猫)に戻ってしまいましたね」


二人のどう見てもジャレ合っている様にしか見えない、戦いが始まり十分位経過した。

先に変化があったのはマーリンだった。

始めは元気良く、シャー!フシャ!と四人の言う通り猫のような雄叫び(?)を上げながらネコジャラシを追っ掛けていたが、時間が立つに連れ段々動きが鈍くなっていった。

怒りで爛々と燃えていた赤紫の瞳も、徐々に小さくなり・・・・・。


「何か発狂猫小僧フラフラしてませんか?」

「フラフラしてるだけではない、目の焦点が合ってないな」

「頭が時折カックン、カックンしてますね。しかもあの状態でまだネコジャラシ、攻撃しようとしてますよ」

「ふむ、ウーサー様が講じた策が上手く働いているようじゃのう。しかし、坊やのあのネコジャラシに対する執念はなんじゃろうなぁ。親の仇を取るかの如く、並々ならぬものを感じるんじゃが・・・・・」


眠気が既に全身を支配していたんだろう、とうとうマーリンは膝をついてしまった。


「う"ぅ~・・・・・・っ」


手だけはネコジャラシを頑張って追おうとして動いてたけど・・・・・。


対してまだまだ動けるウーサーは、マーリンが動けなくなるのを待っていた!とばかりに、ただネコジャラシを彼の目の前で振っていた手を止めた。



「そろそろ決めましょうか!これで!終わりです!!」



ネコジャラシをマーリンの視界から遠ざけたかと思ったら再度彼の顔に近づけ─────






ピト、、、コショコショコショコショコショコショ






鼻の下にネコジャラシを当て、コショコショしだした。



「はっ、はっ!・・・・ぺくちっ!!」



マーリンは可愛いくしゃみを最後に、彼は力尽き眠った・・・・・・・。

部屋にはマーリンの寝息以外聞こえない。


「エエエエェェ!?!?コショコショで止め刺された!?

滅茶苦茶ダセェ!!??」

「違うぞ。彼はコショコショではなく「ぺくちっ!」で自滅したんだ。・・・・可哀想な終りだったが」

「自分のくしゃみの反動が、最後の気力を奪ってしまった様ですね。間抜けな負け方ですが」

「くしゃみで自滅、とはなんとも気の抜けた阿呆な終りじゃが、面白かったし坊やも大人しくなった!うむ、上々の結果じゃのぅ♪」

「「「・・・・・・・・・・」」」


「ふぅ・・・・・・激しい戦いでした!」

「いや、あれ戦いじゃなくてただのジャレ合いでしょっ!?

何で、「存分に戦った!!」感出してんですか!?」


今らさ名前を出すが、満足げに汗を拭うウーサーにツッコミを入れる騎士三人の中で若い騎士のブルーノ。

しかし───、


「確かに激戦だった」

「ウーサー様、見事なネコジャラシ捌きでした」

「良いもん見させて貰いましたぞい」

「あれ?!誰も疑問に思って無い??俺が可笑しいの!?俺だけが変なのっ!?!?」


安心しろ君の言うことは正しいし頭もまともだ。

でも不幸な事にこの場には彼みたいな正常な思考回路を持つ者はいない。

そう、彼以外はどんなふざけた事にも動じないオリハルコン並のメンタルを持つ者、又は何本がネジのブッ飛んだ愉快にイカれた怪物しかいないのだ。


唯一賛同してくれる者は『向こう』で見守っている【ナマモノ】だけ。

だが、悲しいかな彼がそんなの知るよしも無い・・・・・。


ウーサーの策(?)でマーリンは発狂する事なく眠ったが、やはりどういう仕掛けで眠ったのかが気になる。そんな皆を代表して、常に冷静にツッコミとボケを使い分けていた騎士の一人、ディナダンだった。


「それで?ウーサー様、どうやって彼を眠らせたのですか?

失礼ですが、エムリス様や妖精達の術ですら眠らせられなかったのに」


彼の言う通り、始めは暴れるマーリンを抑える為、彼等の魔術で眠らせようとしたのだが、“何か”が妨害して出来なかったのだ。

しかし、ウーサーの持って来たネコジャラシ(コショコショ)で彼は眠った。


因みにウーサーは魔術は使えないよ。

あー・・・・いや、一応使えるんだけど、あれはちょっとねぇ・・・・。

まぁ、それはまた後日話そう。今はどうやってマーリンを眠らせたかだね。


「別に特殊な事はしてませんよ。ただ、粉状の睡眠薬を花穂にまぶしたネコジャラシをマーリン君に顔近くに降ってただけですから」

「え?それだけですか?」

「そうです」

「まじっすか!」

「マジじゃ。そのネコジャラシを確認したが、ごく普通のネコジャラシじゃったよ。勿論それに付着している薬も害の無い睡眠薬じゃった」

「はぁ・・・・・」


説明を聞いた騎士達は余り納得のいった様子だ。

そりゃそうだろう。あんなに苦労してマーリンを眠らせるため、エムリスも立ち会った騎士達もあれこれ頑張っていたのに、睡眠薬をまぶした只のネコジャラシで簡単に眠ってしまうなんて、すんなり納得はできないよねぇ。

そんな彼等に代弁するように、エムリスが問う。


「して?ウーサー様、本当にどうして坊やはこうもポックリと眠ったのでしょうか?正直ウーサー様のネコジャラシで安眠計画が成功するとは思っていませんでしたからのぅ」

「ポックリって死んでませんよっ!?」

「「ぺくちっ!!」でだな」

「ベイリン隊長それ気に入ったんですか?」


「うーん。本当に大したことはしていないのですが・・・あえて言うのならただ、()()()()()が良かっただけですよ。

今『外』に出ているのは()()()()()()()()です。だから、この計画が成功したんです。

今までダメだったのは、『外』に出ていたのが【ゲテモノ】だったからでしょう。

【ゲテモノ】の時にこのネコジャラシと睡眠薬を使っても効果が無かったでしょうが・・・・・」


と、表向きはこう言っているが本当は【ゲテモノ】だったら、人には決して見せられない残虐な処置が施されていただろう。

・・・・・マジで最初に切り離してくれて良かったと心から安堵したよと後に【ナマモノ】は語った。


「【ゲテモノ】、ですか?」

「【ゲテモノ】は【ゲテモノ】です。それ以外のナニモノでもありません。ああ、あとアレはもう出てませんから、エムリスさんの術が通ると思いますよ。今のの所はですけど」


【ゲテモノ】に関してはそれ以上説明をしなかった。

何せ彼がその単語を言う度嫌そうな表情をしていたから、相当話すのが嫌だったのだろうね。

それを察してか彼等はそれ以上ウーサーに追求はしなかった。


「ふむ、と言うことは()()()()なら、そこまで危険ではないのですな?」

「はい。会話もちゃんと出来ましたし。警戒レベルも下げても良いと思いますよ」


「いや、あれ全然会話じゃなかったっすよ」

「ほぼ猫語だったハズですが・・・・・」

「多分ウーサー様は猫が分かる人なのだろう。動物や妖精はてまた悪霊(だけは肉体言語)と普通に会話していると噂されているからな」

「悪霊(肉体言語)・・・・・」

「悪霊(肉たry)・・・・うっ!頭が!」


※ベイリン隊長以外若い二人は不幸な事に、あのウーサーの最初に参加した訓練(二話参照)に監督として引率で来ていたので見てしまったのだった!



「あ!でもメイドさんや他の女性はダメですよ。これはマーリン君のガチのトラウマの様ですから!」

「確かにあのトラウマは坊やのモノでしたからのぅ。これだけは引き続き注意しておきましょう」


「では、おしゃべりは終りにしましょう。目的の一つであるマーリン君は眠らせました!

次はこの部屋の大掃除です!!これはマーリン君よりも長い戦いになりますので心して掛かってくださいね!!」


いつの間にか装備をネコジャラシから箒と塵取りへ、持ち変えたウーサー。

その目は眼鏡越しでも分かるくらい闘志に燃えていた。


「そう言えばウーサー様達、掃除しに来たんでしたっけ?」

「あの格好とネコジャラシとかでそれをスッカリ忘れてました」

「では、我々は邪魔になら無い様、マーリンを別の部屋に移して終わるまで待機しよう」


と部屋を後にしようと踵を返した時─────



「何を言っているのですか?ベイリン隊長さん達も掃除するんですよ?」



後ろにウーサーがいた。今彼とエムリスが身に付けている戦装束&装備品を三人分を持って・・・・・。


「「「えっ??」」」

「マーリン君は妖精さん達に頼んで運んで貰います。

貴方達はこれに着替えて一緒にお掃除です。

見ての通りこの荒れ放題の汚部屋を私とエムリスさんだけで一日で終わらせるのは無理なのは一目で分かりますよね?」

「ええっと、ウーサー様、俺達マーリンの監視を「マーリン君なら今日は一日寝てますから大丈夫です。私が保証します」・・・・・」

「見て分かる通り、小さな家具だけではなく大きな家具まで壊れてます。それを体型の小さい私とエムリスさん二人だけで一日で外に移動させるのは、どう考えても無理ですよね?」

「「「・・・はい」」」


エムリスの魔術があるじゃん、とは、とてもとても言えなかった。

何故なら笑顔のウーサーが纏っている黒くないオーラには、とてもとても逆らえない圧があったからだ。


「そして私が今手に持っている|これ《戦装束&装備品》三人分を差し出す意味、分かりますよね?」

「「「・・・・・・はい」」」


ウーサーの蒼い目とオーラは語る。「逃がしませんよ」、と・・・・・。


「では!着替えて一緒にお掃除です!」

「「「・・・・・・・・・・・・・はい」」」


ここに新たにお掃除仲間が三人追加された。




「あと、エムリスさん逃げちゃダメですよ?」

「(ギクッ!?)」

「さあ、張り切ってお掃除しますよー!」



十分後、マーリンの部屋の前を通った者達が、どう見ても不審者にしか見えない怪しい格好をした五人組が、彼の部屋を黙々と掃除しているのを目撃した。

その内、背の高い騎士だと思われる三人は死んだ目をしながら掃除していたそうだ・・・・・。

いつまで続くか分からないおまけ




訓練中の兄




兄「(・・・・・ああは言ったけど、いくらウーサーでも、得体の知れない狂人相手は流石に不味いかも知れない。やっぱり一緒に言った方がよかったか?)」




騎士A「おい!さっき聞いたんだけどウーサー様が、あの森から来た狂人を倒したらしいぞ!」




騎士B「はぁ!?ウーサー様まだ10歳だろ!!どうやって倒したんだよ!?」




兄「(は?倒した?アイツ掃除しに行ったんじゃないのか?)」




騎士A「聞いた話だと、フリルのエプロンで隙を作って、ネコジャラシで攻撃。んで、「ペクチっ」でトドメ刺したんだと」




騎士B「成る程、全然分からん」




兄「(本っっっっっ当に何しに行ったんだアイツ!!?)」




真相が分かるまで兄は混乱していたらしい。

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