【四話 悪魔の森の仔~黒フリル宣言「お掃除の時間です!」前半戦~】
1/20ちょっとだけ。
内容加筆訂正しました。
今更ですが嫌な感じの表現が少しありますので、苦手な方は読むの注意してください。
例の衝撃の事件から翌日、ウーサーは父王に呼ばれ謁見の間に来ていた。
何でいきなり呼び出されたかって?そんなん察しの良い子は答えなくても分かるかもしれない。
「今日からエムリスと一緒にアレ等の世話するように」
「共に頑張りましょうぞ、ウーサー様!」
「んん??」
前回の話でも似たようなパターンあったわー・・・・・。
こうなった経緯を説明をするけど、エムリスがあの“マーリンブラックオーラ・で・気絶事件”の報告をたウーサーの父王にしやがった。
次いでに自分一人ではもう限界!だから一人世話係と追加して欲しいの!
な感じでマーリンを黒いオーラで気絶させた(事実は違う)ウーサーを立候補。
普通だったら十歳の幼い我が子を、子供とはいえ大の大人を容易く大怪我を負わせる程の狂人の所に放り込めるハズが・・・・・・・・あった。
何せ三年眠り続けていた我が子を、轟轟荒れ狂って流れる川にポイ捨てしようとした鬼畜な男。
我欲優先で過酷で、厳しく、辛い、なんかもう色々無茶苦茶な訓練に五歳の我がに受けさせた腹黒父だ。
だから今回も普通に、「ちょっと近くの店で飲み物買って来て」的な軽い感覚で我が息子に無茶な命令をしてきたのだった。
しかも、マーリンに関してロクに説明もせずに、だ。
・・・・・この野郎|《王》本当に自分の息子愛してんのか?
そんでもって、肝心の本人はというと・・・・・
「分かりました!あ、まずはあの部屋のお掃除してから、一般教養を叩き込むって事で良いですか!?」
即OK。
・・・・・というかコイツに一般教養なんて高度な事を教えられるのだろうか?
否!悪霊を素手で平気で掴み洗濯浄化するのが普通と思っているヤツが一般教など教えられるハズが無いっ!!
「叩き込む」って言っている時点でもう、物理で教え込んでいきますと言っている様なもんだもん!
あと心なしかコイツ、【アヴァロン】殺すと言った時よりもやる気に満ちているのは気のせいかなぁ?気のせいじゃないといいなぁ?
なんか色々心配になってきた・・・・・。
その様子を始終視ていた【ナマモノ】。
今度『こっち』で会った時、絶対に本来の目的の確認をせねば、と決意したとか・・・・・。
* * * * *
王からマーリンの世話係に任命された次の日、早速ウーサーは行動に出たのだが・・・・・、
「ウーサー様。今日は随分面白そうな格好をしておりますな」
「面白そうな格好ではありません。これは戦場に行く為の装備であり戦装束です」
「洗浄?装備??戦装束とな???」
エムリスが疑問符多数付けるのも無理はない。
何故ならウーサーの今の格好は、上から黒い三角巾を一枚頭に巻き、もう一枚は口全体を覆うように巻いている。
目には異物が入らない様にか、透明なガラスで出来た現代で言うゴーグル見たいなメガネを装着。
両手両足には騎士達が使う厚手の頑丈そうな手袋とブーツ。
いつも着ている動きやすいラフな私服の上には、侍女の誰かから借りたのだろう、少し大きめの黒い・・・・・フリル付のエプロン。そのフリルで可愛らしいポケットには謎の白い筒が入っているのがチラリと見えた。
何故黒いのにしたの?何て私はツッコまないぞ。
(ウーサー様にエプロン渡した侍女は、下心満載でワザと渡した可能性が高いのぅ。そんでもって犯人は100%副侍女長じゃな絶対に!!)
ここで働く侍女の一部はちょっと変わっていて、ウーサーにやたら可愛い服とかを着せようとするのだ。その筆頭が副侍女長だったりする。
後で聞いたらやっぱりエムリスの推理通り、エプロンも副侍女長が着せたみたいから、素直に着てくれる事を利用しやったと犯行を自供した。
彼女の目的は達成したが、ウーサーの格好からして目論み通りにはいかなかったが・・・・。
だって、もうどこからどう見ても一部除いては殆ど戦装束とは程遠い、むしろ不審者と勘違いされそうな格好だ。
「だって、これから荒れ放題のマーリン君の部屋に行くんですかよ!装備はきちんとしないといけません!と騎士団長がいつも言ってますからね。
昨日は暗くてどれくらいの荒れ具合だったか把握出来ませんでしたが、空気の淀みがありました。
あと!異臭もそれなりに酷かったので、相当汚いとみます!!」
「ああ、なるぼど。要するにこれからマーリン坊やの汚部屋を掃除しに行くと言う事ですかのぅ(そう言えば、連れてきてから全っっっっ然掃除しておらんかった)」
「その通りです!」
ウーサーの奇抜な格好のせいで見落としていたが、彼の右手には箒、左手にちりとり腰には紐が巻かれそこに雑巾入りのバケツが下げてあり、背中にははたきが───お掃除道具の定番の物が装備されている。
「その変な格好をする目的は分かりましたが、肝心のマーリン坊やはどうするのですかな?
あの暴れん坊の事です、いくらウーサー様でもそう簡単に掃除させるとは思いませんぞ。下手をしたら発狂待った無し間違いないですじゃ」
「(変?)大丈夫です。彼が発狂しない様にちゃんと対策も考えています」
「ほほう!もしや“ブラックモード”になって坊やの発狂を止めるのですかのぅ?」
「違いますよ。と言うか何です?“ブラックモード”って??」
※“ブラックモード”の説明は、三話の前半部分にちょこっとあるから探してそこ読んでね!
「エムリスさんの言う“ブラックモード”?ではなくてですね、コレを使ってまずマーリン君を大人しくさせます」
箒とちりとりを一旦床に置き、フリルエプロンのポケットに入っていた白い筒を手に取りエムリスに見せる。
中身は分からないが、それは魔力も加護も何も無い只の筒。
「その筒の中身は何が入っておるのですか?」
「それはですね・・・・・」
いたずらっぽい笑顔を見せた後、白い筒の蓋を開け中の物を取り出してエムリスに見せた。
「むむぅ?それは皆の者も知っている“アレ”ですかな?」
ウーサーが見せた物。それはエムリスもよく知っている物で、そこら辺に普通に沢山あるもの。
エムリスは聞かずにはいられなかった。だって、そんな物で本当にあのマーリンを大人しく出来るとは到底思えなかったから。
しかし、それ以上に何かとても面白いものが見れる予感が、彼の興味の大半を占めていたが。
「はい、皆さんもご存じのモノです。それで“コレ”を使ってマーリン君を─────」
説明を聞くにつれ、エムリスの表情はそれはもう極上の餌にありつけた、子犬のようにキラキラととてもとても輝いてた。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
少年達は生まれて直ぐに『■■■■■』に連れていかれ、其処でバラバラに刻まれ、強引に繋げられ、膨大な“知識”とおぞましい【異物】を捩じ込まれた。
その【異物】に彼らはその深くて、暗くて、痛くて、辛いモノに造り変えられた自身の『ドコカ』に閉じ込められ毎日の様に拷問・凌辱された。
その様子を下卑た嗤い声をあげながら、愉しそうに見ている【奴ら】の顔が脳裏にこびりついて今も離れない。
最初は抵抗もしたし、逃げようとはした。
しかしやはり、向こうの方が圧倒的に力があり、抵抗も無駄に終わり逃亡も失敗した。
そうなってしまうのは当たり前だろう。何せ彼等は生まれて間もない赤子だったのだ。
幾ら“知識”を与えられ、無理矢理身体を成長させられていても何の力も持たない彼等に出来るハズもない。
ある時何の気まぐれか【異物】は一度だけ『外』に放り出されたが、それは自分達を絶望に追いやる為。
『森』で過ごした穏やかな時間を知り、それを壊された時の少年らの絶望を観て嗤う為だった。
それに味を占めたのか【異物】の残虐な蹂躙は更に激しさを増した。
ある時は極稀に『外』に出され死にかけた。
ある時は『夢』を渡らされ其処でおぞましい事をやらされたり、酷い拷問も受ける時もあった。
また終わりの無い地獄の様な日々。
しかし、その地獄は僅か数日で呆気なく崩壊した────。
* * * * *
いつもと同じ様に俺の方は【異物】の一部に黒と白しか映さない『外』の世界を視せられながら犯されていた。
片割れは別の場所に連れていかれた様で、恐らく片割れも俺と同じ様に【異物】の一部にされているのだろう。
と、ぼんやり【異物】に犯されながら思っていると、急に【異物】気持ち悪い動きがピタリと止まり、次の瞬間そのままの状態で『ドコカ』の奥に移動した。
その時の【異物】は何かに酷く怯えている様に見えて驚いた。
奴が逃げた所に俺と同じ事をされていた片割れがいた。
片割れを犯していたその【異物】も何かに怯えている様子だった。
「すみませーん。誰かいますか?」
何とも気の抜けた緊張感の無い声が耳に入ってきた。
思わず、まだ『外』に繋がったままだった視界をそっちに向けると、
───────目の前にキレイな《色》があった
その色は自分がこの世界に誕生して初めて見たキレイな《色》。
黒と白。二色の色しか見た事が無かった彼にとって、その《色》は■■■の様に見えた。
しかし、その《色》を見れたのは一瞬だった。
何故ならその《色》と目が合った瞬間、少年達の意識が何かによって何かに引きずり込まれたからだ。
同時に「あっ、まず・・・・・」と、聞こえた様な気がしたが・・・・・。
意識が浮上すると、あの吐き気がする気持ち悪い『ドコカ』ではなく、別の場所にいた。
俺達はまた【異物】の気まぐれで、酷い拷問が始まるかも知れないという恐怖で眼を閉じてしまうのと同時だった。
───ザンッと何かに切られる様な感覚
響き渡るおぞましく汚ならしい声の断末魔
【異物】が自分達から何かに引きずられる様に離れていく気配
耳に痛いくらいの静寂
近くで微かに動く片割れの気配
そして、
静かにそこにいる強大な《ナニカ》の存在。
何が起きた?
眼を瞑ってしまったから、この一瞬で起こった事が全く分からない。
そもそもこんな事は今まで無かった。
【異物】の新たな拷問或いは“遊び”なのだろうか?
でもそれ以上何もしてこない。
何が起こっているのか分からないから、俺達は恐々と眼を開け視た。
─────────そこに、一体の【竜】がいた
【竜】は強固な檻に入れられ、───あの無理矢理入れられた知識の一つにあった色───灰色の身体には幾重もの鎖が巻かれていた。
そんな厳重な檻の中に囚われているのに、【竜】は何の抵抗する素振りを見せない。
もしかしたら少年達と同じく抵抗しても無駄に終わってしまうのから、もう全てを諦めてしまっているのかそのままじっと動かなかった。
ただじっと自分達を見つめていた。
先刻見たあのキレイな同じ《色》の瞳で·····。
その色に魅せられたせいなのか、少年達は目の前の【竜】に恐怖は感じなかった。
寧ろもっとよく視てみたいと自ら近づいて行った。
檻の中の【竜】は何もしない。
距離を縮めてく途中ふと、鎖だけではなく何か管の様な物が【竜】の身体の所々に深く付き刺さっているのに気が付いた。
その管は【竜】から何かを吸い上げているようだった。
吸い上げられた何かは透明な光を放ち、緩やかに管の中を流れていく。
【竜】の身体に刺さる管は数百本しかないが、檻の外に進むにつれまるで植物の根の様に、何千何万以上も枝分かれしていた。
ソレが流れて行く先に何があるのかは解らない、だから確認して見ようと【竜】に更に近づこうとした。
────これ以上はお見せできません。貴方達もこれ以上■■■■■■はないでしょう?────
突然彼等の脳内に言葉の様な音が響く。
同時に少年達は【竜】の『どこか』から弾き出され、そのまま気を失った。
次に少年達が見た世界はあの森ではなく、あの【竜】のいた檻でもない。其所は見慣れない石造りの部屋。
【竜】の事で頭が一杯だったせいで気付くのが遅れたが、俺達に捩じ込まれていた【異物】がいつの間にかいなくなっていた。
* * * * *
【灰色の竜】から追い出され次に目覚めたが、彼の世界は相変わらず禍々しい黒と不気味に蠢く白の世界を映していた。
「(・・・・・きもちわりぃ)」
今、自分は森ではなく知らない所にいる。
広いのか狭いのか分からないが四角い空間。
『中』程ではないが薄暗く、血や汚物が放つ異臭で空気が大分澱んでいたが、それに慣れすぎてしまったせいか特に気にはならない。
というか、心底どうでもいい。
あの【灰色の竜】のいる誰かの『ドコカ』から弾き出された反動がまだ残り、身体も精神もグラグラ大きく揺れ、とにかく気持ち悪くて仕方がない。
それでも彼は必死で考える。
「(ここは何処だ?❲あの『場所』何だったのだろう?❳
あの『森』はどうなった?❲【竜】は何をした?❳
何で俺は『外』に出ている?❲何で追い出したのだろう?❳
【アイツ】はどうなった?❲もう一度【灰色の竜】を視れないのだろうか?❳)」
久々に落ち着いて思考を巡らせても、更に混乱する。
あと片方がずっと【竜】の事ばかりでうるさい。
確かに気になって仕方無いのは分かる。
自分も何度か竜を見たが、あの【竜】だけは見てきたどの竜とも違っていたから。
あの眼もそうだがそこではない。
何が何処が違うのかは説明しづらい。
何と言うのだろうか。他の竜より気配が異質だった。
もしかしたらそれであの【竜】は檻の中に捕らわれていたのだろうか?
* * * * *
マーリンの様子を『別の場所』で監視していた【はじめからいたモノ】は呟く。
―――――――嗚呼・・・これはいけないね。
彼も【生贄竜】のあの“蒼”をキレイと感じてしまったようだ。
【私】の様な存在はいいとして、彼の【蒼】に魅入ってしまっいるあの子はもう・・・・・。
と、その存在は最後まで言わず代わりに、諦めた様な深いため息を静かに吐いた。
* * * * *
その【蒼】に魅せられてしまった少年達はもう一度【生贄竜】に会いたいと小さく願っていた。
その願いは幸か不幸か、再会の望みはある意味直ぐに叶えられるんだ。
何故かって?答えは実に簡単だ。
自分を件の【灰色の竜】の元へ引きずり込んだその犯人、と言うか【生贄竜】本人が、
エムリスと一緒に今ドアの隙間から覗いて見ていたんだから・・・・・。
忍び寄る二つのヤバイ影。
マーリンの運命は如何に?!
後半戦は近い内に投稿します。
そして、いつまで続くか分からないおまけ
ウーサー「あっ、兄さん!丁度良かったです。私今日からマーリン君の世話係になったので、暫く訓練に出られないと団長さんに伝えて頂けますか?」
兄「は?世話係?調教係じゃなくて?」
ウーサー「何で調教です?」
兄「間違えた。取り敢えず大丈夫なのか?聞いた話だとアイツかなりヤバイんだろ?」
ウーサー「それに関しては問題ありません。今の彼は“人間”ですから」
兄「“人間”?」