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二.五話 紫おじじの授業~悪魔の話~

※注意


突拍子もなく出現する「○.五話」の話は、ほぼウーサーと【ナマモノ】さんの或いは別の誰かの会話だけの文になっています。

これは二人の大事な授業の会話の話し。


次の物語に出てくる《悪魔》について。


まぁ、この二人の会話だとちょっと脱線しちゃうかもだけど、


今回は割と大切なこと言ってるから、これは聞いといた方がお薦めだ。


どうする?




* * * * *




床の所々に、乱雑に積み上げられた本の山々。

机にも本の山と、色とりどりの薬品が入った試験管と何に使うか分からない道具が置かれている。あと食べかけの甘ったるそうなお菓子。

色々な物があちこち置かれてごちゃごちゃな部屋は、不思議なことに埃とカビ一つ無いし匂いもしない。

多分この部屋の主が魔術で、それだけ除去しているのだろう。


この部屋を毎回訪れる、部屋の主の生徒はついでに片付けてない本や道具も整頓すればいいのにと思っているのだった。


「さて、ウーサー様。今日の授業は講義のみと致しますのじゃ」


「え?魔力の制御ではないのですか?あ!魔術の授業ですか?」


「いいえ、違いますのじゃ。魔力の制御はもう殆どウーサー様は出来ていますのでなしですのぅ。

魔術は・・・・・・いい加減諦めなされ」


「何故ですかっ!?」


「才能が全っっっっっっく無いからですじゃ」


「バッサリです!!」


「儂もう本当に、今だ不思議でならんのですじゃよ。

何で魔力の量と質は儂らよりめっちゃ良いのに・・・・・・・・・・魔術はアレ何ですじゃ??」


「何ででしょう?」


「本人にも分からんのですじゃから、もう儂には無理!(魔術が無くともウーサー様だったら黒いオーラで生きていけるじゃろう)」


「無理って言わないで下さい!!」


「話が進まんので、この話はもうはい!終わりですじゃ!」


「そんなーーー!!」



─────しばらくお待ちください。



「ぜぇ、ぜぇ・・・。

それでは気を取り直して、授業をしますのじゃ」


「むぅ・・・」


「いつまでも拗ねない!

うおっほん!それでは今日の授業は悪魔についてですじゃ」


「悪魔、ですか?確か、兄さんから少し聞いたことがあります。人間を様々な手段を用いて誘惑し、堕落させ破滅と絶望を与えるモノ?でしたっけ?あと魂とかを食べたりする?」


「大雑把な回答ですじゃが、大体そんな感じですのぅ。

しかし、今回はそっちの方の悪魔の授業ではありまぬ。この『ブリテン』のみに存在する《悪魔》についてですじゃ」


「『ブリテン』のみ、ですか?」


「そう、この《悪魔》は数百年前に出現したモノ。

一般的な悪魔との違いはその派生場所と生体。

この《悪魔》達は皆、彼の楽園───【アヴァロン】から現世に追放されて派生した《悪魔》なのですじゃ」


「・・・・・【アヴァロン】」


「ある言い伝えによりますと、《悪魔》は【アヴァロン】で罪を犯した妖精・幻獣・精霊が堕ちたモノだそうですじゃ。

ただ普通の悪魔より、より邪悪な存在と言われていますのぅ。

ここまではよいですかの?」


「はい。あ、質問ですが、その《悪魔》は何の罪で追放されたのですか?」


「ふむ、よい質問ですな。

実はこの答えは儂もよく分からないのですじゃ」


「ええ??」


「伝承では、ただ罪を犯したとしか伝わっておりませぬ。

ただ、幾つか仮説はあります。一番有力なものは【アヴァロン】の最奥にある一つの果樹の実─────【黄金の林檎】に手を出したからなのではないかと考えられておりますのぅ」


「【黄金の林檎】?(そう言えば()に【ナマモノ】さんが【アヴァロン】の事を『林檎の島』とも言っていましたね)」


「それについてはまた次の授業で説明致しましょう。今日は《悪魔》の授業ですのでのぅ」


「はい、わかりました(後で彼女にも聞いてみますか)」


「では、続けましょう。【アヴァロン】に追放された悪魔達はその後どうなったかと言うと、現世の住人に災いをもたらす事が無き様、手を打ったお方達がおります。

それは【アヴァロン】を治めるケルトの英雄でその世界の神である【アヴァラック王】とその娘達ですのじゃ。

彼らは追放する前に、現世にあるモノを作りました。

それは厳重に幾重にも複雑な術式で作られた封印と森。

それは後に『悪魔の森』と呼ばれる森に《悪魔》達を封じたのですのぅ。ウーサー様はまだ見たことは無いですが、この国の西の方にある規模が小さな黒い森ですな」


「あ、その森なら見たことありますよ。

虹色の膜に覆われた森ですよね?(封印と森の色がどちらとも本当の色がかなり、()()()()()()()()()で、思わず"■■"を送ってしまいましたけど・・・)」



その時偶々自分の『中』にいた【ナマモノ】が「何しとんじゃーーーっ!!!」と絶叫しながら、ウーサーの魂をひっぱたいた。イタイ。



「ほっ!?ウーサー様、いつその森を見たのですかの!?

失礼ながらウーサー様の体力じゃ、とても辿り着ける距離ではありませぬぞ!」


「体力無いのは余計なお世話です!

あと、私、森には行ってませんよ。一ヶ月前に私が"発作"で倒れて療養中の時に暇潰しにと、《彼女》が外の様子を水鏡で見せてくれたのですよ。(まさかいきなりあんなもの見せられるとは思わなかったですけど・・・)」


「ああ、《彼女》の水鏡はブリテンにある全てのものを、見通す力がありましたのぅ」


「どうせならあの森ではなく、猫ちゃんを見たかったのですが・・・」


「ほっほっほ。今度は彼女が水鏡を使うときには、見たいものを先に申告した方が宜しいですのぅ」


「そうします」


「話が脱線してしまいましたので戻しますぞ。

森に封じられた《悪魔》達がどうなったか、それは一切語られていませぬ。

何故なら《悪魔》達は森に封じられてから、今現在の間一度も、森から逃げたと言う話が無いからですじゃ」


「え、一度もですか?」


「はい。一度も、ですのぅ。

伝承の方も、《悪魔》の方ではなく、『悪魔の森』についてしか語られておりません。

・・・・・儂の推測ですじゃが、【王達】の封印が余程強力だったのかもしれませんのぅ(或いは・・・)」


「そうなんですね(或いは封印に何らかの洗脳魔術が施されて外に出たい意思を封じられていたのか、自らの意思で外に出なかった、かですかね)」


「さて、《悪魔》の伝承はこれで終わりですじゃ。

ここからは、伝承では語られなかったある《悪魔》の話を致しましょう」


「伝承では語られなかった《悪魔》?」


「その《悪魔》は森に封印される前に、逃げた数匹の《悪魔》達の内の一人────」


────その《悪魔》は顔は目以外、もうこれでもかと黒い布でグルグルに巻いて隠していました。

服装もボロボロの黒いマントに、黒い服を着て全身黒ずくめ。


《悪魔》は様々な人間の夢を渡って、【追っ手】から逃れていたそうな。


ある時逃げている最中うっかり、夢の外に出てしまい焦った《悪魔》は、目に入った不思議な気配のする小さな小屋に逃げ込んみましたが、そこには一人の魔術師の青年が住んでいたのです。


青年の姿を見て《悪魔》は必死に言いました。


「恐ろしいモノに追われているんだ。どうか六日後の満月の夜まで、此処に隠れさせて欲しい」

「・・・・・分かった、ただし条件がある」


青年が言った条件はただ一つ。


「研究の邪魔をするな」


ただこれだけ。

青年は研究以外には何も、興味が無く。

素性が分からない怪しい格好の者が入って来ても、邪魔さえしなければどうでも良かったのです。


最初どんな条件を言ってくるのか、ビクビクしていた《悪魔》も青年が言った条件を聞いて、思わずポカンとしてしまったそうな。


そんな呆れる様な単純な条件に、《悪魔》はちゃんと従いました。

青年の条件を破るより、【追っ手】の方が余程恐ろしかったからです。


《悪魔》が青年の小屋に逃げ隠れて、五日経ちました。

ポツリと《悪魔》は自分が何故逃げているのかを話します。


「私達はあの【楽園】で恐ろしい“罪”を犯した。

【王】は怒り私達を《悪魔》に換え、罪人の証を目に刻み、体の中に呪いを掛けた」


そう言い、《悪魔》は青年に目を見せます。

橙色の瞳の奥には、真っ赤な林檎の様な紋章が刻まれていました。


「この証は私達に恐ろしいモノを見せ続ける。

体の中に掛けられた呪いは、どういうモノかは分からない。

ただ分かるのはその呪いが、私の中にあり私達を魂の一欠片も残さず蝕み続けると言うことだけ・・・」


それ以上《悪魔》は何も語りませんでした。


そして、六日目の満月の夜、《悪魔》は青年に礼を言い、夢の中へ戻って行きました。

その後、《悪魔》がどうなったのかは分かりません。


《悪魔》の言う【追っ手】に捕まって『悪魔の森』に封じられたのか、体の中に掛けられた呪いが発動して死んだのか、それとも逃げきれ安全な土地で静かに暮らしているのか・・・それをしる術は青年にはありませんでした。


「これでお仕舞いですじゃ」


「うーん、エムリスさんの話を聞いた限り、その《悪魔》さん、全く邪悪な感じがしませんね」


「良い事に気が付きましたな、ウーサー様。

もし邪悪なモノであったのなら、青年は迷わず追い出すか、ブチ殺すかしていたのですじゃ。

ですが、青年が言うにはその《悪魔》は邪悪な気配はしておりませんでしたが、体の中の呪いは嫌な感じがしたと語っておりますのぅ」


「・・・体の中の呪い、ですか(・・・・・)」



ゴーン、ゴーン、ゴーン♪



「あっ」


「ふむ、もう時間ですな。

《悪魔》についての授業はまた明日致しましょう」


「はい!ありがとうございました!」




─────しかし、次の日授業は無かった。












「はぁ、今日はエムリスさんが『悪魔の森』に行ってしまったから授業は無しの様です。

何があったのか、気になりますがそれは後で聞きましょう。

私は急遽決定した、訓練の準備を始めなければいけませんし、訓練に行ったら暫く授業は出られないかもです。

あ、そうです!準備を始める前にちょっと聞いてもいいですか?

昨日エムリスさんが言っていました、【黄金の林檎】・【アヴァラック王】とその娘達について、なのですが──────」

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