【十四話 悪魔の森の仔~始めからほぼ詰んでいる緑の闘い~】
目茶苦茶お久しぶりです!
そして一言、作者の次回予告は信用しないほうがいいです。
作者自身も信じてないので·····。
月が出ていない完全に暗闇染まった夜の城。
住人たちの殆どは明日に備えて眠り、昼間の活気は身を潜め城は静寂に満ちていた。
ただ僅かに人の声と音が聞こえる。
それは城内の見回りの騎士達の歩く音。
研究に没頭して寝ることを忘れ、テンションがおかしくなくなりハイになって爆笑する魔術師の笑い声。
最後に業務が終わらず書類地獄から抜け出せない文官が、原因を作った上司への恨み事と呪詛と悲鳴。
最初の一つ以外は、どちらもある意味ホラー感満載な雑音だけれど・・・。
しかし今、自分を(性的に)食う為ここに向かっている《悪魔》の方のマーリンを封縛する為、自室のベッドの中で一人戦々恐々して待ち構えている兄にとっては皮肉な事に、普通の人間が発している音と声だから安心できる唯一の精神安定剤になっていた。
エムリスから渡された魅了抵抗の魔術を施した無色透明な水晶を首に下げてはいるが、やはりエムリス本人も言ってたが、あの未知の半魔に通用するかどうかかなり不安だった。
反対にもう一つ渡された自分の弟が作ったマーリン捕縛用兼お守りのニ枚の“(呪)札”。
例の恐ろしい“教え”がこれでもかとびっしり書かれているせいで黒く染まり、現在進行系で文字に負けないくらい禍々しい黒いオーラを放っている“(呪)札”が恐ろしい事に、何万倍も安心できてしまっている。
※注:“(呪)札”の内容は見えないよう、エムリスが細工しているので兄には見えていません。
見たら、とても大変な事になるので·····。
水晶と“(呪)札”の性能性は明らかに後者の方が良い?だろう。
だって、”教え“に引っ掛かった敵(主に男)が、黒いオーラに触れただけでガチガチの金縛りになり、
ガタガタ震える程の悪寒が発症して止まらなくなったり、耐えきれず気絶したらトラウマ級の悪夢を見たり、
いつの間にか大事なトコロが悲惨な事になったり、
アババババババに発狂してしまったりと、様々な災難にガッチリ囚われる。
大きなメリットといえばこの“(呪)札”は、どんな生物だろうと幻想の存在だろうが絶大な効果を発揮出来るところ。
マーリンを捕縛するにはもってこいの優秀()なアイテムだ!
ただし!!コレには致命的なデメリットがあるっ!!
対象と札を持っている人に物理·精神面での安全はほぼ保証出来ないってところだよっ☆
·····こんな所持者を殆ど救わないヤバイ呪物でも、兄にとっては本当に希望のアイテムなのだ。
しかし、幼い子供相手にやり過ぎではないだろうか?とは思わない訳ではないが、兄は現在大切なモノを狙われている時点でその考えは完全に捨てている。
·····と言うか、そんな事考える余裕は今の兄には無かったと言うべきか。
だって─────
「・・・・・・・っっ!!!(耐えろ、俺!“(呪)札”の黒いオーラがなんだ!!こんなのっ!!)」
お約束通り、兄は現在進行形で“(呪)札”の放つ黒いオーラの圧に必死で耐えていたからだ。
実際兄は敵ではないので上記の末期の状態にはならないが、黒いオーラによる精神的ダメージは少な(?)からず受けている為悪寒が止まらない様子。
それだけではない。
黒いオーラの圧が凄すぎるから、もう一瞬でも気を抜くと精神がゴッソリ削られ、気絶してしまう。
気絶してしまったら、その先に待つモノは言わずもがな·····。
「(絶っっっっっっっ対に(性的に)食われてなるものかっっっっっっっ!!!!!!!!!)」
兄は《マーリン》に大切なモノを奪われまいとそれはもう必死に、自分を鼓舞し踏ん張っている。
だが彼がここまでするのは実はそれだけが理由ではない。
「(食われたら最期っ!俺はアイツに殺されるっっっ!!!)」
・・・・・・・察しのいいキミも、もうこの一言で気づいただろう?
マーリンに(性的に)食われ大事なもの奪われるのも恐ろしいが、それ以上にその後から訪れるかもしれない、歩く地獄が自分の(男としての)人生を滅殺しにくるかもしれないのだから・・・・・。
*********
─────一年前。
兄は、人生で、最大の、愚かな問を“(呪)札”の制作者であり実弟のウーサーにしてしまった·····。
そして、その問にウーサーはこう、答えた。
「───、──────────ます」
*********
あの時のウーサーの表情は今でも脳裏に焼き付いて、何度死んでも絶対に忘れられないもの。
いつもの笑顔の筈なのにとても穏やかで落ち着いた笑顔だったと思う。
弟の蒼い夜空の瞳にハイライトが完全に消失していたのを除いては·····。
大体こういう時に目にしている、黒いオーラを放っていなかったのが逆に怖かった···········。
「(·····あの時の笑顔は、いつかの邪悪な悪魔を無表情で洗濯板で殴り倒している時よりヤバかったっっ!!)」
この時恐怖が兄の頭の中を支配しているせいなのか、ふと自分より六つも年下の可愛い弟が立ち塞がる光景が浮かんだ。
しかもいつも持っている洗濯板とは違う獲物を携えて·····。
「(····・・・・・・・·弟よ、お前のその小さな左手に持つ鋭い棘が幾つも付いた黒く血塗れた鈍器は何処から取り出したんだ!?
そして、それを何処にフルスイングするつも─────────はっっっっっっっ!!!!)」
禍々しい鈍器が大事なトコロに振り上げられる前に、兄の脳は一瞬だけ思考を強制停止させ、直ぐ様我に返った。
「ハァッ、ハァッ!!(あっっっぶなかった!!!!!)」
兄の酷い勝手な想像ではあるが、あながち間違いではないと思う。
なにせあの時のウーサーの返答は間違いなく、確実に、実の兄でも容赦なくまんべんなく“教え”によるお仕置きで教育的指導する!!!!
兄はこの国の最強の騎士であり、騎士団長のガウェインに直々に鍛えられているから、若いながらもかなりの実力者だ。
それに反して普段住んでいる城で迷子になって、最終的に遭難し力尽きてぶっ倒れる体力がもやし並みの通常のウーサーには負けはしないだろう。
だがっっ!!そんなもやしのウーサーが兄や大人の騎士達をも凌駕する、力を発揮し絶望の淵に叩き落とす状態になる事がある。
それがあの“ブラックモード”!!!
詳細はもう面倒なので省くが、そうなってしまったウーサーは兎に角洒落になら無い位滅法強い。
相手を確実に指導完了するまで、彼は止まらない。
どんな物理·魔術による攻撃は全部笑いながら躱されるか、倍返しで弾き返され相手の心をバキバキに圧し折り、肉体をボコボコに殴り倒す。
更に全力で逃げても絶対にマーリン(人間)の様に捕まえられるまで(十話参照)恐怖を味わいながら追われ、やがて体力·気力が尽きて捕まえられる······。
不幸なことに兄も何回かウーサーの“ブラックモード”を目撃してしまっていたが··············································どうやっても絶対に勝てない、と直ぐに本能が敗北を認めてしまっているとか。
だが、しかし、こっちは完全に被害者なのだが、弟もそれを分かっているハズなので“ブラックモード”になる事はないハズ·····なのだがそれでも大きな不安は拭えない。
兄が不安を抱く理由。それはマーリンという子供が《人間》と《悪魔》と二つの性質と魂に分かれて、一つの肉体の中に存在しているという事にある。
「(万が一俺が失敗して··········、食われて、その途中で《悪魔》から《人間》に入れ替わったら·····)」
兄は《人間》の方のマーリンに関してはウーサーとエムリスから聞いている。
彼等から聞いた話では、他者が触れる事に、異常なほど過剰に拒絶反応を起こしているとの事。
実際あの会議で兄も初対面した。その短い時間で分かった事は、確かにかなり警戒心が強かった。
察しのいい《キミ》はもう分かってしまったかもしれない。
兄が《悪魔》の方に(性的に)食われている最中に、向こうの気まぐれか何かで、《人間》の方に入れ替わってしまったら、そりゃもう大惨事になる。
①《人間》の方のマーリンはパニックを起こす。
②”魅了“に掛かった状態の兄は、理性が飛んでしまっているので、言わずもがな。
どう見てもマーリン(人間の方)に無体を強いている図にしか見えない·····。
③それを目撃したのが、死から復活して(死んでません!)助けに来た弟のウーサーだったら
─────────世界は一瞬でドス黒い地獄鄕と化す。
想像するのも恐ろしいが、確実に兄の(男としての)未来はウーサーの「教育的指導の時間ですね」の一言で終焉を迎えるだろう。
そこから訪れるは言葉にするのも恐ろしい·····恐怖と悪夢と破滅の黒の絶望の未来。
最悪の·····救いようのないヤバイの未来を防ぐため兄は、今必死で“(呪)札の黒いオーラ”の猛攻に耐え、来襲してくるマーリンを捕縛するため待ち構えているのだ。
「そんな未来には絶対にするものかっ!
俺の未来の危機は自身の力とこの”(呪)札“で死守してみせる!!!」
因みに、作戦を考えたエムリスは”黒いオーラ“が渦巻く“(呪)札”作成現場に長時間いたのと、大量の”(呪)札“を城に住む男達の部屋の扉一つ一つに貼り続けていたせいもあり、兄に残りの”(呪)札“を渡した後体力·精神が限界を超え力尽き、病室に弟子達に運ばれて行った·····。
「こんばんわァ、おにぃさん♪」
幼い子共とは思えない、妖しく、艶かしく、然しその奥には獰猛な獣の様に爛々と光らせる橙色の瞳が呆然とする兄を見下ろしていた。
いつまで続くかわからないおまけ
ウーサーの不穏な言葉
“(呪)札”作成中
ウーサー
「·········うぷっ·····で、でき···ま、した、うっ」
エムリス
「··············オツカレサマデシタ、ウーサーサマ」
二人は疲労困憊。
エムリス
「コレで、なんとか·····ボウヤがコトをおかすまえにとらえるコトがデキルでしょうな」
ウーサー
「エムリス、さん·····」
エムリス
「ハイ?どうされました?」
ウーサー
「そ、の···“お守、り”······まー··りん、くん―――――――――――――」
ウーサーは力尽きた。
エムリス
「ウーサーさま?ああ、おねむりになられましたか···ダイジョウブです。あとはこのエムリスがひきつぎますのじゃ·······」
フラフラしながら部屋から退出した。
ウーサーの『中』から視ていた【ナマモノ】はブルブル震えていた。
【ナマモノ】
「とんでも無い事を聞いてしまった·····。
ウーサーくんや、
「その”お守り“多分マーリン君には余り聞かないと思います」
って、どういう事???
え?じゃあ、兄君の運命(初体験)は·······!?」




