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生贄竜の見る色は・・・・・  作者: 終夜イブキ
アクマの森の仔〜暁〜編
35/45

【三十話 アクマの森の仔〜暁〜⑥】

別タイ:妖しき橙の瞳

ヴォーティガンの作戦はこうだ。

夜、兄一人で私室でメルリヌスを待ち伏せ、来たところをウーサーの“護符”を使って動きを封じ、そこへ待機しているヴォーティガンとエムリスが突入してメルリヌスを捕らえる、かなりシンプルな作戦だ。

しかも、決行は今夜とかなり急。これはヴォーティガン曰く、


「ウーサーちゃんかとエムリスちゃんから聞いた感じだと、今のメルリヌスちゃんはかなりの極限の飢餓状態になっている筈だわ。それが爆発するのはおそらく今夜よ。

メルリヌスちゃんはなりふり構ってないで来ると思うから、こちらも覚悟していかないと」


と、言うことだ。ウーサーのあの一言で微妙な空気になりかけてしまった作戦会議後、彼等は急ピッチでメルリヌス捕獲作戦準備を進めた。

そして、空が青から昏い橙色に染まり始めた頃、全ての準備は終わったのだった。


“護符”が仕上がったと報告を受け、別の準備をしていた兄は重い足取りでエムリスの工房へと赴いた。

そこで待っていたのはエムリスだけで、彼は無言でそっと例の真っ黒なオーラを放つ真っ黒な“護符”を三枚机の上に置いた。


「これが、殿下の分ですじゃ...」

「.....ああ」


あまりの黒さに兄は一瞬だけ怯みゴクリと喉を鳴らしてしまった。

“護符”を渡すエムリスの顔は真っ青かつゲッソリしている。会議後、ヴォーティガンとエムリスとウーサーの三人は工房に残ったまま“護符”の作成をしていたらしい。

その間、工房で何が起こっていたのか兄は気になったが、怖くて考えるのを止め、黙って差し出された三枚の“護符”を恐る恐る手に取った。


「(ただの紙の筈なのに、ずっしりと重たさを感じるのは何故だ!?)」

「よいですか、殿下。作戦の通り一枚は殿下の私室の扉の内側に貼り、もう一枚は殿下自身の守りで肌見放さず持ち、最後の一枚は坊やに直接貼り付けてくださいですじゃ。

即ち坊やが殿下の寝所に上がり、殿下の身体の上に乗り上げたその時がチャンスです!

それまでは殿下は寝たフリして大人しく、寝所で、待ちなされ。呉れ呉れも、妙な動きをして坊やにバレないようにして下さい!」

「...なぁ?そこまで引き付けなきゃ駄目なのか?」

「避けられてそのままなす術なく(性的に)喰われてお終いですな」

「ギリギリまで引き付けて奴の顔面に直接叩きつける」


最初こそ嫌そうに言った兄だったが、「(性的に)喰われる」と言われた瞬間、真顔になり即答した。

そりゃそうだ。年下でしかも同性の幼子に(性的に)パクリとあっさり喰われてしまうものなら、流石の兄も色々な意味で立ち直れなくなるものさ。


「それと、もう一つこれを渡しておきますじゃ」


エムリスは懐から小さな透明な水晶のペンダントを取り出し兄に渡す。


「これは?」

「気休めにしかならぬかもしれませぬが、魅了の抵抗を上げる術を施した物です。これと同じ物を殿下の寝所の下に仕込みましたのじゃ。

ただ、これは普通の悪魔用の物。あの坊やに何処まで通用するかは分かりませぬが.....」

「確か、人間と【アクマ】の“混血種”だったな」

「そうですな」

「はぁ...普通の悪魔だったらなんとかできたものを未知の【アクマ】となると本当に厄介だな。

【アヴァロンのアクマ】の存在は俺の中ではおとぎ話でのモノだったのに、半分とはいえど本物の力量は未知数...本当にとんでもない者を連れてきたなエムリス」

「それについては申し訳ありませんのじゃ。しかし、儂はあの坊や達を拾った事については後悔はしておりませぬ。

だから、今回は儂もウーサー様も本気であの仔に立ち向かうのですのじゃ」

「ああ...そうだったな」


そう言いながら、兄はふとあの会議で初めて対面したマーリンを思い出す。

近くて初めてみたマーリンは、始終兄を警戒し、ずっとウーサーの後ろに隠れるように立っていた。

弟ロリ背が小さく、殆ど少しはマシになったとエムリスは言っていたが、痩せ細っていた幼い子供。

以前遠目で見た時は腰まで長くボサボサだった黒髪は、世話係のどちらか散髪したのだろう、首元が見えるまで短くなり、ある程度整えられていた。

ただ、前髪の方は目が隠れるほど長く、まるで世界を見たくないとでも言うように態とそのままにしているようだった。

兄にとってマーリンの印象はそんな感じだった。


しかし、メルリヌスは違う。アレは何というか分からないが、ある意味危険だ。このまま放置すれば何をするか分からない爆弾のような存在だ。

何故なら兄はあの会議の後、皆それぞれの持場に赴く時、工房から出ていこうとした兄は、奇妙な視線を感じ、相手に気付かれないよう後ろをチラリと見た。

その先にはマーリンが相変わらずウーサーの後ろに隠れて立っていたのだか、長い前髪の隙間から見えたのは、昏い赤紫の色ではなく、あの夜に見た艷やかで妖しい光を帯びた橙色だった...。

いつまでつづくか分からないおまけ

〜作戦ちょこっと補足〜


ウーサーが大量に“護符”を作る理由は城中の人のいる部屋の扉に貼るため。

メルリヌスが暴走して魅了の香りを振りまいて被害者を増やさないように対策するためです。

ただ副作用としては部屋の中の一部の人間の精神状態の快眠はあまり保証出来ないところでしょうか...。

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