【二十六話 アクマの森の仔〜暁〜②】
別タイ:血に染まる灰色、パニクる赤紫
ざっくりしたあらすじ。
マーリンの問題があらかた解決!
残るは【アクマ】の血が濃いメルリヌスだけになった。
しかし!メルリヌスは目覚めた瞬間、何やら城の人間を巻き込んだトラブルを起こしまくって好き勝手し始めたのだ!
それを解決する為急遽、ウーサー、エムリス、マーリン、そして何故か兄を加えた四人で集まって対策会議をしていたのは良いんだけど、会議は難航してか全く進まず最初からどん詰り状態───だったんだけど、そこへ突如現れたのが『ブリテン』統一に近い最強の王こと紫夜の王【ヴォーティガン】が現れたのだ!←今ここ!
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驚いているウーサー、エムリス、兄と何故か身体を強張らせているマーリン四人の前に現れたヴォーティガンに、直ぐに通常運転に戻ったウーサーがマーリンを引っ付けながらもう一つ椅子を用意し、彼の為に新しいティーカップ出し、そこにお茶を注いで出した。
ヴォーティガンは用意された椅子に優雅に座り、美しい動作でティーカップの注がれたお茶を一口飲んだ。
「ありがとう、ウーサーちゃん。元気そうで何よりだわ」
「オネェさんもお元気そうでなによりです。あの、先程「面白そうな予感」と言いましたが、もしかしてメルリヌスくんに関してのことですか?」
まだ驚いた状態のままでいる三人を無視して会話を進める二人。しかし、メルリヌスの名前が出てハッと三人とも我に返った。
「メルリヌスと言う子がどんな子かは知らないし、今貴方達の抱えている問題も分からないわ。だけど、この前私の所に届いた妹ちゃんの手紙を読んでね、私の勘が言ったの。
これは近い内にウーサーちゃんの周りで何か面白い事が起こるってね♪」
「なるほど、そうだったのですね。因みに母の手紙の内容をお聞きしてもいいですか?」
「ええ。いつも通りの義兄上の惚気話と兄ちゃんとウーサーちゃんの事が書かれていたわ。
後ついでにエムリスちゃんが『アクマの森』で人間とあの【アクマ】の混血種の子供を拾ってウーサーちゃんと一緒にお世話してるっていうのも書いてあったわね」
そう言ってヴォーティガンは、チラリとウーサーの背後に隠れているマーリンに紫の瞳を向けた。
視線を向けられたマーリンはビクリと身体を大きく震わし、慌てて兄の時と同じように視線から逃れようとサッと姿を見せないように隠れたのだが...
「イタタタタタッ!!痛いです!マーリンくん!」
ヴォーティガンが怖いのか勢い余りすぎて、ウーサー背中を肉ごと鷲掴んでしまっている。
あまりにも強く背肉を鷲掴まれてしまったウーサーは堪らず悲鳴を上げる。
「あらあら、妹ちゃんから聞いた話と違って以外とシャイな子なのね。カワイイわ♡」
「叔父上!そんな呑気なこと言っている場合ではないでしょう!ああっ!ウーサーの背が真っ赤に染まってーー!」
「落ち着くのじゃマーリン坊や!ヴォーティガン様は本物の男じゃ!!」
「抉れてます!多分じゃなくて、絶対に背中のお肉抉れてますっ!!」
「!?!!?!!!?」
エムリスの言葉に益々混乱するマーリン。その間、ウーサーの背中はモザイク待ったなしの悲惨な状態に!
そしてとうとう───
「うにゅあーーーーーーーーーー!!!!」
「ウーサーーー!!」
「ウーサー様ぁぁぁ!!」
今日一番ウーサーの大きな悲鳴が城中に響き渡ったのだった───。
───ヴォーティガンを女と勘違いしてパニックになってしまったマーリンをなんとか兄とエムリスが「彼は正真正銘の男だ!」と何度も言ってやっと誤解を解いた頃には、マーリンの手はウーサーの血で真っ赤に染まっていた。
「うにゅ.....」
「もう少しで塞がりますぞ」
そのウーサーはちょっとぐったりしながらエムリスに背中の治癒の魔術で治療されている。
「.......悪い」
横では怪我させてしまったマーリンが本当に済まなそうに謝っていた。
「ウフフフフフ♪もう!貴方達、早速、やってくれたわね!おなかが、痛くなっちゃったわ!」
事の元凶であるヴォーティガンはそのプチ騒動がツボにはまり、片手を腹に添えもう片方は涙を拭いながら大笑いしていた。
「叔父上、面白見たさでここに来たのならもう満足したでしょう。これ以上面白い事など無いのですから、もうお帰りくださって結構です。我々は今直ぐにメルリヌスが起こす騒動を解決せねばいけないので!」
大笑いしている己の叔父を睨み、叔父がいつまで経っても笑うのを止めないのに痺れを切らし工房から出ていくように言う。
少し苛立ちと怒りを含んだ声で言う兄に、ヴォーティガンは漸く笑いを収めて、宥めるように優しい口調で、
「兄ちゃん、そんなにピリピリしていては、解決できる問題も直ぐには解決できないわ。ここは冷静になって一度仕切り直しましょう?」
「....誰のせいで」
そう言いながらも兄は深呼吸して中にある不満を収め冷静に務めた。
「それで?叔父上は先程「解決できる問題」と仰っていましたが、未知の【アクマ】が起こす騒動を本当に解決できるとでも思っているのですか?」
「そうね。ざっくり騒動の内容を聞いただけだけど、私的にはそう難しくない問題よ」
自信満々に言い放つヴォーティガン。あまりにも自信ありげに言う叔父に兄は少しだけたじろいてしまう。
「でももう少しメルリヌスちゃんの情報が欲しいわね。あと何故あまりにもマーリンちゃんとメルリヌスちゃんに接点がなさそうな兄ちゃんが此処にいる理由も聞きたいわ」
「それは...」
ヴォーティガンの問いに兄は話したくないとでも言うように、目を逸らして口を噤む。
「十日前からでしょうか。兄さんがメルリヌスくんに狙われるようになったのは...」
「っウーサー!」
しかし、何も話しそうない兄にやっと治療が終わったウーサーが話しだし、兄がそれを止めようとする。
「兄さん。私達だけの知恵ではメルリヌスくんの暴走を止められるとは思えません。ここはオネェさんに全て話して、知恵をお借りするのも一つの手だと思います」
「っ...」
メルリヌス暴走問題解決の糸口が見えない今、現状を知りすぎている四人より、後から加わり解決できるかもしれない知恵を携えたヴォーティガンに話を聞いてもらい策を講じてもらおうとウーサーは思ったのだ。
何か言いかけようとした兄も弟の言いたいことが分かったのか、空きかけた口を閉ざし勝手に話せとでもいうように、無言の許可を出す。
「フフ、それで?十日前に兄ちゃんに何があったのかしら?」
話を聞いていいと許可を得たヴォーティガンはウーサーに話の続きを促す。
ウーサーはコクンと一つ頷き、話の続きを語りだした。
いつまで続くか分からないおまけ
エムリスのチャーム
「そういえば、エムリスお前も半分妖精の血を引いているんだったな。じゃあ、お前もチャームが使えるのか?」
「そりゃあ使えますぞ。
しかし、このブリテン一プリチーでチャーミングなおじじのですから?
そんなチャチなもの使わずとも、この可愛い姿にメロメロですじゃ!
特に若い女の子には絶大な人気を誇っておりますとも!
ほれこれがその証拠ですじゃ♪」
エムリスの背後にある別の机の上には、可愛いラッピングの贈り物がこんもり山積みになって置いてあった。
どの贈り物にも甘いお菓子の匂いが、ほのかに香っている。
「・・・・・・・・・・あっそ。(ジジイ爆発しろ)」
と、思いながら兄は心の中でエムリスを二十回爆破した。




