【二十四話 名物三色、目覚めの橙色】
別タイ:名物三色、目覚める橙
明けましておめでとうございます!
今年も1年よろしくお願いします(≧▽≦)
『ブリテン』の中で一番の小国『──────』。
この国の王が暮らす城には幾つかの名物がある。
最も有名なのは「キツい·厳しい·危険」3Kの名が長くて超ダサい訓練。
あとはとある宮廷魔術師と何代目かの王が悪戯で地面ギリギリまで傾けた城で二番目に高い塔。
代々王妃の家系に伝わる“教え”とその一つの奥義“ブラックモード”。
王妃を怒られ死ぬ程落ち込む王の姿。
最近では城内で遭難し、行き倒れた第二王子を発見した者におんぶされて救護室に運ばれて行く光景。
夜中、白い袋と洗濯板を持って鼻唄歌いながら城内を徘徊する謎の子供の影。
一月に二度開催される、とある精霊の貴婦(腐)人とその同志たちによる秘密のお茶会。などなど。
他にも色々あるけれど、挙げたらキリがないので割愛。
そして、数日前。また新たな名物がこの城に加わろうとしていた───。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
『アクマの森』から連れてこられたマーリンが目出度く正常に戻って半月ちょっと経った。
そんな彼の普段の生活はこんな感じだ。
「うるせぇ、曇天頭」
「近づくな、頭常春ジジイ」
「■ね、クソが」
とまぁ、元気にウーサーとエムリスを罵倒していた。
ただ、罵倒し嫌そうに感情を出して接するのはこの二人のみで、その他の者には警戒心が強く一言も喋らず、表情も無に近いものだった。
誰かと対面する時などは、二人のどちらかの背後に回って身を隠す。
そんな態度をとるマーリンに城の者達の殆どは嫌な顔一つせず普段通りに接した。
皆が普通に接するのは、エムリスが前もってマーリンの事情を話した上でどう接するかを話したからだ。
なので、皆過度に気不味い感じを出さずにマーリンに接することが出来たのだった。
ただ一つ、彼等にはマーリンに対してある不安と心配することがあった。
それは.....マーリンが急に発狂する事ではなく、彼の身の回りの世話をするのがあのエムリスとウーサーだということ。
この二人、今現在国内一強烈でぶっ飛んだ思考·行動力を持つ狂人だ。
この二人がタッグを組んで世話係になんてやると、例えあの『アクマの森』から連れてこられた身元が謎の“混血種”のマーリンでも身と心が持つか周りが心配になってしまうのも仕方がないだろう。
そして案の定、皆の心配が現実化しつつある。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
〜エムリスの場合〜
「ほ〜〜〜れ♪坊やちゃんと食わんと背が大きくならんぞぉ?」
マーリンの頬にグイグイとパンを押し付けながら頭をペシペシ。
「おお!?そこにおったんか!驚いた驚いた!背が小さすぎて見えんかったわい」
マーリンの頭をペシペシ。
「坊やが儂の身長を超すのは何時になるかの〜〜〜?百年くらい掛かったりして?」
マーリンの頭をペシペシ。
「ホッホッホ♪今日は坊やの好きな豆料理のフルコースじゃぞーーー♪」
マーリンの〜略。
─────ブチィッッ!!!
「だぁぁぁれがチビだああああ!!?
頭常春クソジジイっ!テメェのそのウゼェ髭と白髪全部ブチ抜いて存在諸共ブッ■してやるよおおお!!!」
この通り、マーリンのコンプレックスである身長の事を煽りに煽って、毎回彼をぶちギレさせていた。
主にエムリスはマーリンの身体と精神の健康状態の管理と(予定)魔術を教える方を担っているのだが、健康チェックは最初だけで、後の殆どは持ってきた好物の甘い菓子をマーリンの目の前でもしゃもしゃ食べたり、一方的におしゃべりして一日を過ごす。しかも毎日。
当然の如くエムリスにキレたマーリンは、エムリスを鬼の形相で城内を駆け巡りながら追いかけ回した。
毎回やるもんだから、初めの内は必死に二人を止めていた者は諦め、その光景を慣れた様子で「またやってるよ」「エムリス様、本当大人気ない」と言いながら生温かく見守るのが日常化しつつあった。
もうこの時点でマーリンが苦労人枠に収まることが確定したのを察した、同じくエムリスに振り回されている弟子や部下達は、今後一番被害に遭うであろう最年少の同志の為に、子供用のとっても身体に優しい胃薬を密かに開発しているとかなんとか.....。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
一方、もう一人の世話係ウーサーはというと───、
「マーリン君、今日もいい天気なのでお掃除しますよー!」
「帰れ不審者」
一日の最初は必ずウーサーがマーリンのいる地下室へ例の掃除用戦闘服を纏い、掃除用具を持ってきては起こしに来る所から始まる。
手にマーリン用の三角巾とゴーグルっぽいメガネとフリフリハートエプロンを持って...。(メイド服はありません)
嫌そうに顔を顰めるマーリンをベッドから出して新しく仕立てた洋服に着替えさせてから頭と口元に三角巾、目にはゴーグルっぽいメガネ、フリフリハートエプロンを装着してもらう。
するとどうでしょう。お掃除モードに変身させられた、死んだ魚の目をしたマーリンが棒のように立っているではありませんか!
マーリンの名誉のために言っておくけと、最初これらを差し出された時は、
「んな恥ずいもん誰が付けるかぁぁぁ!!」
と、彼は当然激しく抵抗したよ。
絶対に身に着けてなるものか(特にエプロン)!って全力で拒絶しまくったマーリンだったが、ウーサーの根気強い説得()に負け、前述の通り全てを諦め着ける事になってしまったのさ。
説得()されたマーリンは何故か顔色が悪く引きつっていたらしい.....。
そんなこんなで準備が終わり、お掃除開始!
心を無にして張り切るウーサーの指導の元、黙々と手を動かすマーリン。
「お掃除の前に窓を空けて換気をよくしましょう」
「.....」
不機嫌な顔でバン!と窓を開ける。
「まずは上の方からホコリを落とします」
「.....」
不機嫌な顔ではたきをバタバタ棚の上のホコリを落とす。
「落としたホコリと塵はほうきで掃いて集めましょう」
「.....」
不機嫌な〜(略)、ザッザッザッと箒で床を掃く。
「終わりましたら雑巾で水拭き、その後に乾拭きをしましょうね」
「.....」
不機嫌な〜(略)、雑巾をギチギチに絞る。
「あ!部屋の隅にへばり付いている黒くてバッチイの(悪霊)は丸めてこの袋の中に入れて下さい。後でお外で綺麗な水につけてからこの洗濯板でゴシゴシ洗いましょう!」
「出来るかぁ!!」
「うに"ゅ!?」
持たされた袋を投げてウーサーの顔面に当てた。
最後以外は普通に指導しながらお掃除している。
一見普通の光景に見えるが、本当だったら絶対にあり得ない光景だったりする。
忘れているかもしれないけど、一応ウーサーは王族で世話をするよりされる方の立場だ。
でも父王の命でマーリンの世話係に任命されているから、ウーサーより格下の身元不明の彼の身の回りの世話と生活指導をされても許されている。
まぁウーサーの場合、父王に言われなくても勝手に世話を焼いていただろうけど。
それとマーリンが浸りの世話にならざるおえない理由がもう一つある。
マーリンはまだ二人以外人馴れしていない。
特に重度の女性恐怖症だから、異常に女性に怯え危険な状態になってしまう。
だったら男の執事ていいのでは?と思うところだけど、これも駄目だったりする。
面識の無い知らない存在が部屋という狭い空間にいること事態、マーリンのストレスになってしまい、女性程ではないけど体調不良を起こしてしまうんだ。
だから、マーリンの身の回りの世話と教育指導はこの二人にしか出来ないのだった。
そして、マーリンがそうなっていまった原因を一番に知っているウーサーは、
「(やはりあの【ゲテモノ】共、あの時再起不能になるまで焼いて、バラして、潰して、ミンチにしてから消し炭にするべきでしたね.....否、もっとまた別の───)」
顔はニコニコ、心はゴゴゴゴしていた。
そんな表裏の差が激しい様を偶々様子を見に覗いた【ナマモノ】は、ウーサーの頭のなかでエンドレスリピートされる【ゲテモノ】達をお仕置きする場面を目撃してしまい、「あばばばばばばばば!!!」と言いながらブルブル震えてました.....。
こんな感じだけど、それがいつの間にか名物に追加されていた。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
そして最後。一番最新で有名になりつつある名物がコチラ───。
「待ちなさい!マーリン君!」
「待つかーーー!!」
ウーサーとマーリンの熾烈な鬼ごっこ。
また鬼ごっこか。となるかもだけど、これはただの鬼ごっこじゃない。聞けばわかる。
鬼ごっこはウーサーがマーリンを浴場に連れて行こうとする所から始まる。
風呂が大の苦手のマーリンは、ウーサーが浴場へ連行する準備をする気配を察知して逃亡する。
まだ体調が万全ではないのにも関わらず、疾風の如く廊下を走り抜け、数十m以上の高さのある四階の窓から飛び降りた後、近くの森へと逃げ込む。
物凄いスピードで走りながら、障害物の木々をスルスルとしなやかに避けては登って、飛び移っていくという、猫顔負けの素早さ&逃げっぷりだ。
だがしかし。どんなに凄い逃げっぷりを披露している背後には、静かに迫る不穏な影が.....
「はい。捕まえました」
「!?」
「此処にいましたか。さぁ、行きますよー」
「!?!?」
「遅かったですね。おや、凄い息が切れてますよ。お水をどうぞ」
「!?!?!?」
「はーい!マーリン君さっき振りですね!」
「!?!?!?!?」
「みーつけましたよ♪」
「ギャアアアアアアアアア!?!?!?!?!?」
何度も何度も本気で、全力で、マーリンは走って逃げている。
でも何故か二人の距離は縮まらずそれよか一定の距離を保ち、例え撒けたとしても立ち止まったその先に、横に、背後に、ウーサーがいて捕まってしまう。
森だけじゃない。木の中、洞窟、川の中、城の倉庫、誰も使ってない地下室、何処かの屋根の上、トイレの中などなど...何処に隠れても数分足らずで見つかってしまい、必ず、ポン...っと肩を優しく叩かれる。
そう.....どんなにマーリンが必死になって逃げても、そこに必ずいる大いなる恐怖。
その確率は100%恐...じゃなかった、強!
.....うん。そうでしょ?なんかもう、普通のおにごっこじゃあないよね。
どう足掻いても絶望的なホラーの鬼ごっこだよコレ。
捕まってしまったマーリンの顔も、もう訳が分らない怖いとでも言うように、恐怖で半泣きになってたし.....。
「さぁ、早く身体を洗って一日の汚れを流して綺麗にしましょうね!」
「フシャアッ!!」
「あいたーーー!ですっ!!」
例え凄く怖くても最後の抵抗とばかりに、肩に置かれたウーサーの手をガブリと思いっ切り噛みつくマーリン。
それでも抵抗虚しくウーサーにズルズル浴場まで引き摺られ、結局綺麗に洗われるのだけどね。
これが新しく追加されるであろう『──────』国の王城名物達だ。
新しい仲間が加わり、また賑やかになったウーサーの巣。
しかし、それと同時に別の新たなトラブルも発生しようとしているようで.....。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
とある『楽園』から追放された【アクマ】達。
その中に一人の男の【アクマ】がいた。
男の【アクマ】は『楽園』の王達に『森』に閉じ込められる前、なんとかそこから抜け出せたが、そこからは恐怖と隣り合わせの逃亡の日々となった。
常に得体の知れない【ナニカ】に追われ、様々な生き物の『夢』へと転々と逃げ回る男の【アクマ】。
気が遠くなる程の長い長い逃亡の果て、男の【アクマ】はある人間の女性と『夢』の中で運命的な出会いをする。
人間の女性はウェールズの小国タヴェドの王女だった。
出会った瞬間、二人は互いに惹かれ合い、毎夜愛を語らった。
しかし、二人の愛は長く続かず、たった七日で終わってしまった.....。
【ナニカ】に見つかり直ぐそこまで迫って来ていたのだ。
男の【アクマ】は
「君の夢が覚めてしまっても、ずっと愛している」
と言い残し、王女の『夢』から去った。
幸せな夢から覚めた王女はその場で一人静かに泣いた。
男の【アクマ】の愛が宿った腹を大事そうにそっと両手に添えて.....。
やがて王女は元気な男の子を産み、精一杯の愛情を注いでいこうとした矢先の事、一人の妖精が彼女の元にやって来て.....。
赤子は攫われ、魂が二つに裂かれた。
一つは“人間”の血を大量に注がれ、もう一つは【アクマ】の血を大量に注がれ、個の魂に分かれてしまった。
そこからは【キミ】の知っての通り、『楽園』の娘達の拷問の様な遊びの的にされ、蒼い炎で救われ、後に小国の宮廷魔術師に拾われた。
“人間”の子は、外で灰色の髪の子供と老人の魔術師の元少しずつ心身共に傷を癒していく。
一方、【アクマ】の子は、【中】で深い眠りに付き今まで受けた傷を癒していった。
そして、半月が経った頃【アクマ】の子は目覚めるのだが───
「───ふぅん?ボクが眠ってる間にもう一人のボクは随分と楽しそうにしているじゃん。
ま、いいよ別に。ボクはボクで好きにやらせてもらうからさ。
あ〜!お腹すいたぁ!幸い此処には美味しそうな活きの良い人間がいっぱいいるから食べるのに困らないからいいよね♪
フフフー♪誰から食べようか迷っちゃうよ♪」
いつまでつづくか分からないおまけ
〜登場人物たちのプチ設定〜
年齢と髪·瞳の色だけです。
ウーサー/【生贄竜】:十歳。
髪:灰色
瞳:キレイな蒼い夜空
ウーサーの兄:十八歳
髪:黄金色
瞳:緑柱石
ウーサーの父:四十代前半
髪:黄金色
瞳:緑柱石
ウーサーの母:三十代後半
髪:銀色
瞳:水宝玉
エムリス:不明(数百年は生きている)
髪:白
瞳:紫水晶
イグレイン:不明(数千年は生きている)
髪:湖色
瞳:湖色
ランスロット:享年五歳。
髪:薄水色
瞳:瑠璃
紫夜の王:三十代後半
髪:深紫
瞳:深く暗い夜の紫
マーリン:十歳
髪:黒
瞳:冥い赤紫の黄昏
???:十歳
髪:薄桃
瞳:儚い橙の暁
【ナマモノ】:不明
髪:無し
瞳:多分黒(糸目なのでよう分からん)




