【二十二話 アクマの森の仔〜黄昏〜⑨】
別タイ:不機嫌な蒼
「.....(とりあえずマーリン達の一つ目の問題は解決しそうです。まだまだありますが、今はこれで良しとしましょう。.....それにしても、あの【ゲテモノ】...この子達に随分色々と仕出かしていたようですね.....)」
やっと本来の子供に戻って泣くことが出来たマーリンの背中を怪我をしていない方の手で、優しくあやすようにポンポンとたたいたり擦りながら、三日前の事を思い出すウーサー。
◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆
三日前。
「(誰か、ないてますね.....)」
そのなき声はほぼ悲鳴に近い、強制的に出させている様な“なきごえ”だった。
例のダサい名の厳しい訓練を終え、ウーサーは達成感に満ちて上機嫌で帰ってきたというのに、意気揚々と城の入り口に入った途端、耳に入ってきたのはその“なきごえ”。それとプラスして、ウーサーがこの世で嫌いな声ランキング上位に入っている、下品で醜悪な不愉快な嗤い声が混じっていた。
聞いてしまった瞬間、ウーサーの上々だった機嫌が一気に下がったのは言うまでもない。
「(.....どこの誰かは知りませんが、昼間から私の巣で下劣な事をするとは言い度胸ですね...)んぬっ!?」
心の中でそう言いながら何気に下を見たウーサーは、思わず変な声を上げビシリッと身体を固まらせた。
それが最初は何なのか分からなかったウーサーだったが、ものの数秒で理解してしまった刹那───
スドォォォォォォン!!
と心の中で物凄い轟音を立てて機嫌が極寒の地へと落下した。ウーサーの機嫌が急降下する程の光景とは何だったのか?
「(“なきごえ”に気を取られて気付きませんでしたが、まさか下劣な事をするだけではなく、ここまで私の巣を汚すとは.....)」
どうやらその命知らずの存在は、城を何かで汚していたらしい。何で汚したかは今から説明しようか。
正直言って説明する私も物凄く胸糞なものだったから、心して聞いてね。
城を汚している汚物の正体は、物凄い悪臭を放ったドス黒い血のようなモノとナニカ色々な体液が混じり合った生々しいモノだった。
それは床だけではなく、壁や天井にまで付着していた...否、付着してたというより、誰かに見せつけるようにベッタリと塗りたくられたような感じて汚されていた。
こんなの見せられてしまったらウーサーではなくても、まともな精神の持ち主だったら誰でも気分は悪くなるのは当たり前だよね。
「(...............)」
“なきごえ”と下卑た笑い声、そして精神衛生的に悪いもんがセットにされ出迎えられたウーサーの蒼い瞳に微かに残されていた光が消えたのは言うまでもないよ。
あの時のウーサーの心の温度は摂氏にまで下がり、その冷たさは世界樹を一瞬でバキバキに凍結させる程。それにプラスして凶悪級の嵐が起こす大爆風で樹が薙ぎ倒せるくらいに荒れに荒れていたよ。
唯一幸いだったのは、瞳以外はそれが表に出ていなかったことかな。
でも...オーラはちょっと漏れ出ていたよ。その日運悪くウーサーと一緒に城に入った訓練仲間の数名の騎士達はそのオーラに当たってしまい、感覚が鋭くなっていた彼等は突然全身に得体のしれない、物凄く恐ろしく冷たい悪寒が走り、皆足早に救護室へと駆け込んで行ってしまったのさ。本当、その時は私は心の中でマジでウチの【竜】がごめんねっ!!って謝ったさ。
そんな騎士たちの様子に気付かないウーサーはというと、
「(“なきごえ”は地下の方から、でも牢がある場所ではありませんね。一般の者でも入れる、主に魔術師の方々が使っているような実験室がある所から聞こえます。まぁ、そうでしょうね。罪人だったら城の真正面からは先ず入れませんし...。それよりもこの“なきごえ”です。これはどう聞いても子供の声ではないですか!)」
どんどん状況を冷静に把握していくウーサーはより情報を得る為、耳を全集中させた。
子供達を地下室の何処かに連れ込み今も厭らしく嗤い続けている声とソレに嫐られ無理矢理鳴かされている子供達の声。ここで新たに別の声も耳に入ってきた。
この声はウーサーも知っているあの老人魔術師の声だ。
内容までは分からないが、その声にはいつものような茶目っ気溢れた声ではなく、誰かを落ち着かせるように説得しているような真剣で焦っているような声色だった。
知った魔術師がいるのが分かって、ウーサーはその魔術師の魔力を辿った。そして、
「(───見つけました)」
とうとうその地下室を見つけた。
声の出処が分かったウーサーは、早く被害にあっている子供達を保護するべく行動を開始した。
「(子供達は長い間暴行されていたのか、かなり消耗が激しいですね。早く救出しないといけません。それと.....下品な【ゲテモノ】の方は私の住む巣でよくもまぁ、好き勝手やってくれたようですね.....。
フフフフ...ご丁寧に床や壁などあちこち汚物を撒き散らして汚してくるとは...余程私に■されたいようですね)」
ウーサーは子供達の早期発見救出の事を考えながら、胸糞野郎をどうやって完膚なきまで、叩き、潰す!かも考えていたよ。
この世界に組み込まれて初めてキレるような事態に遭遇したウーサーは、心の中で怒りと■■の刃を嘗てないほど、凶刃に凶悪に研ぎ澄ませながら、目的の場所へと足早に進めた。
その姿表情は一見していつも通りののほほん笑顔だったけど、事情を知ってる私からしたら恐怖以外の何ものでもない。
内の荒れ狂う心の中の大嵐を外に出さないように(ちょっと出てるけど)抑えながら、ウーサーは城内を行き交う人々を観察した。
「(“なきごえ”などはっきり聞こえるのに、誰もまるで声自体聞こえていないかのように何の反応もしませんね...というより、認識をしていません。何より一番に反応しそうな母もこの惨状に気付かず動いていないのが異常です)」
ウーサーに直接“教え”というウーサーの母の一族が世の中の悪い男女を精神的・物理的に生き地獄に堕とす方法等や掟みたいなものが沢山詰まった恐怖で最凶(特に男)の秘伝を授けた母。
美しい黒いオーラで物理的・精神的に華麗に優雅に閑静にゆっくり潰して地獄に落とす術を教えてくれたあの母が全く気付いていない。
ウーサーは考える。
「(母が動いていないとなると原因は、【ゲテモノ】が認識を阻害する魔術が使われている可能性があるのでしょうが、これは違いますね。城をこんなに見せ付けるように分かりやすく汚して今更隠して何の意味もありませんし。
あとは、『異界』の線も、【アヴァロン】以外現世の『ブリテン』と小規模の『異界』の様子を視る事が出来るイグレインさんが何も言って来られないから、この線も無いです。そうなると、一番可能性のあるのは─────【中】ですね)」
今更だけど、ずっと物語に出していた【中】というのは【私達】の使う用語で、【キミ】達側の言葉で表すと【核】だね。
ただ、これはただの【核】じゃない。
【核】は魂を三つに層に区分したものの一つなんだ。今からそれを説明しようか。
まず一つ目の層は【膜】と呼んでいる。これは【キミ】もよく知っている魂魄の“魄”に該当する。ある程度力のある子はこれを知覚・干渉することができるね。
次の二つ目は【壁】。こっちは魂魄の“魂”の方かな。【壁】は【膜】より分厚くガードがとても固いから知覚干渉するには中々難しいけど、稀に出来る子がいるんだよねぇ。
最後の三つ目が【私達】がよく言っている【中】だ。
【中】は真の魂の【核】と言っていい。或いは“個の『宇宙』『星』『世界』”とも言う。
これに知覚・干渉出来るモノは【キミ達側】にはまず潜在しない─────筈だった。
でも、【■■■■■■】が関わったせいで出来てしまうものが生まれてくるようになってしまった。
今はまだ『ブリテン』内までに留まっているけれど、放っておけば何れ『宇宙』『星』『世界』へと範囲が広がり、其処の全ての法則・概念・理が汚染され、腐敗し【■■■■■■】と同じ或いは別のナニカに変容して、他の『宇宙』『星』『世界』に感染し甚大な被害を及ぼしてしまうから厄介な事この上ない。
そうさせない為に【私】は同じ側である【獣】の一体、【生贄竜】君にコンタクトを取って今回の計画に乗ってもらったって訳さ。なんたって【彼等】はこの【庭】を創った張本獣であるからね!
という訳で【中】の説明は終わり!本編に戻ろうか。
【中】が関わっているのなると、対象はそれなりの力を持った存在であると結論付けたウーサーは慎重に、意識を集中させ地下室にいる【ゲテモノ】を探ったんだけど.....
「(そんな馬鹿な!?【中】を害しているのが【アヴァロン】の住人が創った人形!?しかもかなりの小物ではないですか!あり得ません───いえ、【アヴァロン】が絡んでいるのならあり得ますか。色々気になるところはありますが、今はこの事態を引き起こしている元凶を排除するのが先決です。
.....それにしてもこの【ゲテモノ】は余程自分の力に自信を持っているのでしょうか?全く己の存在を【私】に隠そうとせず、逆鱗に触れまくっている愚行を堂々とやらかしていますね。本当に■しがいがありますよ、まったく.....)」
と、冷え切った蒼い瞳に映された夥しくも生々しい体液の道筋を辿りながら、物騒な事を考えるウーサーは更に状況を詳しく知る為、壁に付着してある体液に触れて情報を読み込んだ。するとある事が分かり、盛大に内心舌打ちをした。
「(小物風情が.....この惨状己が愉しむだけではなく、子供達に見せしめるかのように体液をぶち撒けましたね.....本当にやる事一つ一つが腹立たしい限りですね)」
子供達を無理矢理鳴かせるだけではなく飽き足らず、苦痛・恥辱・性的な両面感情を引き出させてはソレを見て愉しみ、ちっぽけな慾望を満たす為だけにこの【ゲテモノ】は、ウーサーの住む城を汚物まみれにしたのさ。
本当に無知とは恐ろしいものだね。コイツは今世界で一番危険な【禁忌の三原色】を持つ【獣】の一体の尻尾を思いっ切り踏んづけたちゃったんだ。
これは■すなんて生温い位の“お仕置き”をされることだろうね。お〜怖い怖い。
そうこう語っている内に、ウーサーが地下へと続く階段の前に来て立ち止まった。
「さぁ、私の城を土足で荒らした代償を払ってもらいましょうか。嗚呼、そうですね...【ゲテモノ】が今一番欲しいもの─────■■■■に■■■■■■■■込んで、しっかり■■■状態にして、細かく刻んでからしっかり何度も■してあげましょう」
歌を歌うように言うと、ウーサーは軽やかな足取りで階段を下って行った.....。
─────ウーサーが階段を降りてから少しして、誰にも耳に入らない悍ましく汚らしい声の断末魔が城中に響き渡った.....。
いつまでつづくか分からないおまけ
〜“教え”って何?編〜
【ナマモノ】
「“教え”の説明は上記で話したとおりだよ。あと補足をいれると受け継げる者は極一部で如何にして悪の男女の男或いは女のしての人生を物理的かつ精神的に地獄に落としながら強制終了させる技術を行使できる『資格』と悪の男女に人権など必要ない慈悲など無い的なかなりぶっ飛んだ『精神』を持たないといけないとか。
書物とかはなく口頭で伝えるものではあるが別に秘伝的なモノではない。しかし耐性が無い者(特に男)がうっかり聞いてしまったら余りの恐ろしい内容に気を飛ばすか(特に男)暫くその一部の内容を夢で体験できてしまう(特に男)。ある意味呪いである。
現在この『教え』を受け継いでいる者はウーサーと彼の母。
一族がの男女関係なく伝えられるが、受け継いだ殆どが女性だけ(そりゃそうだ)。しかも男はウーサーだけで彼の兄は一節聞いただけで泣いて熱を出してしまった。
母曰く、兄がこうなったのはこの『教え』を受け継げる必要な『資格』と『精神』を持っていなかったかららしい。逆にウーサーは両方ちゃっかり持っていたので、彼はあっさり受け継いでしまったと言うわけだ。
何故そんなモノ持っていたのかはブリテン裏七不思議になっているとかいないとか。
そして、歴代最凶の『後継者』が爆誕してしまった・・・・。
因みに【ナマモノ】と作者は怖いから“教え”の内容は殆ど知りません。以上!」




