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私立神楽学園

お嬢様たちの日常

 私立神楽学園という学校が存在する。創立は公家、大名階級が華族という階級に改められて間もない明治時代に開国で揺れ動く日本において将来のための人材を教育するために開校された。創設者は当時の神楽家当主、当時にしては大層珍しく当主が女性ということも周囲の不安を増長させたが、そんな周囲の不安を他所に彼女は学校運営を皮切りに文明開化の波をしっかりと見極め、様々な事業を大成功させ、開国以前は地方の零細貴族でしかなかった神楽家を日本有数の押しも押されぬ大財閥へと成長させてみせた。そんな神楽家の庇護下の元、この学園も開国の波に呑み込まれそうな華族の子女の教育の場、また更に開国の波を上手く掴み成り上がった成金の子女の出会いと知識を広げる場としてその名を日本全国に知らしめ、良家の子女が集う学園として機能した。そして、そんな時代から百数十年…、身分制度は廃止されども培った繋がりは大きな意味を持ち、明治の激動を乗り切った華族のその殆どは新たな事業に手を伸ばし、成功失敗の差はあれどもなんとか現代まで家を存続させていた。また当時受け入れた成金の子女も学校での繋がりを活かし更に自らの企業を拡大させ、巨額の富を手に入れ、その一部を学園へ感謝としてもたらした。結果的に学園は卒業生の寄付により発展が続き、時代の流れとともに初期は西洋の文化、知識を教え、戦争という世界をも巻き込む荒波さえ乗り越え、現代は国の最高学府にさえ毎年数十名の合格者を出す進学校として、流石に某有名高校のいくつかには敵わないまでも、それらとは一線を画す人脈の多さを有する学園として安定して存在し、今でも数多くの良家の成績優秀者を受け入れている…

「説明がくどいですわ!!」

「え〜、わたくしはいいと思いますよ〜。ただ〜、椅子が必要ですかね〜。」

「杏ちゃん、それフォローになってないです…。」

 三者三様のこの反応は、しかし殆ど同じことを表している。

「だよねぇ…。」

 発表者の女子生徒も薄々勘付いては居たようで、自分の読んだ分厚い原稿を傷一つない白木のテーブルにどさりと置いて自分の椅子にぐったりとした様子で脱力して腰掛けた。

「要するにお金持ちが集まる学校だよってことを言えばいいんですよね?でしたらもうちょっと簡略化できそうですが…。」

 先程フォローになっていないとツッコミを入れた、三つ編みを横に垂らした少女が恐る恐るといった風情で呟く。

「いやー、無理。この文章は大方その『お金持ち』が自分の権力を誇示するために作ったものだからね。私達一介の生徒が手を加えたりしたらそれこそ怒りに触れて処罰ものだよ。」

 発表者の少女は笑いながら応える。

「というか〜、良家ということを主張しすぎですよね〜。一口に良家と言っても、わたくしたちのように姓ぐらいしか在りし日の栄光を思い出せない零細元華族は〜、良家とは認めてもらえないのでしょうか〜。」

 のほほんとした口調で無情なことを語る、杏ちゃんこと西園寺 杏は悲しい疑問を挙げるも、その疑問なぞ全く気にしていなさそうに中央のテーブルの原稿の横に置かれていたクッキーをカリカリと齧った。

「というか、なぜ貴女がこんなものを?この原稿だって本当は現生徒会長に渡されるべきものでしょう。」

 原稿がくどいと一喝した少女は、長い髪を揺らしてテーブルに近付き、嫌そうな顔で原稿をペラペラと数枚捲った。

「いやー、それがね。アイツ最近転校してきた女子生徒に構いまくってるらしくて、生徒会長の仕事殆どしてないらしいんだよ。この学校対して生徒会長が役立つことなんて無いし殆ど問題は無いんだけどさ、流石に学期末ぐらいは来年度の引き継ぎの手伝いぐらいして欲しいよねー。」

「りっかさん、あの方の婚約者でしたっけ、大変ですね…。」

「いや、婚約者っていってもほぼおじーちゃん同士の口約束みたいなもんだし、うち金ないし、婚約破棄まで秒でカウントダウンみたいな状況だけどね。」

 ざっくり。四条 立夏は一刀両断。

「金がないと言ってしまったら、ここにいる全員が当てはまりますわよ。」

 冷泉院 真子が更に燃料を叩き込む。

「私達が持ってるの立派な姓ぐらいでしたね…。」

 武者小路 綾音はぐったりと嘆く。

「不毛な話し合いは〜、消耗を生むだけで〜、無意味なのですよ〜。」


閑話休題


「とにかく!今大事なことはこんな風にまったりすることではないでしょう!!」

 真子は紅茶のカップをテーブルに戻し、ばんとテーブルに手をついた。長い髪が揺れる。

「ちょっと真子さん!紅茶が溢れます!」

 すかさず綾音が真子の行いを糾弾する。

「今大事なことというのは〜、わたくしたちの婚約者様のことですか〜?」

 杏は紅茶を楽しみながらも、そう問うた。

「あれはほっといていいでしょー、若気の至りってやつだよきっと。」

 最終的に、真子が問題提起をする前に他の三人に各々の意見を言われてしまい、真子は鼻白む。

 四人には、それぞれ婚約者がいる。年齢の違いはあれども全員この学園に所属しているため、生徒間では知らぬものがほとんど居ない。婚約者も、この四人も大層顔は整っているのだが、逆にそのせいで美男美女カップルとして周りからは見られているため変な虫がついたことはない。入学した当初は色々と言われたものだが、婚約者たちはそのアクの強すぎる性格、この四人はその優秀な成績と圧倒的カリスマで全てを黙らせた。

ところが、最近転校してきた生徒がその婚約者たちと何やらひと悶着起こしたという噂が流れてきた。なんでわざわざ…という疑問は残るものの、その噂だけで動くのは余りにも過保護すぎる。そうやって放置していたところ、気付いたらその転校生が婚約者たちに構われまくっているという状況が作り出されたらしい…という噂がまた彼女らの耳に入ってきたのだった。

「あ、あの、正直私の婚約者様は無能ですし、お金しか持ってないくせにそれを増やす方法も碌に知らない方なので、結婚するよりは相手に非がある状況で婚約破棄した方がメリットが大きいんですが…っ!」

 綾音がおずおずと右手を挙げてそう話す。他の三人も、それはそうだなと納得し、茶会を再開する。


「うちのとこのアイツは家格が低いわりに事業が大成功して権力持ってるんだけど、その手腕は全部アイツのお父上の功績だからねー。お父上は尊敬してるし着いていきたいって思うけど、アイツには全然遺伝してないからなー…。」


「わたくしのところは〜、とにかく偉そうですね〜。自分の力でないことをまるで自分が行ったかのように〜。神輿は軽いほうが良いと言いますが〜、あれだけ頭の中身がなければ〜、それは大層軽いでしょうね〜。」


「私の婚約者は、なぜあんなに自分のことが大好きなのでしょうか。自分を飾り立ててよく見せようということしか頭にないですわ。その辺でマネキンとして立っていらっしゃれば良いのに。」


 飛び交う罵詈雑言。お行儀の良い言葉でオブラートに包んではいるが、これならいっそ最初から罵声を浴びせられたほうがマシだと感じるだろう。

「今できる事は何にもないからなー。あ、同人誌でも販売する?『どうして自分が愛されちゃうの!?〜今をときめく転校生と婚約者持ちのイケメン4人の禁断の恋〜』」

「ネーミングセンス皆無ですわね。タイトルだけで買うのを止めるでしょう。」

「そ、そこまで言わなくても…。」

「まあ〜、生徒の皆さんの娯楽として受け入れられている側面もあるようですし〜、しばらく放っておきますか〜。」

 こうして、各々勝手に話し合い、茶会を盛り上げるのが日常なのだ。結局未来は変わらないだろうが、四人で馬鹿な会話をするのも青春。なんだかんだで全員満足している。



こうして私立神楽学園の放課後は過ぎてゆく…。

風呂敷が包めません!!!(やばい)

文才ってどうしたらつくんでしょうね。

思いついたら続編書きます

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