守ろうと決意した日
目が覚めると僕は、何故か頭や背中が痛いことに気がついた。ーーだが一瞬にして悟った、千夏の部屋だ……そして僕はフローリングで寝ていたようだ。
「か、体が痛い……」
生活リズムが不規則な千夏は、好きなだけ寝て、好きな程にゲームをする。そんな反面僕は、規則正しい時間にご飯を作りに来るだけだった。千夏の家で寝るの何ていつぶりだろうか……
千夏を、見てみるとしっかりとベットで寝ている。パソコンの電源は、付きっぱなしのようだ。
ふと僕自身の腰を見てみると、タオルケットが掛かってるではないか、千夏は一言で言えばクズだが、こういう優しさもあるんだなと少し見直した。
千夏本人には、何も布団の掛かってないじゃないか、僕がしてもらった様に、タオルケットを掛ける。
「やっぱ子供になっても、千夏は千夏だな……可愛いな……」
このまま、子供のままでいさせて言い訳ないよな、千夏は脳天気で適当に戻れればいいとか、言ってるけども、そんな話で済ませちゃダメなんだ。もしかしたら誰かの意図で、千夏を狙った事かも知れないし、誰でもいいからとかって理由で巻き込まれたのかも知れないし、僕がしっかり元に戻してやらないとな。
千夏の顔をじっとりと見つめながら、そんな意気込みを自分の心に刻んでいた。
「キモい、あっち行け、眠りの邪魔だ、学校行け」
「ーーうっ」
本家より幼女に言われるのじゃ、格別に精神へのダメージが大きいな……辛すぎるな。
テレビの脇に置いてあるデジタル時計を見ると、まだ朝の四時だった。
一旦自宅に帰るため、千夏を叩き起し鍵の戸締りをさせることに成功した。少々の暴行を受けながら、そしてしっかりと僕が玄関を出る時に
「ハンバーグッ!」と今日の怒鳴っていた。
作って来いってことだとすぐ様わかった。そんな時だった。
隣の部屋の住人だろう女性が、こんな朝方に自身の家の前である玄関に背を向け立っているではないか、何かブツブツ喋りながら、しかめっ面を浮かべている。
会ってしまったからには、挨拶をせねばならないと
「お、おはようございます」
「ーーチッ」
初めてだった。挨拶をして舌打ちが返ってきたこと何て、さぞかし嫌なことがあったのだろう。僕はそんなことで苛立つような小さな人間じゃないさ、むしろそんなに、機嫌が悪いことを察したのに、挨拶なんてして申し訳ない。
けれど、けれどだ。挨拶をしなかったら、しなかったで、舌打ちはされずとも感じが悪いんじゃないのか? などとたわいも無い事を考えられた。
そう考えられる程、僕や千夏に向けられた怒りではなく、別のモノへの怒りだと思われたからだ。
とりあえず完全に安心はできないから、念の為に千夏に注意を促す、連絡を一通いれておいた。
ーー家へ着き、家族がまだ寝ている為に、見たこともないを忍びを連想しながら、ゆっくりと風呂場へ向かう。
「お兄ちゃんなにしてるの」
「うわああ!」
忍び失格である。
驚き過ぎて、一瞬パニックになりそうになったが、すぐに自分の妹である事に気が付いた。
「お兄ちゃんこんな時間まで、どこほっつき歩いてたの? そして何よりうるさい」
「あ、あぁすまん、まさか紗彩が居るなんて思わなかった」
「ここはお兄ちゃんの家でもあるけど、私の家でもあるんだから、会って当然そんな大声出さないで」
ごもっともな事を言ってるが、僕がツッコミたいのはこんな朝方に家をフラフラしてる事に驚いたと言いたかった。
「千夏ちゃんのとこ、居たの?」
「うん、そうだけど」
妹と千夏は、家へ連れてきた時に、ゲームの話題で意気投合し、顔馴染み程度の仲になった……と、思われたがその中の世界では、敵対に当たる存在と知るやいなや、言い 合いが始まり、言い合いから喧嘩に昇格する前に、僕は千夏を連れて外へ出たというエピソードがある。千夏は僕の家には、数十分しか上がったことがない。
そんな高校生の妹が千夏と対等に、ゲームの話ができる程、やり込めるのには訳あって、学校には行っておらず、千夏と似たような生活をしてるからである。
高校時代、勉強はそこそこ頑張ってた、お兄ちゃん的には学校へ行ってほしい気持ちはあるが、ある日学校へは行かないのか? と嫌々言う妹に強めに言ったところ、一週間くらい口を聞いてもらえず、新しいノートパソコンをプレゼントし、また話せるようになったというエピソードもあった。
「ふーん、そっかーまだあいつと続いてたんだ」
と言うと妹は、暗い家の中をふらふらとさまよいながら、自分の部屋へと戻っていった。
あ、あいつって……相当嫌いなんだな。
僕はお風呂に入り、千夏の家のフローリングで痛めた、体を休めようと、ゆっくりと湯船に浸かろうと決意した。
湯船で、この後千夏に与えるご飯など、自分の予定を整理していた。
ーーガラガラとお風呂の扉が開き、紗彩が入ってきた。
「お、おい! 僕が入ってるぞ? 見えているのか?」
「大丈夫だよー私シャワーだけだから」
そういう問題じゃないだろう……と思ったが、紗彩は髪の毛を濡らし髪を洗い始めた。
「そういえば、お兄ちゃん。千夏ちゃんから鬼のように電話来てたよ」
「え? なにか話したか?」
「鬼のような速度で電源切った」
まさか、千夏になにかあったのか? 嫌な予感しか浮かなかった。
ザバァっと、風呂を上がるとろくに体も拭かず、びしょびしょのまま服を着て、千夏の家へ急いだ。
「無事でいてくれ……」と願いながら、全速力で走った。
千夏の家の目の前まで来ると、何やら女性の討論らしからぬものが、聞こえてきた。
千夏の家の前に来ると、その討論の核がここであると、再認識した。扉は開いており部屋に入ると、小さな千夏と、先程外に居た女性が、激しい口論をしていた。
なぜか千夏は馬乗りになっていた。




