3話 お泊り会ッ!?
期限付きの賭けかぁ・・・。
あたしはぼうっとしながら帰り道をてくてく歩いていた。夕日が眩しい。
勢いにのってあんな賭けをしてしまうとは・・・。あたしって危ない奴だな〜・・・。
そんな事をぼちぼち考えている間にも第三公園の前にまで来ていた。第三公園とはそのまんまの意味の公園で、第一も第二も無いのに第三公園があるのはこの町のミステリーだ。
ブランコだけしかない公園。
あたしはぼうっと熱に酔った様に見ていた。
・・・・懐かしいなぁ。
ぼぅっとそんな事を考える。昔よく誠や郁と遊んだ公園だ。あの頃は楽しかったなぁ・・・。
自然と足が公園へ進む。そして自然とブランコに腰掛けていた。
足を不自然に曲げなければ上手く座れなくなっている。そんな事すら成長したんだな、としみじみ思っていた。
・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・平和だ・・・・。
のんびりとそんな事を考える暇さえ出来てしまう。これこそ公園ミラクルだ。幻に近い。
賭けも勝てばいいんでしょ・・・・、と思う。頭がぼー・・・・としていた時・・・。
「誠ッ!?」
公園の目の前に誠がふらりと現れる。行き成りの出来事に絶句した。
誠は「あ」と声を小さく漏らしてあたしの方を向く。夕日のせいで逆光で黒くみえる。
「どうしてこんな所に・・・・」そう言いながら誠の方に駆け寄る。この公園とは真逆の方向に誠の家がある。それなのにどうして、と思って今更ながら気づく。あたしが正解を口に出す前に誠が口を開いた。
「いやー・・・俺、此処が何処だか分からなくなっちゃってさぁ・・」
「やっぱり...」
声にもならないため息がでる。
はっきり言うと誠は超超方向音痴だ。
何処でも迷う。地図があっても迷う。2択でも迷う。道なき道をさ迷う。
でもそんな所が好きなのだ。あたしは。
あたしは公園ミラクルで誠の方向音痴の事をすっかり忘れていた。恐るべしミラクル。と、誠の手元にある地図に目を移す。
「誠・・・地図があるでしょ・・・?」呆れながら、そして無駄な質問を誠に投げかける。
「あぁ、これ?何か知らないけどこの地域が載っていないんだよ。何でだろうな?」
と、手元に持っていた地図をあたしに見せる。受け取ったあたしは絶句した。
「・・・これ、世界地図じゃない・・・」
「え?マジ?・・・・いやー・・・何でだろうなぁ...。言っとくけど俺は迷子じゃないよ?」
「迷子だろうがッ!」
「・・・・ふぅ。何も分かっちゃいないね愛は。俺の進む道に迷いないッ!きっとこの地図が広すぎだだけ!だから迷子じゃな」
「迷子だ」
あたしはキッパリと言い放った後、そういえば・・・と気づく。
賭けしてたんだった・・・。
「誠」
「ん?」
暫くの沈黙。
「あたし・・・誠の事がッ!」
一旦言葉を切る―――と同時に言うんだあたしッ!!
「なーにやってんの二人とも?」
ひょこっと何処から現れたのか誠とソックリの顔が誠の後ろから飛び出す。
「ぎゃわッ!!い、郁?」
「また会ったね」
双子の弟・・・郁はニコッと笑う。コイツは何処から出てきたんだ!神出鬼没かッ!
あたしは心の中でつっこみをしていたが口が回らない。パクパクと魚の様に動かすだけ。だって今誠に告白しようとしていたんだから・・・。
「何やってんの愛?魚のモノマネ?」
分かりきった顔であたしの方を見る。分かってるくせにッ!と顔が熱くなる。
「ち、違ッ!今あたしは誠に・・・」
「誠に?」
「・・・・せ、ぃ、に・・・・」
い、いえない。
だって誠の事が好きだ、なんて人前で言えたらもう言えてるし。それなのに郁はニヤニヤとした笑いであたしに尋ねる。
「何でもないッ!!」
あぁもう恥ずかしいッ!!最悪ッ!!!!
「・・・じゃ、もう帰るね」
あたしは踵を返して歩き出そうとすると、
「?・・・行くの?」
「え?」
誠がぽつりと呟くように言う。行こうとしていた足がピタリと止まった。
「明日土曜だし、」
「うん?」
「泊まっていかない?家に」
「うん?」
賭け1日目にして・・・、
チャンス到来!?(なのかどうなのか
とにかくあたしは誠の家でお泊まり会?をする事になったのだった・・・。
この回は蜜月が書きました。