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旅立ちの日が来た件

またまた時は飛んで、16歳になったユリウス。


今では全属性魔法を使いこなせるようになり、

さらに強さに磨きがかかった。


さて、この国では冒険者ギルドに16歳から登録出来る

という決まりがあり、そのギルドで生計を

立てようと思っていたユリウスは、16歳になったら

家を出ようと決めており、リシェルもその案に

許可を出した。


そして今日はユリウスが家を出ていく日だ。


「それにしても...立派に育ったもんだな...」


玄関の前で、リシェルが感嘆の念の籠った

言葉を呟いた。


「師匠のお蔭ですよ。 もしあそこで拾われてなきゃ

俺はあそこで死んでました。

師匠が育ててくれたから今の俺があるんです」


「いや、お前が私の訓練についてくる強さを

持っていたからこそだ。 多分私がお前の立場なら

逃げ出してたかもしれん」


「貴女...一体どんな訓練をしていたのよ...」


ユリウスを見送りにきたニールは、額に手を当て

唸っていた。


「ま、少なくとも常人なら死んでたかもしれないな。


おっと、忘れるところだった。


ユリウス、これを持っていけ」


ユリウスはリシェルから剣を受け取った。


「貴女...死ぬような訓練してどうするのよ...」


「いやー、用意した訓練をどんどん乗り越えてくれる

から嬉しくなっちまってつい...」


リシェルとニールがそんな会話をしているうちに

ユリウスが鞘から剣を抜くと、透き通った青色の

刀身の剣が出てきた。


「おお...」


ユリウスが綺麗な刀身に感嘆の息を吐くと、

それに気が付いたリシェルは


「そいつはミスリルを使って作られた剣だ。

ミスリルは最も魔法の伝導率が優れた鉱物で、

さらに頑丈ときたもんだ。 結構使いやすいと思うぜ」


「へぇ~、凄いんですね...、ってことは...」


ユリウスは16年前にリシェルに拾われたときの

場面を思い出しながら刀身に触れて


付与(エンチャント) : (ウィンド)


そう唱えると、刀身は薄緑に染まり、刀身からは

多少風が漏れだしていた。


リシェルは一瞬驚いたような顔をしたが

すぐに笑みを浮かべた。


「ほお...付与(エンチャント)なんて教えるのを

すっかり忘れてたが...まさかこっそり習得してた

とはな...でも、まだ完璧じゃねぇ。 刀から

風が漏れだしてるだろ? 一見その方が強く

見えるが、実際はその分魔力が無駄になってる

からな。 」


ユリウスはそのアドバイスを聞くと、今度は

漏れ出さないように意識した。


すると、刀身から風が漏れださなくなった。


「...こんなもんですか?」


「ああ、上出来だ」


規格外の成長の早さに、ニールは


(これだけ鍛え甲斐があるんだから死ぬような

訓練になっちゃったのね...)


と、一人納得していた。


「さて、じゃあそろそろ行きます」


「おう、なんかあったらまた来いよ」


リシェルはそう言いながらユリウスの頭を

乱暴に撫でた。


「ちょ、いい加減子供扱いは...」


「あ? 愛でてんだよ」


「ウルルといい師匠といいどうなってんだ

この世界!?」


その光景を微笑ましそうにニールは見守っていた。


しばらくユリウスを撫で続けたリシェルは、

撫でるのをやめ、ユリウスの肩を掴んで

クルッと半回転させ、前を向かせると、

ユリウスの背中を押した。


「いってこい!」


「はい!」


「ユリウス君、またね」


ユリウスは二人に手を振りながら木が生い茂る

森の向こうへと消えていった。


「あの子...そのうち有名になりそうね」


「当たり前だ、なんたって私が育てたんだからな!」


胸を張ってリシェルは答えた。

そのリシェルの様子を見ていたニールは


「...そういえば、ちょっと気になっていたことが

あるんだけど、その頬の斬り傷っていつ出来たの?」


ニールの視線の先には、小さな細い

斬り傷があった。


「ん? ああ? これか? ユリウスと実戦訓練

したときにやられたやつだ」


リシェルは嬉しそうに答えた。


「治癒魔法を使ってもらえば傷跡なんて

残らなかったんじゃないの?」


「いや、これはアイツが始めて私にダメージを

与えたときのやつだ。

アイツにとっても育てた私にとっても誇りの傷だ。

この傷は絶対に消さねぇよ」


「へぇ...ユリウス君、貴女に攻撃を当てられるくらい

強くなってたのね...」


「そうだな、いやぁ、しかしまさか6歳のユリウスに

ダメージを食らうとは思わなかったがな」


「...え?」


「今全力でやったとしても勝てる気がしねぇよ。

弟子が師を越えるのは嬉しいな。

ちょっと悲しい気もするが...」


うんうんと一人頷くリシェルに、ニールは

ユリウスの規格外さに呆然としていた。

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