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答え合わせをした件

ついにウルルとの約束の期限がやってきた。

ユリウスはすでに治癒魔法の真髄の仮説の立証に

成功している。


あとはそれが正解だと祈るばかりだ。


「師匠、先に寝ますね」


「いつもより早くないか?」


「ちょっと最近疲れ気味で眠くなってしまって...」


「そうか、なら早目に休んだ方がいいな。

おやすみ」


「はい、おやすみなさい」


リシェルに挨拶を終えたユリウスは

布団の中へと入る。


「さーて、久しぶりのご対面と行きますか」


ユリウスは布団に入って目をつむった。


「...眠れん」


いつもは寝るのにそこまで時間はかからないのだが

今日は布団に入るのが早かったせいなのか

眠れずにいた。


「仕方ない、一旦起き...」


ユリウスが目を開けたときには目の前に

終わりのない白い世界が広がっていた。


「え? ちょ...え?」


「あ、やっと気が付いた?」


ユリウスが声が聞こえた方に振り返ると

ウルルが立っていた。


「いやー、久しぶりだねぇ雄一君、いや、今は

ユリウス君と呼ぶべきかなぁ?

それにしても立派になったねぇ...なんか感動

しちゃったよ!」


「いや、前回会ったときより幼いと思うんだが...」


「むー! そういうのは気にしなくていいの!」


ウルルはプンスカとユリウスに文句を言った。


「ま、そんなことは置いといて、そろそろ

本題に入ろう! 君は治癒魔法の真髄を理解

出来たかな?」


「多分な、自信はある」


ユリウスがそう言うとウルルは笑みを浮かべた。


「おー! じゃあ聞かせて聞かせてー!」


「気が付いたのは魔法の暴走についての文書を

読んだときだ。


普通の魔法は暴走すると爆発やら弾けるやら

するのに治癒魔法はそれに加えて治そうとした

怪我を逆に悪化させるようなものになるときがある。

例えば火傷の人に治癒魔法を使おうとしたときに

暴走して火が発現した、とかな。


それを知ったときはまったく意味がわからなかったが

師匠の『ファイアーボールみたいだった』という

発言を聞いたときに仮説が浮かんだ。


治癒魔法に意図的に魔法を過剰に流せば

攻撃魔法に変換出来るんじゃないかって。


つまり、治癒魔法はやろうと思えば全ての属性を

使うことが出来る全属性魔法の使い手...これで

合ってるか? 一応立証は出来たから合ってるかと

思うんだが...」


その話を最後まで聞いてウルルは拍手をしながら


「大正解だよ! いやぁ、凄いねー。流石だよー」


「よかった、合ってたか...」


ユリウスは安堵の息を吐いた。


その様子を見たウルルがいらずらっぽく笑みを浮かべ


「でも、ちょこっと違うとこがあるかなー。

別に魔力を過剰に流さなくても攻撃魔法に

出来るんだよ?」


「え?」


「実は魔法を行使するときには体の中から魔力が

放出される部分に魔法陣が浮かんでるの。

魔力がそこを通ることで魔法になるって感じかな。

まあ体の内側に現れるから普通は見えないけどね。

それで、治癒魔法の魔法陣にはマイナスの効果に

なるような文字が刻まれてるの。

だけど、そのマイナスになる部分はデリケート

だから許容量以上の魔力を流すとそこが

壊れちゃうの。 だから治癒魔法の暴走は

恐ろしいんだよ」


「なるほど、でも、それじゃあやっぱり

過剰に魔力を流さないと攻撃魔法にならないん

じゃないのか?」


そうユリウスが聞くと、ウルルは得意気な顔をして


「いやいや~、簡単なことだよ。

最初から攻撃魔法を使うつもりでやればいいだけだよ」


「いや、そのつもりでやってるんだが...」


「"最初から"だよ? 君は"治癒魔法の"魔法陣を

通して攻撃魔法に変換させようとしてるけど、

"攻撃魔法の"魔法陣を通せば普通に使えるよ?」


「なるほど...そういうことか...。

あっ、そういえばヒール系統だけは暴走しても

危険じゃないのは何でだ?」


「ん? それはねー、あの魔法は純粋な治癒魔法

だからね。

治癒魔法で唯一魔法陣にマイナスが刻まれてないの。

元々、治癒魔法はヒール系統しかなかったからね。

でも、治癒魔法使いは魔法陣にマイナスを

刻むことが出来ることに気がついて、攻撃魔法も

回復に変換させられるようになったんだよ。

その文明はもう滅んじゃったけど、見つかった

その時代の文書からは治癒魔法について

ヒール系統とマイナスが刻まれた攻撃魔法しか

書いてなかったんだよ。 全属性の魔法なんて

治癒魔法の文書に書かなくても他の文書に

載ってるからね。 それで、治癒魔法について

回復しか出来ないと勘違いしてるのが

現在の時代の人達なんだよー」


「なるほど、だからヒール系統だけが

暴走しても大丈夫なのか...」


ユリウスが一人で納得していると


「さーてと! それじゃあ見事正解したユリウス君の

お願い叶えちゃうよー! なんでも言ってねー!」


「あ、そういえばそんなルールだったか」


「うー...忘れてたの?」


「いやいやいや! 忘れてない忘れてない

チャントオボエテタ、オレ、ウソツカナイ」


「本当かなぁ? まあいいか。 それでどうする?」


「そうだなぁ…うーん......保留で」


「えー? 男の子なんだから、もっとこう...

最強になりたいとかハーレム状態になりたいとか

そういうのはないの?」


「別にそういうのはいらないな...それに...あれだ」


ユリウスは急に言葉を濁し始めた。


「ん?どしたの?」


ウルルが首を傾げてユリウスに問うと、

ユリウスは左手で頭を掻きながら


「その...なんだ...保留にしとけば...また今度

願いを叶えるときに会えるだろ?

だからウルルの暇潰しになると思って...さ」


ユリウスがそう言うとウルルは感極まったのか

ユリウスに抱きついた。


「...え?」


「突然ごめん...私...嬉しくて...」


「お...おう...」


ユリウスがどもりながら返事をすると、ウルルが

クスッと笑った。


「くっついてるけどわかるけど、本当に強く

なったね...。 魔力もかなり高いし、体もよく

鍛えられてる...。 頑張ったね...」


よしよし、とウルルがユリウスを撫でた。


「ちょ...! 子供扱いすんな!」


「えへへ~、子供扱いなんてしてないよー。

ちょっと愛らしく思っただけで」


「それはそれでどうなんだよ!?」


しばらく撫で続けて満足したのかウルルは

ユリウスから離れた。


「さて、じゃあそろそろお別れの時間かな。

君の体が消えかかってる」


そう言われたユリウスが自分の体を見ると

段々と薄くなっていくのがわかった。


「おう、じゃ、またな」


「うん、元気でね!」


ウルルは手を大きく振って消えていくユリウスを

見送った。

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