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赤子なのに訓練が始まった件

雄一が拾われて数日が経ったある日、家に

誰かが訪ねてきた。


「久し振りね、リシェル」


そう言いながら扉を開けて入ってきたのは

全身を茶色のローブで包んだ女性だった。


(へぇ...俺を拾ってくれたこの人、リシェルって

名前なのか)


雄一がそんなことを考えている間にも二人の

会話は進んでいた。


「おいニール、いつも勝手に入ってくるなと

言ってるだろ?」


「別にいいじゃない、私達の仲でしょ?」


そう言いながらニールと呼ばれた女性は

ローブを脱いだ。


ローブの下から現れたのは、長髪で紫色の髪の

妖艶な女性だった。


「それで? 属性を調べてほしいってのは

そこにいる子かしら?」


「ああ、手紙でも話したが、私はコイツを

一人前になるまで育てるつもりだ。

常識ある大人に育てるのはもちろん戦力的な意味でも

しっかり育てるつもりだ」


「貴方がこんなことするなんて珍しいわね」


「森に赤子を放っておけるわけがないだろ?

それよりも、測定の方を頼む」


「はいはい、そう急がなくてもちゃんとやるわよ」


そう言ってニールは懐から透明な水晶を取り出した。


「さて...じゃあ早速始めようかしら。

えっと...この子の名前は?」


ニールがそう聞くとリシェルは一瞬ビクッとした。


「えっ? あ~...ユリウス」


(即席で決めやがった!?)


「今即席で考えたわね...まあいいわ...。

じゃあユリウス君、この水晶に触れてくれる?」


「あい!」


ユリウスと名付けられた彼は水晶に触れた。

水晶は綺麗な緑色に染まった。


「...示されたのは癒しの緑。

ということは、この子の属性は治癒ね」


「治癒!? なるほど...だから捨てられたのか...」


(え? それで納得しちゃうの?

嘘? どんだけ治癒魔法の地位低いんだよ...)


「まあ、とはいえそれだけの理由で捨てるなんざ

どうかしてるとは思うが...」


「恐らく捨てたのは貴族層の人でしょうね。

自分の子供が治癒魔法なんていう戦力に成り得ない

魔法の使い手なんて知られたら...ね」


「チッ...無駄にプライドだけが高い奴等だな...」


(うへぇ...これで本当に治癒魔法が最強の魔法

なのか...?)


ユリウス(雄一)がそう考えていると

ニールが思い出したかのように手をポンと叩いた。


「あっ、そういえば、戦力になるように

鍛えるみたいなことを言ってたけど

どうするつもりなの?」


「なんだ、そんなことか...」


リシェルはニヤリと笑い、


「簡単さ、治癒魔法しか使えないなら

厳しく鍛えてやればいいだけだ。

治癒魔法の使い手にだっていくらでも

戦い方はある」


その言葉を聞いたニールは哀れんだ視線をユリウスに

向けた。


「この子、可哀想に...。 リシェルの訓練に

ついていけるかしら?」


(え?何? そんなに厳しいの?

まさか赤ん坊の俺に戦えとか言わない...よね?)


「おい、ニール。 お前は一体どんな訓練を

想像してるんだ。 大きくなればそれなりに

厳しくはするつもりだが少なくとも

今はそこまで厳しくするつもりはない」


ニールは、はぁ...と溜め息を吐き


「どっちにしろ将来は厳しくするつもりなのね...

ちなみに参考までに聞きたいんだけど赤子の

ユリウスに何をさせる気なの?」


リシェルは、うーんと上を向き考える素振りを見せ


「そうだなぁ...とりあえず毎日魔力を全部

使わせて気絶させる訓練を...」


「待って、ちょっと待って。

貴女、自分が何言ってるかわかってる?

それって結構危険なんじゃ...。

大体それに何の意味が...」


「世間一般的には危険だとか言われてるが

危険度はほぼ無い。 それに、魔力は自分が

成長するのに比例して増えていくってのは

よく知られてるが、実はこの方法でも魔力を

増やすことが出来る。 というか、毎日やれば

こっちの方が魔力の成長量は多い」


「なっ!?」


今まで知らなかった事実にニールは驚愕した。


「私も小さい頃はよくやったもんだ、つっても

元々の魔力量が少なすぎてすぐに気絶してたから

こそ気付けたことだけどな」


「...やっぱり、貴女は軽々と私の常識を

越えてくるわね...」


「別に今に始まったことじゃねぇだろ?


さて、それじゃあそろそろ...」


リシェルはユリウスの方を向いた。


「訓練を始めるか!」


訓練の際にニールが最後まで自分に哀れんだ視線を

向けていることがユリウスの印象に残っていた。

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