なんか森で拾われた件
とある森の奥深く、凶悪な魔物が多く生息する
この場所に、赤子の泣き声が響いていた。
その森を歩いていた長く赤い髪を後ろで纏めた
所謂ポニーテールと言われる髪型で、つり目の
鋭い眼をした女は、その声に気がついた。
「こんなところで...赤子の声...?
まさか捨て子か?」
声が聞こえた方へ急いで駆けて行くと、そこで
黒髪黒眼の赤子が泣いているのを見つけた。
「やっぱりな...さて、どうしたもんか...」
女が腕を組みながら考えていると、頭のてっぺん
に角を生やした黒い狼が、仲間をゾロゾロと
引き連れて女の方に近づいてきた。
「チッ...さてはコイツら、泣き声を聞いて
集まってきやがったか...」
女は、はぁ...と溜め息を吐き、腰に付けた
鞘から剣を抜いた。
「メンドクセェがやるしかねぇか...!」
その言葉が合図であったかのように、狼達は
一斉に女に襲いかかった。
「付与 : 風」
女がそう唱えると、持っていた薄い青銅色の剣が
濃い薄緑色に染まり、その剣を狼達に向けて
振った。
その瞬間、風を切るような音が聞こえたあと、
飛びかかってきた狼達は剣を触れていないにも
関わらず切断された。
「ったく...手間かけさせんなよ...」
女は悪態を付きながら、剣を鞘に納めた。
「さて...結局、コイツはどうするかね...」
そう言いながら女が後ろを振り向き、赤子を見た。
「ここに放っておいたらさっきみたいに
魔物が寄ってきて確実に死んじまうし...
仕方ない、保護しておくか」
そう決めた女は、赤子を抱えて家へと向かった。
(うわぁ...マジで異世界に来たんだなぁ...)
女に抱えられた赤子の正体は雄一であった。
彼は先程の出来事を思い出し、感動していた。
(人を呼ぼうとして泣き叫んだら人と一緒に
変な狼みたいなやつも来てどうなるかと
思ったが...この人予想以上に強かったな...。
しっかし...普通、赤髪なら王道的には火属性の
魔法の使い手かと思ったんだが...見たり聞いたりした
感じだと風属性の使い手なのか?)
雄一がそんなことを考えている間に、一軒の
小さな家に到着した。
(ここがこの人の家か...? こんな森の奥に
家があるとは...何かワケ有りなのか?)
「さて、ここが今日からお前の住む家だ。
私がお前を一人前になるまで育ててやるから
これからよろしくな」
女は、雄一の顔を見ながらそう言った。
雄一はその言葉に対して
「あい!」
と元気よく返事をした。