ギルドに再度行った件
登録のことなど忘れていたことを明かした
ユリウスは、レミナとユーリの二人と共に
冒険者ギルドに向かっていた。
「まさか忘れてたなんて...」
「元の目的がギルドへの登録だったのに
それは僕でも予想外だよ」
「俺の心抉りにくるのやめてください
マジで」
「ごめんごめん、君をからかうのって
すっごく楽しくてさ」
「なんですかそれ...」
他愛もない話をしながら歩いていると、
ギルドが見えてきた。
「懐かしいな...あそこ」
「ユリウス、行ったことあるんですか?」
「はい、あそこでディヴァイス学園について
教えてもらったんですよ」
「ふーん、なら僕はユリウス君に学園を
教えてくれた人に感謝しなくちゃいけないね」
だって、と続けたユーリは
「君に会えたんだから!」
満面の笑みでそう言うユーリを見て、
ユリウスは顔を赤くした。
「こんなん勘違いするだろ...」
赤くなった顔を片手で覆ったユリウスの姿を
見たユーリはユリウスに抱きつき
「一体どういう勘違いをしてくれたのかな~?」
ニヤニヤしながらユーリがユリウスの顔を
見上げていると、ユリウスの背中にドスッと
弱めの衝撃が走った。
その衝撃を与えた犯人はユリウスに
後ろから抱きついていて
「ちょーーー」
「そんなにユーリとばかりくっつかれては
私も妬いてしまうのですが?」
耳元で囁かれて、ユリウスは一瞬ビクッと
したが、
すぐに平常心を取り戻し、前後に抱きつく
二人を引き離した。
「はぁ...こういうのは好きな人だけに
やった方がいいですよ?」
「「............」」
「え? 何ですかその『コイツわかって
ねぇな』みたいな顔」
レミナとユーリは明後日の方向を向き
遠い目をしながら
「...道は険しいねユーリ」
「そうだねレミナ」
「うわぁ何か除け者にされてる気分...。
あ、ギルドに到着しましたね」
ユリウスがギルドの扉を開けると見覚えのある
モヒカンが見えた
「ドンさんだ!!」
「「ドンさん?」」
ユリウスは一人で食事をしていたドンの元
へと駆け寄った。
「ドンさん! お久しぶりです!」
「お? ああ、あん時の坊主か。
そういや、ちゃんと入学出来たのか?」
ユリウスはグーサインをドンに出し
「バッチリです!」
「そうか、ま、お前だったら大丈夫だろうと
思ってたから心配はしてなかったがな」
「クスッ...嘘ですよ? それ」
ユリウス達に近づいてきた受付嬢がそんなことを
言うので、ユリウスは疑問を抱く
「どういうことですか? それ」
「ドンさんったらあの日の内に私のところに
『あの坊主はどうしたんだ?』って
聞いてきてそれからと言うもの事あるごとに
『あの坊主は大丈夫かな』やら『受かってる
かな』とか聞いてきてーーー」
「うぉぉぉぉぉい! やめろよ!
それは言わない約束....じゃなくて!
事実無根だ! 俺はそんなに心配性じゃ...!」
「恥ずかしがらないでください。
紛れもない事実なんですから」
「フィノ! お前! 後で覚えてろよ!
お前の受付カウンターにたくさんお花添えて
見た目豪華にすることで他の客が近寄りずらく
なるようにしてやる!」
「相変わらず仕返しが良心的すぎますね」
「おい坊主! コイツの言ってることなんて
信じーーーおい、坊主?」
ユリウスは俯いていた。
「あら、大丈夫?」
受付嬢がそっとユリウスの頭に
手を置いた
「ーーーかったんです」
「あ?」
「懐かしかったんです。俺、父親とは
ずいぶん前に離別したんですが、
その父親は心配性で、それこそドンさん
みたいに、だからその父親みたいな温かさを
ドンさんが持ってて...それでその...」
ユリウスは16年も父親に、それどころか
家族にも会っていない。
ユリウスは実は心のどこかで不安だった。
だから、
「俺...異世界に来れたことは
嬉しいけど...でも、出来るなら地球に
一度戻って家族や友達に会いたかった...。
だからですかね、ドンさんを見て父親の
面影を思い出してしまいました」
もちろんこちらで育ててくれたリシェルや
ニールだってユリウスからすれば立派な
親であり師でもある。
だが、松井 勇一 としての家族が、
彼ーーーユリウスにとっては一番大事だった。
「...故郷とやらには戻るつもりは
あるのか?」
「いえ、複雑な事情があって、もう二度と
戻れません」
「そうか...まあ、なんだ」
ドンは頭を掻きながら
「お前の父親に似てるっつー自覚はねぇが
お前が似てるっつーんならきっとそうなん
だろうな。 俺のこと、父親だと思ってくれて
いいぜ。 いや、思いたくないなら構わねぇが」
「...ドンさん!」
向かってくるユリウスをドンは優しく
抱擁した。
「ふふっ、ドンさん。 結婚する前に
子供ができちゃったわね」
「うるせ」
「大変だよレミナ! ユリウス君が
男好きになっちゃうかもだよ!」
「ええええ!? いやでもあの光景を見ると...
ええええええええ!?」
「僕達には抱きついてきてくれないのに...」
「これは...もっと女の子のよさを
教えないと危ないかもですね」
「うん、彼はまだ僕らが抱きつくと
意識はしてくれてる。 まだ間に合うよ!」
会話がまったく聞こえていなかった
彼女達はユリウス更正プロジェクトの
始動を考えていた。
新しい作品始めたのでそちらも
よろしくお願いします。




