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登校した件

朝食を終えた二人は一度、寮の部屋に戻り

学校へ持っていく物を準備してから

別れる際に決めておいた場所で合流した。


「遅いぞユリウス」


「いや、エイトさんが早すぎるんですよ」


「私は食堂に行く前にちゃんと準備は

終らせていたからな、その時間のロスが

無かっただけだ。


それよりも、早く行こう」


「はい」


エイトが歩き始めるのに合わせてユリウスも

歩き始めた。


「あ、そういえばユリウス。

君は昨日も何かやらかしたと聞いたんだが

何をしたんだ?」


「昨日ですか? なんかレミナさんと

ユーリさんを誘拐しようとした曲者が居たので

追っ払いました」


「あのたくさん人数のいる場所で誘拐か...

余程犯人は馬鹿だったのか?」


「さあ? 逃げられてしまったので

真相はわかりません」


「それは残念だ、しかし、美少女二人を

助けたんだ。 何かなかったのか?」


「何かと言われましても...そのあとレミナさんが

急に帰っちゃったからユーリさんと二人で

祭りを回ったことしか」


「急に帰った?」


エイトは顎に手を当てながら思考し


「そのときの顔の色はどうだったんだ?」


「真っ赤でしたよ。 もしかしたら

熱があって体調が悪いから帰ったんじゃないかと

思ってます」


「...レミナ嬢も不憫だな。 ここまで

ヒントがあっても気付かないとはな...」


「え? それは一体どういうーーー」


「ユリウスー! おはようございますー!」


ユリウスが振り向くと、レミナとユーリが

こちらに向かってきていた。


「あ、レミナさん。 おはようございます」


ユーリは自分の胸の前に手を出し小さく

振りながら


「ユリウス君、おはよ」


「ユーリさんも、おはようございます」


「私は空気か」


エイトが呟くと、レミナとユーリか

エイトに気がついたようで。


「あれ? エイトもユリウスと仲良く

なったの?」


ユーリが聞くと、エイトはユリウスの

肩に手を置き


「ああ、朝、偶然にも食堂で会ったから

話してみたら面白いやつだと思ってな。

是非仲良くしたいと思ったわけだ」


「エイト君に気に入られるなんて

流石ユリウスですね」


「あれ? 皆さんもしかして知り合いですか?」


「そうだよー、僕達とエイトは

昔からよくパーティとか家の事情で何度も

顔を合わせてるし、エイトの家の方が

権力が上だけど幼馴染みってことで

仲良くさせてもらってるんだ」


「そうなんですか」


エイトはユリウスの肩から手を離すと

その手を自分の額に置き


「ま、そのパーティとかで近寄ってくる

女は大体が求婚目当てでアピールしてきてな...、

男も男で友人関係を築いて少しでもコネを

作りたいという考えが丸見えでな...。

この二人は純粋に友達になってくれた数少ない

友人なんだ。 だから、世話になった

私としてはこの二人には幸せになって

もらいたいんだが...」


そこまで言ってエイトはユリウスを見て


「どうやらその相手は難攻不落らしいな」


ユリウスはその言葉に首を傾げて


「え? レミナさんとユーリさん

好きな人居るんですか?」


「私は居ますよ?」


そう言ってレミナはユリウスの耳元に

顔を吐息がかかるくらいまで近づけて


「絶対に惚れさせてみせますから」


「何故その決意を俺の耳元で...、

これ、好きな人にやった方が効果があると

思いますよ? レミナさん可愛いんですから

絶対気を引けますって」


ユリウスの言葉にレミナは顔を赤くして

俯いた。


「え? ちょ、レミナさん?」


「...わざとですか?」


「何がですか?」


「レミナ、ユリウス君は多分本当に

わかってないよ。天然だよ、天然」


「くくっ...まさかカウンターを決めるとは

流石ユリウスだ」


諦めたように言うユーリに対し、エイトは

笑いを押し殺しながら言った。


「天然? カウンター?」


「ユリウスはわからなくても良い、

ところでユーリ嬢は好きな人は居ないのか?」


その言葉にユーリは顔を赤くして

チラチラとユリウスを見て


「えっ!? あっ、いやっ、僕はその、

えっと...」


わたわたと慌てたような様子のユーリに

エイトは笑みを浮かべ


「くくっ...ユリウス、どうやら君は

相当の女たらしみたいだな」


「え?」


(相当な女たらしであると同時に相当な

鈍感...、ユリウスを落とすのは

至難の技だな)


エイトは顔が赤くなった二人とユリウスを

交互に見ながら小さく笑った。

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