クラスに行った件
「こんなことってあるんだな...」
一人呟きながらユリウスは1-Cの教室に
辿り着いた。
教室に入ったときに、ユリウス達より先に
来ていた生徒達のほとんどが驚愕と嫉妬の視線を
ユリウスに向けた。
「しかし、三人一緒だなんて、運が良いですね」
「だね。 何か不思議で逆らえない力の流れを
感じた気がしなくもないけど」
(それ多分さっき俺が建てたフラグの力だわ)
「じゃ、とりあえず適当に座っていいっぽいし
座っちゃおうか」
ユーリの提案に二人は頷き、ユリウスは
一番後ろの窓際の席に座った。
「あ、ずるい! 僕がそこ狙ってたのに!」
「世の中には早い者勝ちという言葉が
ありましてね」
「む~...、まぁいいよ。 ユリウス君の前に
座ればあんまり変わらないし」
「ふふっ、じゃあ私はユリウスの隣に
座りますね?」
「どうぞ」
ユリウス達が席に座って談笑していると、後から
入ってきた生徒からも視線を向けられた。
「うげぇ...さっきから視線が痛い...」
「男の君が僕達に気に入られちゃった時点で
もう仕方がないよね...なんか迷惑かけちゃってる
よね?」
珍しくユーリが申し訳なさそうにユリウスを
見た。
「ユリウス...その、すみません。
私達のせいでー」
ユリウスは、『はぁ...』と溜め息を吐き。
「後悔してませんから」
「「え?」」
いきなりのユリウスの発言に二人とも
呆気に取られた。
「だから、何を勘違いしているのか
わかりませんが二人と友人関係になれたことに
後悔なんてしてませんよ? ま、視線が痛いのは
そりゃ嫌ですけど、それ以上に二人も
仲良くなれたことがとても嬉しいんです。
だから迷惑とかそんな風に考えないでくださいよ。
貴女達が俺のことを気に入ってくれたように
俺も二人のこと好きですから」
そう言うと、二人は俯いた。
(あれ?...ちょっとオーバーにフォローしといたし
大丈夫だと思ったんだが...フォローが足りなかった
かな?)
「パーティとかで遠回しに好きとか言ってくる
下心満載な男の言葉なら良く聞くけど
今みたいに下心の無い純粋で直球な言葉は
初めてだよ...。僕、一瞬ときめきかけた」
そう小さく呟くユーリの元にレミナが近付き、
「奇遇ねユーリ、私もよ...」
(...? とりあえず大丈夫なのか?)
ユリウスがそう考えていると、黒いローブを
纏い、顔に鼻の尖った骸骨の顔の仮面をつけた
人物が入ってきた。
「よぉし、全員いますねぇ? わぁたしが
このクラスのぉ、担任を勤める。
"デダイス・コシロネス" デス。
一年間、よぉろしくおねがぁいしますぅね?」
(あんたが教師かよ!?死神にしか見えねぇ!!)
他の人も同じことを思ったのか、信じられないと
行った表情をしている。
「あれが噂の死神教師か」
「嘘...ただの噂だと思ってたのに...」
「なんか口調変わってるな...」
生徒達がヒソヒソ話しているなか、デダイスは
話し始めた。
「さぁてと、そぉれでは、自己紹介の時間と
いきまぁしょうかぁ? 自分の名前、属性、
あとは適当にぃ言って紹介としてくださぁい。
それじゃあ壁際の一番前の君からどうぞぉ」
(え? 自己紹介? 属性言うの? 待って?
俺、治癒魔法だよ? 馬鹿にされちゃいそうだな。
どうしよう...)
ユリウスが悩んでいる間にもどんどんと
自己紹介は進んでいく。
(治癒魔法が蔑みの対象になるなんて
ことは無いよな...? 現にレミナさんは
馬鹿にしなかったし...、いやでもレミナさんは
優しいからそうならなかっただけで他の人が
聞いたら馬鹿にされる可能性はー)
「ウォォォォォォ!!」
「流石レミナ様!!」
突然の大きな歓声と拍手驚き、ユリウスが周囲を
見渡すと、丁度レミナが自己紹介を終えたところ
らしく、余程完璧な自己紹介だったのか
クラス中がレミナを賞賛していた。
「次、ユリウスですよ?」
「へ? あ、俺!?」
ユリウスは慌てて立ち上がった。
(あー、もう...腹くくって言うか...)
「ユリウス・アーカイド。 属性は治癒のみです。
これからよろしくお願いします」
ユリウスは即座に自己紹介を終え、席に座った。
「え? 治癒...?」
「それってどうなんだ?」
「いや、でもこの学園に入学したってことは
それなりに力があるんだろ?」
「だよな、少なくとも俺達は名前書けば
入れるようなとこ選んだわけじゃねぇしな」
「逆に治癒魔法で強くなろうとしたって
凄くない?」
「だよね。私だったら律儀に診療所か教会
行っちゃうもん」
(あれ? 意外と好感触...?)
何はともあれユリウスは受け入れられたようだ。
「だがレミナ様と仲が良いのは許さん...」
「嫉妬の炎が燃えるぜ...」
「男子、キモいよ?」
「「はっ!?」」
(...楽しそうなクラスだなぁ)
ユリウスが思想に浸っていると、ユーリが
こちらを恨むように見ていた。
「僕、いつ自己紹介すれば良いかタイミングが
わからないんだけど...」
「...屋台でなんか奢るから許してください」




