入学式に行った件
「いよいよ世話になったこの宿屋とも
お別れか」
今日はついにディヴァイス学園の入学式が
行われる日である。
「寮生活ってのは初めてだけど楽しみだな。
さてと、早目に出発しておくか」
ユリウスは荷物をまとめ、宿屋を出た。
ディヴァイス学園に到着すると、屋台が開かれて
いたり、見せ物があったり、お祭りのような
会場になっていた。
(なんかこういう賑やかなのはいいな)
ユリウスがそう思っていると、後ろから背中を
叩かれた。
「おふっ!?」
「やぁ! 久し振りー!」
「...相変わらず元気ですね」
「元気なのが僕の取り柄だもん!」
ユーリは両手を腰につけ、ドヤ顔でそう
言い放った。
「それ堂々と自慢できるとこですか!?」
「うん!」
「うわぁ、満面の笑みで言いやがりましたよ
この人...」
「あ...あの~...」
申し訳なさそうに会話に介入してくる声が
聞こえてユリウスが振り向くと、レミナが
捨てられた子犬のような顔をしていた。
「私もいるのですが...」
「え、あ、その、なんかすみません」
「いやー! ごめんごめん! ユリウス君と
話すのが楽しくてさ」
「もう、ユーリったら...。 ところでユリウス。
入学式のあと、時間ありますか?」
「ありますけど...?」
ユリウスがそう言うと、レミナは嬉しそうな
顔になり、両手を合わせた。
「よかった! 実は入学式のあとユーリと屋台を
回る予定なんですがよければ一緒に来ませんか?」
「あ! それいいね! ユリウス君!
僕らと回ろうよ!!」
(これまた目立つんだろうな...でも、どうせ
もう取り返しのつかいところまで目立ってるし
別にいいか)
「わかりました、ご一緒させていただきます」
「っ! ありがとうございます!」
「レミナ、そういうのはお礼言わなくても
いいと思うんだけど...」
ユーリが少し呆れた様子でレミナに言ったとき、
放送が流れた。
『あと20分で入学式が始まります。
新入生の皆さんはそろそろ式場に入ってください』
「もうそんな時間なんだ。
よし! じゃあさっさと式場に行こ!
座る席取られちゃうよ!」
「そうですね、早目について損をすることは
ありませんし」
「よし、行きますか」
式場について席に座ったのだが、ユリウスは
内心緊張していた。
ユリウスの右にはユーリ、左にはレミナが
座っており、しかも新入生の数が多いからなのか
席と席の間がとても狭く、隣の人と肩が
触れあってしまうくらいだった。
「...なんで俺真ん中なんですか?」
「気にしない気にしない、そろそろ
始まるよ?」
「はぁ...」
『それでは、入学式を執り行いたいと
思います、まずは学園長、お話を
お願いします』
入学式が始まってから、来賓の人達の
祝辞をずっと聞いており、ユリウスは
眠気と壮絶な戦いを繰り広げていた。
ユリウスが周りを見渡すと、中には寝てしまって
いる人はいるが、それでもユリウスは耐え続けた。
だが、限界というものが来たようで、ユリウスは
ついに意識を手放しかけたが
唐突にユーリがユリウスの腕と自らの腕を組んだ。
「っ!?」
「寝ちゃ駄目だよ?」
ユリウスの耳元でユーリが呟いた。
「っっっ!」
「レミナ、ユリウスが寝ちゃいそうだから
そっちもお願い」
「え? あ、うん」
ユリウス達を見て理解したレミナは、
ユーリと同じように腕を組んだ。
「んなっ...」
両肘の辺りからは柔らかい感触が伝わってくる。
ユリウスはもはや眠いどころの話ではなかった。
「大丈夫だよ。 席同士の間が狭すぎるから
こんなことしてもバレないよ?」
「いや、そういう問題じゃなくて...」
「ん~? どういう問題なのかな~?」
そう言ってユーリは自分の胸をユリウスの腕に
押し付ける力を強くした。
小さいとはいえ胸は胸。
ユリウスにダメージを与えるには充分なものだった。
(頼む...早く終わってくれ...!)
結局入学式が終わるまで腕を組まれ続けた
ユリウスは、やつれていた。
「はぁ...よく耐えた俺...」
「寝ようとした罰にしては役得すぎたかな?
ま、とりあえず次はクラス発表だし早く
見に行こっか」
「ふふっ、皆同じクラスだといいですね」
(まさかそんな都合のいい展開のあるわけないだろ)
ユリウスはそう思いながらクラス発表が記された
紙に近付き、驚愕した。
「はいフラグ回収です本当にありがとう
ございました」
三人とも同じクラスであった。